この連載の目次(全8回・完結)
- 01渋い、軽い、コクがある——ワインの説明は、どんな味を指しているのか
- 02身近な5ブランドのワイン——アルパカ、イエローテイル、コノスル、タヴェルネッロ、フロンテラいまここ
- 035つの産地の赤ワイン——ボルドー、ブルゴーニュ、トスカーナ、ナパ、チリ
- 04ワインの値段——畑、造り手、熟成に払うもの
- 05シャンパーニュ、プロセッコ、カヴァ——泡のワインの味と香り
- 06甘口のワイン——甘さと、それを切る酸
- 07熟成と収穫年——置いて変わるものと、はじめから違うもの
- 08日本のワイン——甲州から、長野のメルロー、余市のケルナーまで
スーパーのワイン棚でよく目にする5つの名前は、どれも造り手が付けたブランドの名前で、チリのワインが3つ、オーストラリアとイタリアが1つずつ。同じ棚に並んでいても、渋みの強さも果実の出方も違う。定番の赤と白を、一本ずつ見ていく。
サンタ・ヘレナ・アルパカ——渋みのやわらかい赤と、コクのある白
金色のアルパカの絵が棚での目印になっている、チリのワイン。造り手のサンタ・ヘレナ社は、輸出向けの手頃なワインを長く造ってきた会社である。
定番の赤「カベルネ・メルロー」は、名前のとおりカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを混ぜた赤だ。熟したブラックチェリーやカシス、プラムの甘い香りが立ち、口に含んでも渋みは強く出ない。前に出るのは果実味とまろやかなコクのほうで、重さも中くらい。渋みで押してこないので、家で作る肉料理くらいの濃さの食事に合わせやすい。
白の「シャルドネ・セミヨン」も、シャルドネとセミヨンの2品種を混ぜたものである。トロピカルフルーツや桃を思わせる香りで、表示は辛口。ただし酸でさっぱり切るタイプではなく、なめらかな口当たりとコクで飲ませる白だ。
[イエローテイル]——果実の甘みが前に出る、渋みの穏やかな赤
ラベルの動物はカンガルーの仲間、イエローフッテッド・ロック・ワラビー。オーストラリアのカセラ家が2001年に、うんちく抜きで気軽に飲めるワインとして売り出したブランドで、味もその方針どおりに造られている。
![香港の食品店の棚に並ぶ[イエローテイル]のメルローとシラーズ。赤い帯と黄色い帯のラベルにワラビーの絵](/_next/image?url=%2Fimages%2Fdrink%2Fwine%2Fseries%2Fyellow-tail-shelf-hk.webp&w=3840&q=75)
看板の赤「シラーズ」は、口に入れるとまず熟した果実の甘みが広がる。渋みは穏やかで舌に引っかからず、口当たりは厚い。香りは赤いチェリーやプラムに、バニラとモカが重なる。甘い風味は前に出るが、商品情報では辛口に分類されている。
中華の炒め物やスパイスの効いた料理と合わせても、この果実味なら負けない。同じブランドの「カベルネ・ソーヴィニヨン」は輪郭が違い、ブラックベリーとチョコレート、バニラの香りに酸がはっきり出る。こちらはステーキやローストビーフのような、塩気のはっきりした肉に向く。
白の「シャルドネ」は、メロンと白桃の香りにバニラが下支えして、口当たりはクリーミーである。
コノスル——渋みのしっかりしたカベルネを筆頭に、品種ごとに一本
チリの造り手コノスルが、自転車のラベルで出しているのが「ビシクレタ・レゼルバ」。自転車は、従業員が広い畑を回るときの乗り物である。

このシリーズは品種名を前面に出していて、赤7・白5・ロゼ1の13種ある。カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールに加え、リースリングやゲヴュルツトラミネールも扱う、品種の選択肢が広いシリーズである。
「カベルネ・ソーヴィニヨン」は、渋みのはっきりした赤だ。カシスとプラムの香りにスパイスとチョコレートが混じり、口に含むと渋みが舌に残って、飲み込んだあとも長く続く。ボロネーゼやビーフシチューのような煮込みが相手だと、この渋みがちょうど釣り合う。「ピノ・ノワール」は同じ赤でも色が淡く、チェリーやイチゴの香りで、酸も渋みも中くらい。白の「シャルドネ」は樽を使わずに造り、柑橘と白桃の香りがまっすぐ出る。
タヴェルネッロ——紙パックで広まった、軽い赤と白
タヴェルネッロはイタリア語で「小さな居酒屋」。造り手のカヴィロは多くのブドウ農家が集まった協同組合で、このワインはイタリアで紙パック入りとして家庭に広まった。日本では瓶で売られている。
定番の「クラシコ」は、赤の「ロッソ」と白の「ビアンコ」。ロッソは赤い果実の香りで、渋みが穏やかな、軽い飲み口の赤である。トマトソースのパスタや揚げ物と合わせても、料理の味を邪魔しない。ビアンコは白い花と柑橘の香りで、こちらも軽く、後味がすっきりしている。
もう一つの「オルガニコ」は、有機栽培のブドウを使い、品種名を表示するシリーズだ。クラシコは品種を表示しないが、こちらは品種名がそのまま味の見当になる。「サンジョヴェーゼ」は、熟したチェリーとプラム、スミレの香りに甘いスパイスが混じり、渋みはまろやか、酸は軽い。詰め物入りのパスタや硬いチーズと合わせる。
フロンテラ——渋みのやわらかい赤と、バターの香る白
フロンテラは、チリで最大級のワイン会社コンチャ・イ・トロが造る、日常向けのワインである。
「カベルネ・ソーヴィニヨン」は、プラムと砂糖漬けの果実、チョコレートの香り。カベルネという品種は渋みが強く出ることが多いが、この一本では渋みが柔らかく溶け込んでいて、飲み終わりに果実の甘い風味が残る。たれの焼き鳥やローストビーフのような、甘辛い味付けの肉と合わせやすい。
白の「シャルドネ」は、リンゴと洋梨の香りにバターの匂いが少し混じり、口当たりはまろやかである。油淋鶏(ユーリンチー)のような、油の乗った料理を受け止める。
品種と産地は、図鑑で
品種ごとの香りと口当たりは、1品種1ページの図鑑で扱っている。アルパカ、コノスル、フロンテラの故郷であるチリと、ボルドーやブルゴーニュのような土地の名前は、産地図鑑で。