大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINKワイン産地図鑑ナパ・ヴァレー

ナパ・ヴァレー——熟した黒い果実の、力のある赤

カリフォルニアのナパ・ヴァレーはどんなワインを産むのか。カベルネ・ソーヴィニヨンは黒い果実の香りが濃く、渋みはしっかりして力がある。ケイマスやシルバーオーク、シェイファーの赤、しなやかで果実が前に出るメルロー、切れのよい白から丸い白まで開くシャルドネ、1976年のパリ、料理と温度まで。

ナパ・ヴァレーは、サンフランシスコの北にある細長い谷の名前だ。赤で知られていて、主役はカベルネ・ソーヴィニヨン。黒い果実の香りが濃く、渋みはしっかりしている。谷の中では白も泡も造られている。

CABERNET

谷の主役はカベルネ・ソーヴィニヨン

紅葉した赤橙の葉に覆われたブドウの株。葉の間に濃紺の房が残っている
ナパ・ヴァレーの畑。葉が赤く色づいた10月下旬、葉の間に濃紺の房が残るPhoto: Brocken Inaglory / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0リサイズ

香りはブラックチェリーとブラックプラム。そこにタバコと、鉛筆の芯のような匂いが混じる。樽で寝かせるあいだに、焼き菓子のスパイスが加わる。口に含むと、若いうちは密で力強い。

ケイマスは、実が十分に熟すのを待ってから収穫する造り手だ。ブルーベリーとカシスに、リコリスとカカオ。口当たりは滑らかで、渋みは苦みを残さず手触りとして出る。酸は釣り合いを取るだけあって、前には出ない。

スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの「アルテミス」は、ボイズンベリーとプラム、スグリに、チョコレートと焼き菓子のスパイス。口当たりはリッチでクリーミーに始まり、中盤はみずみずしい。渋みは全体に溶けていて、長くふくよかに残る。

カベルネだけの谷ではない。メルローやシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、ジンファンデルも植わっていて、泡もある。

THE VALLEY

谷の南と北

手前の斜面の木立の向こうに、区画と防風林に分かれた谷底が横一面に開け、奥に丘の連なりが見える
オークヴィル・グレードから東を見たナパ・ヴァレー。谷底が区画に分かれ、奥に丘が連なる。9月撮影Photo: Stan Shebs / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0リサイズ

谷は南北に細長く、両側を山脈が挟む。東のヴァカ山脈がセントラル・ヴァレーからの焼けつく熱風をさえぎり、西のマヤカマス山脈が海からの涼しい風をさえぎる。

南の端は、サン・パブロ湾に開いている。湾から入る海風と朝の霧で、ここがいちばん涼しい。ロス・カーネロスと呼ばれるこの一帯は、シャルドネとピノ・ノワールの土地だ。ピノは熟して丸みを帯び、チェリーを軸にしたリッチな味わいになる。シャルドネは力強く、ミネラルを感じる明るい白が多い。

北へ行くほど海の影響は薄れて、夏の日中は暑くなる。谷のいちばん北のカリストガでは、日が落ちてからマヤカマス山脈の切れ目を抜けて冷たい霧が流れ込む。

同じ品種でも、谷の中のどこで採るかで味が変わる。クロ・デュ・ヴァルはメルローをスタッグス・リープ・ディストリクトとカーネロスの両方で造っていて、前者は力強くリッチに、後者は果実が前に出てフレッシュになる。

REDS

カベルネの幅と、メルロー

アーチ天井のトンネル状の地下庫。両側にオーク樽が2〜3段積みで奥まで並び、中央の通路にハンドパレットとホースが置かれている
ナパのトルーチャード・ヴィンヤーズの地下庫。アーチ天井の通路の両側にオーク樽が並ぶ。11月撮影Photo: Sarah Stierch / Wikimedia Commons / CC BY 4.0リサイズ

シルバーオークのカベルネは、ブルーベリーとリコリスに花の香りが混じり、そこへ冷たいウィンターグリーンの気配。アメリカンオークの樽で寝かせるぶん、焼き菓子のスパイスとローストしたココナッツが縁を取る。渋みはなめらかで、余韻が長い。

シェイファーのワン・ポイント・ファイヴは、ブラックベリーとラズベリー、黒いリコリス。そこに月桂樹の葉やセージ、シナモン、クローヴが重なる。口当たりは豊かで、熟した渋みが全体を包む。スタッグス・リープ・ディストリクトの丘の自社畑だけで造るヒルサイド・セレクトは、果実がもっと暗い。トーストとエスプレッソ、乾いたハーブが加わり、渋みが張りをつくる。

メルローは、カベルネより口当たりがなめらかで、果実が前に出る。渋みは細かく、中盤が丸い。ダックホーンのナパ・ヴァレー メルローは、花の香りと濃い赤い果実。しなやかで磨かれた口当たりのまま、果実と渋みが継ぎ目なくつながり、余韻が長く伸びる。単一畑のスリー・パームスは、ビングチェリーとバラの花びらにココアが重なる。プラムとイチジクの豊かさを、ざらりとした渋みが締める。

WHITE

シャルドネと、1976年

白の中心はシャルドネで、植わっている量はカベルネに次いで多い。黄リンゴとパイナップル、柑橘の花、蜂の巣、バニラ。仕上がりの幅は広く、フレッシュで切れのよいものから、リッチで丸くバターのようなものまで開く。冷涼なカーネロスがとくに向く。

グロスのシャルドネは、繊細で均整のとれた白だ。もとはオークヴィルの砂利まじりの畑で育てていたが、いまは涼しいオーク・ノールの畑に移していて、酸が高く残る。谷底のホワイト・ロックのシャルドネは、凝縮した果実とミネラルの風味が持ち味だ。

この谷の名が世界に知られたのは、1976年にパリで開かれた目隠しの試飲だった。白ではシャトー・モンテレーナの1973年のシャルドネが、赤ではスタッグス・リープ・ワイン・セラーズの1973年のカベルネが、フランスの名だたるワインを抑えて1位になる。カリフォルニアの白が、フランスの独壇場と見られていた品種で勝った出来事だった。

TABLE

温度と料理

赤は16〜20℃、白は7〜13℃あたり。

赤は肉の重さに釣り合う。若いものはジビエや仔羊の煮込みのように味の濃い皿、年を経たものはシンプルに焼いたローストやステーキ、熟成チーズ。きのこのリゾットのように土の匂いのある皿も受け止める。白は、切れのよいものなら塩で食べる魚介、丸くバターのようなものなら豚や鶏の料理に合う。