ボルドーは、フランス南西部で大西洋に注ぐジロンド川の両岸に広がるワイン産地で、赤ワインの土地として知られてきた。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロを主に混ぜて造る赤で、カシスの香りと、口の中が乾くような渋みが持ち味である。
どんな赤か
色は濃い赤紫。香りはカシスとプラムに、杉や鉛筆の芯のような乾いた匂いが混じる。口に含むと渋みが強く、舌や歯茎の内側が乾いた感じになり、酸もはっきりある。この渋みはタンニンによるもので、若いうちは硬く、年を経ると角が取れて滑らかになる。
大半が赤で、ほとんどが複数の品種を混ぜて造る。もっとも多く植えられているのはメルロで、そこにカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランを合わせる。どの品種をどれだけ混ぜるかは、畑によっても年によっても変わる。
長く置く前提で造られた赤は、時間とともに果実の香りが引き、タバコやなめし革、トリュフのような香りへ移っていく。色もルビーからガーネット、やがてレンガ色に寄る。一方、手頃な値段の軽い赤は、若いうちの果実の香りをそのまま楽しむものである。
左岸——渋みの立つ、メドックの赤
ジロンド川は上流で、ドルドーニュ川とガロンヌ川に分かれる。逆さのYの字の左側がメドックとグラーヴの左岸、右側がサン・テミリオンとポムロールの右岸、二本の川に挟まれた土地がアントル・ドゥ・メールである。

メドックは大西洋と河口に挟まれた細長い半島で、土は砂利が多い。砂利は昼に熱を蓄えて夜に放ち、遅く熟すカベルネ・ソーヴィニヨンをゆっくり熟させる。ここの赤は渋みが立ち、若いうちは硬い。
村によって顔が違う。ポイヤックはブラックチェリーと甘草、杉の香りを持つ力強い赤。マルゴーは渋みがしなやかで、果実の香りが前に出る。サン・ジュリアンは色が濃く、ブルーベリーやプルーンの香りに、きめの細かい渋みが乗る。ポイヤックのシャトー・ランシュ・バージュが造る「エコー・ド・ランシュ・バージュ」は、この村の赤を試すのに手の届く一本で、赤い果実とカシスの香りに樽のロースト香が重なり、口当たりは丸い。
ボルドー市の南に続くグラーヴとペサック・レオニャンも左岸だが、こちらはメルロのほうが多く植えられている。左岸はカベルネ、右岸はメルロという対応は目安であって、畑ごとに例外がある。
右岸——まろやかな、サン・テミリオンとポムロール

サン・テミリオンは、石灰岩の台地の上に建つ古い村と、その周りの畑の名前で、メルロを主にカベルネ・フランを合わせる。口当たりはまろやかで滑らか、後味に軽い酸が残る。香りは野イチゴや赤スグリに、やさしいスパイスとバニラ。メドックの赤を若いうちに飲むと渋みが硬く感じられるのに対し、こちらは口の中が乾く感じが弱く、果実の丸みが先に来る。
隣のポムロールは小さな産地で、メルロが8割を占める。渋みは細かく、口当たりは滑らか。スミレと小粒の赤い果実に、トリュフの香りが重なる。ペトリュスのような高値で知られる赤も、ここにある。
辛口白と、甘口のソーテルヌ
白は、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンを混ぜる。軽い型はリンゴや洋梨、レモン、白い花の香りで、口当たりは生き生きと軽い。二本の川に挟まれたアントル・ドゥ・メールや、地方名のボルドー白がこの型である。樽で発酵させて丸く仕上げる型もあり、こちらはヘーゼルナッツや蜂蜜の匂いが混じる。

甘口はソーテルヌとバルサック。シロン川の冷たい水が朝に霧を作り、午後に日が差すと、ブドウの実に貴腐(きふ)と呼ばれるカビが付いて水分が抜け、糖が濃くなる。主にセミヨンで造り、若いうちはオレンジやアカシアの花、洋梨の香り。置くとサフランやライチ、イチジクの香りに変わり、色は琥珀に、口当たりはとろりとする。シャトー・ギローのセカンド「プティ・ギロー」には375mlのハーフ瓶があり、蜂蜜のような甘さを酸が締める。
地方名だけの、ボルドー
村の名前を持たず「ボルドー」とだけ名乗る赤が、量ではこの土地の中心である。多くは軽やかで果実味が前に出て、渋みは柔らかい。

バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の「ムートン・カデ」は、1930年に始まったこの地方名の代表的なブランドで、日本の棚でも見かける。赤は熟したチェリーとラズベリー、カシスの香りにナツメグのようなスパイスが重なり、口当たりは豊かでジューシー。白はグレープフルーツとレモン、白い花の香りに、セミヨンのアプリコットや桃の風味が中盤に出る。
温度と料理
渋みのある赤は、少し冷えた室温——16〜18℃くらいで飲む。冷やしすぎると渋みが硬くなり、温かすぎると重く感じる。辛口白と甘口はよく冷やす。
渋みの立つ左岸の赤には、仔羊のローストや牛の赤身。渋みが肉の脂と釣り合う。まろやかな右岸の赤なら、ビーフシチューのような煮込みが合う。辛口白は牡蠣や焼いた白身魚で、酸が魚の脂と塩気を受け止める。甘口のソーテルヌはブルーチーズやフォアグラと合わせる定番があり、塩気と甘みが釣り合う。