大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINKワイン品種図鑑カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨン——渋みが骨格になる、黒い果実の赤

赤ブドウのカベルネ・ソーヴィニヨンはどんな味か。カシスと杉の香り、口の中が乾くような渋み、しっかりした骨格。ボルドー左岸の砂利の畑、ナパの谷底と山側、オーストラリアのクナワラ、チリと日本の一本、料理と温度まで。

カベルネ・ソーヴィニヨンは、房も粒も小さく、果皮が厚い。色が濃く、渋みの強い赤になる。この渋みが骨格になって、味わいを支える。

THE GRAPE

どんな赤か

ボルドーの畑で、完熟した濃紺の小粒のカベルネ・ソーヴィニヨンの房が垂れ下がっている
カベルネ・ソーヴィニヨンの房。ボルドーの畑で10月に撮影。粒が小さく密に詰まっているPhoto: Christophe Eyquem(freeMages) / Wikimedia Commons / CC BY 3.0リサイズ

香りはカシスに、甘草やミントが重なる。口に含むと渋みが張りつめていて、舌や歯茎の内側が乾いた感じになる。

若いうちは渋みが密で、時間をかけて角が取れていく。長く置くために造られた一本では、カシスの香りに森の下草のような匂いが混じってくる。熟すのが遅い品種で、ボルドーではメルローより後に収穫する。

LEFT BANK

ボルドー左岸——砂利の畑で主役になる

青空の下、平坦なブドウ畑の向こうに尖塔つきの城館が並ぶポイヤックの道
ポイヤックのシャトー街道(D2)沿いの畑。6月撮影Photo: F.FATIN / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

この品種が特に力を発揮するのが、ボルドー左岸の砂利質で温かい土壌である。メドックのポイヤックは、力強さと気品を併せ持つ赤として知られ、ブラックチェリーと甘草、杉の木の香りが広がる。マルゴーでは渋みがしなやかになり、繊細さのほうが前に出る。

左岸の赤は、この品種にメルローを合わせて造る。カベルネのしっかりした渋みが骨格をつくり、そこにメルローの丸みとやわらかい果実味が乗る。ブレンドである理由の一つは、味の組み立てにある。

NEW WORLD

ナパ、クナワラ、マーガレット・リヴァー

カリフォルニアのナパ・ヴァレーでは、この品種が生産量の半分を占める。渋みの出方は、同じ谷の中でも平地と山側で分かれる。谷底の畑からは熟したプラムや黒いチェリーの香りの赤ができ、渋みは丸くきめが細かい。山側は昼夜の気温差が大きく、粒が小さくなるぶん色も渋みも濃くなる。カシスやスパイスの香りに土っぽさが混じり、渋みは硬い。朝に霧が出て熟し方が遅れるのも、この谷の特徴である。

オーストラリア南部のクナワラは、テラロッサと呼ばれる赤土の細長い帯で、石灰岩の上に浅く積もっている。国内でも涼しい土地で、ブドウがゆっくり熟すため、色が濃く渋みは細かい。西のマーガレット・リヴァーは中くらいの重さで香り高く、カシスや赤スグリに、杉や月桂樹の葉の匂いが混じる。

EVERYDAY

チリと日本の一本

暗い背景に立つチリのカベルネ・ソーヴィニヨンの瓶。ラベルにマイポ・ヴァレーの表示
チリ、マイポ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン。写真はクシーニョ・マクルの生産者提供によるものPhoto: Cousinomacul / Wikimedia Commons / CC BY 3.0リサイズ

チリでは19世紀半ばからこの品種が育てられ、いまはマイポやコルチャグアの谷が主産地になっている。日中は日差しが強く、アンデスからの風で夜が冷える。ここのカベルネは、カシスや赤い果実の香りに、イチジクやカカオの匂いが重なる。

日本にもこの品種の畑がある。長野で育てたブドウで造るグランポレールの一本は、カシスやラズベリー、プラムの香りにバニラやチョコレートのニュアンスが重なり、渋みはきめが細かい。

TABLE

料理と温度

温度は16〜18℃くらい。冷やしすぎると渋みが硬くなる。

料理は赤身の肉が合わせやすい。若いうちの渋みが強い一本は、ジビエや煮込んだ仔羊のような濃い皿と釣り合い、年を経て角の取れた一本は、シンプルなローストやステーキ、熟成したチーズに寄り添う。日本の食卓なら、焼肉やすき焼き、うなぎの蒲焼のような甘辛い味付けにも負けない。渋みが強いと感じたら、肉を一口挟んでから飲み直すと印象が変わる。