大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINKワイン産地図鑑シャンパーニュ

シャンパーニュ——酸の上に、パンの香りが乗る白

フランス北東部のシャンパーニュはどんな泡のワインか。柑橘や白い花、リンゴや桃の香り、熟成で出るブリオッシュや焼いたパンの匂い、口の中で弾ける泡と残る酸。モエやヴーヴ・クリコなど棚で見かける銘柄の違い、3品種と地区、収穫年と甘辛の幅、料理と温度まで。

シャンパーニュは、フランス北東部の地方の名前であり、そこで造る泡のワインの名前でもある。柑橘や白い花、リンゴや桃の香りが上がってきて、口に含むと酸がはっきり残る。時間を置いたものには、ブリオッシュや焼いたパンの匂いが混じる。

THE BUBBLES

どんな泡のワインか

泡の出方は一本ずつ違う。細かいもの、中くらいのもの、規則正しく柱のように立つもの、まとまって上がるもの。表面に集まった泡の輪は、クリーム状にも、白くしっかりとも見える。この泡が香りを増幅する。はじけるたびに香りが立ちのぼり、口の中では全体に広がって弾ける。

泡は、瓶の中でもう一度発酵させることで生まれる。

ここは北の産地で、畑は斜面に開かれている。味は、酸が軸にある。その酸が糖と釣り合って、泡と一緒に口の中で立つ。

香りは、白い花や柑橘、赤い果実や桃といった果実と花の側から始まる。そこにヨードやチョークを思わせるミネラル、キャラメルやバター、蜂蜜が加わる。パンやペストリーの側は、品種やスタイルに固有のものではなく、熟成が与える香りである。年を重ねるにつれて、ブリオッシュや煮た果実、蜂蜜、さらにトーストやモカ、ココアといった匂いが加わっていく。

HOUSES

銘柄ごとに、違う一本がある

モエ・エ・シャンドンの「モエ アンペリアル」は、グリーンアップルや洋ナシの果実に穀物の香りが重なり、細かい泡が口当たりをしなやかにする。ヴーヴ・クリコの「イエローラベル」は、ゴールドに輝く色ときめ細かな泡。白と黄色の果実や柑橘に、ペストリーの豊潤な香りが重なる。

テタンジェの「ブリュット・レゼルヴ」はシャルドネを多めに使う。白い花と蜂蜜の香りに黄桃やアプリコットが続き、入りは生き生きとして、そこから溶けるように広がる。軽く焙ったアーモンドの余韻が長く残る。ニコラ・フィアットの「レゼルヴ・エクスクルーシヴ」は、ジューシーな洋梨とフレッシュなアプリコットが繊細な泡に溶け合う。ボランジェの「スペシャル・キュヴェ」はピノ・ノワール主体。黄金の色合いにビロードのような泡、洋梨と新鮮なクルミ、スパイスの香りが乗る。

どれも複数年のワインを合わせたブリュットで、ブレンドはその造り手の味を毎年再現するために組む。

GRAPES AND SLOPES

3つの品種と、4つの地区

一面のブドウ畑の向こうに、白い地層がのぞく森を頂いた丘
マルヌ県ベルジェール・レ・ヴェルテュ、モン・テメの畑。丘の中腹と畑の縁に白い地層がのぞく。9月撮影Photo: Szeder László / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

主な品種は3つ。ピノ・ノワールはボディと骨格を、ムニエはフルーティさと丸みを、シャルドネは酸とミネラルの感じを持ち込む。

畑は4つの地区に分かれる。ランスの街を半月状に囲むモンターニュ・ド・ランスはピノ・ノワールが中心。マルヌ川の両岸の急斜面に広がるヴァレ・ド・ラ・マルヌは、エペルネに近い東側がピノ・ノワールで、西へ行くほどムニエが増える。北東から南西へ伸びるコート・デ・ブランは、白亜質の斜面がシャルドネに向く。最南のコート・デ・バールは、ピノ・ノワールがほとんどを占める。ここのドラピエが出す「カルト・ドール」は、その品種を主体にしたブレンドで、赤い果実の細やかな香りと骨格を持つ。

芽吹き期の畝が丘の稜線へ収束し、右上の丘に赤い風車が立つ
モンターニュ・ド・ランスのヴェルズネ。丘の上に立つのは風車。5月撮影Photo: Vassil / Wikimedia Commons / パブリックドメイン(PD-self)リサイズ

土は石灰質が主で、なかでも白亜はよく水を蓄える。乾いた夏でもブドウが水切れしにくい。

一本ごとに、使う畑と品種の組み方が違う。テタンジェの「コント・ド・シャンパーニュ」はコート・デ・ブランのシャルドネだけで造る一本で、ミネラルの感じが前に出て、泡はいっそうきめが細かい。同じ造り手の「プレリュード」は、コート・デ・ブランのシャルドネにモンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワールを合わせる。入りは澄んで柑橘が立ち、そこから幅が出て丸く広がる。

黒ブドウを使わなければブラン・ド・ブラン、黒ブドウだけならブラン・ド・ノワールと名乗る。リュイナールのブラン・ド・ブランは、熟したレモンとみずみずしい洋梨、摘みたての桃の香りが立つ。

ロゼもある。モエの「ロゼ アンペリアル」は、野いちごやラズベリー、チェリーにバラと胡椒がかすかに混じり、口当たりはジューシーな桃のように柔らかい。

YEARS AND SUGAR

収穫年と、甘さの幅

白い岩壁の地下坑で、A型の木の台に瓶が首を下にして何十本も差し込まれている
ランスの白亜のカーヴ。木の台に瓶が並んでいる。9月撮影Photo: Cynwolfe / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

ラベルに収穫年がないものは、複数の年のワインを合わせて造る。過去の年に仕込んだリザーブワインが加わり、香りに厚みと丸みが出る。収穫年を掲げるものは、その年のブドウだけで造る。どのタイプでも収穫年を掲げることはでき、決めるのは造り手である。

どちらも瓶の中で時間をかけると、パンやナッツを思わせる香りが加わる。

甘さにも幅がある。仕上げに甘さを加えないものもあり、ローラン・ペリエのウルトラ ブリュットやドラピエのブリュット・ナチュールがそれにあたる。熟した果実がまっすぐ出て、後味が鋭く切れる。甘い側では、テタンジェの「ノクターン」が蜂蜜やライチを思わせる甘さで、口当たりは丸くなめらか。ヴーヴ・クリコのドゥミ・セックはパンプディングやタルトタタンの香りで、口当たりに厚みがある。同社の「リッチ」はさらに甘く、パイナップルやマンゴーの風味を氷で冷やして飲む設計になっている。

TABLE

温度と料理

温度は8〜10℃。

食前には、軽い塩味のビスケットやナッツ。食事なら野菜の天ぷらで、酸と泡が油を流す。ホタテのセビーチェのような生の魚介にも合う。甘い側のドゥミ・セックは、果実のデザートと。