大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINKワイン産地図鑑マールボロ

マールボロ——青い匂いと、まっすぐな酸の白

ニュージーランド最大の産地マールボロのソーヴィニヨン・ブランは、グーズベリーやライムの皮に青い匂いが混じり、酸がまっすぐ立つ。グレイワッキやドッグポイントの一本ずつ違う顔、サザン・ヴァレーズのピノ・ノワール、番号で呼ばれる区画、ブリオッシュの香る泡と甘口、料理と温度まで。

マールボロは、ニュージーランド南島の北端にある産地だ。北と東を海に挟まれ、畑の大半をソーヴィニヨン・ブランが占める。グーズベリーやライムの皮、青リンゴの香りに、青いピーマンのような緑の匂いが混じる。口に含むと酸がはっきり立つ。

SAUVIGNON BLANC

ソーヴィニヨン・ブランの幅

横長の画面いっぱいに、支柱と針金で整えられた畝が左右に並ぶ。中央の通路の先の地平に、細かい稜線の山脈が淡いピンクに染まる
ブレナム近郊ラパウラの畑。畝の先の地平に山脈が連なる。5月撮影Photo: Ann Woolliams / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

グレイワッキのソーヴィニヨン・ブランは、ハネデューメロンとオレンジの花に、庭のハーブの青い匂いが溶けている。口に含むとレモンのようにジューシーで、カシスの風味に張りつめた酸が通る。舌ざわりはたっぷりしていて、薄くない。

同じ造り手のワイルド・ソーヴィニヨンは、樽で発酵させた一本だ。桃とエルダーフラワー、レモンオイルの上に、ドライマンゴーとパイ生地のような甘い層が重なる。口に入ると柑橘の砂糖漬けとピンクペッパー、そして牡蠣殻を思わせる塩気。厚みがあって、余韻が長く伸びる。

ドッグポイントのソーヴィニヨン・ブランは、香りが控えめに始まる。エルダーフラワーにグレープフルーツと白桃、下地に火打石をこすったような煙の匂い。塩気を感じる酸が明るく、後味は乾いて締まる。同じ造り手のセクション94になると、そこへトーストとオートミールが加わり、中盤にクリームのような厚みが立つ。

PINOT NOIR

南の谷と、ピノ・ノワール

手前に黄金色に枯れた草の丘。その谷あいに緑の畝の区画が一枚だけ収まり、周囲は牧草地と乾いた丘陵が幾重にも重なる
セドンの町の近く。枯れ草の丘のあいだに、緑の畝の区画が収まる。1月撮影撮影地はこの節で扱うサザン・ヴァレーズではなく、南のセドン近くPhoto: DXR / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0リサイズ

ワイラウ川がつくった平らな谷底の南に、指を広げたような小さな谷がいくつも並ぶ。ブランコット、オマカ、フェアホールなど、まとめてサザン・ヴァレーズと呼ばれる一帯で、マールボロの畑の五分の一ほどがここにある。谷底より土が古く、粘土を多く含む。

ここはピノ・ノワールの畑が多い土地だ。ダークチェリーとプラムの黒い果実に、スパイスを帯びた土の匂いが混じる。渋みはしなやかで、果実の風味は凝縮している。

グレイワッキのピノ・ノワールは、ダムソンプラムとボイズンベリーの暗い果実に、カカオ豆と白胡椒。ドッグポイントのものは、薔薇とスミレの明るい花の香りに、歯ごたえのある赤いベリーが続く。渋みは細かく、骨格がある。オーンツフィールドの畑では、いちばん多く植わっている品種がピノ・ノワールだ。ソーヴィニヨン・ブランで名の知れたクラウディ・ベイも、ピノ・ノワールはこの一帯から取っている。

この谷のソーヴィニヨン・ブランは、輪郭が引き締まる。グーズベリーと柑橘が、形を保ったまま長く残る。

BLOCKS

番号で呼ばれる区画

節くれ立った古い株を正面から。株の上の垣根に黄緑の葉が茂り、その下に黄緑の房が横一列に十数房ぶら下がる
ソーヴィニヨン・ブランの株。垣根の下に房が横一列に並ぶ。3月撮影Photo: Olivier Lemoine(Photo-Terroir.fr) / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

セント・クレアは、区画に番号をつけて別々に瓶詰めしている。パイオニア・ブロックと呼ばれるその並びは、ソーヴィニヨン・ブランだけでなく、シャルドネやリースリング、ピノ・ノワールにまで及ぶ。

ブロック1は、パッションフルーツとカシスに火打石のような硬い匂いが差す。カシスとグレープフルーツの濃い果実味が広がり、余韻にかすかな塩気が残る。ブロック3は、カシスの芽と摘みたてのハーブの青さが立つ。口に入るとトマトの葉と青いピーマン、そこへ肉厚の白桃が続く。ブロック20は熟したグーズベリーに貝殻のような匂いが混じり、グレープフルーツの内皮のほろ苦さが後半に乗る。

OTHERS

泡と、甘口

泡はこの土地の得意分野だ。瓶の中でもう一度発酵させる造りで、使う品種はシャルドネとピノ・ノワール。ナンバーワン・ファミリー・エステートのキュヴェNo.1はシャルドネを主体にした一本で、トーストしたブリオッシュの香りに柑橘と核果が重なる。泡は細かく、口の中で長く続く。ノーティラスはピノ・ノワールを主体にしていて、ビスケットのような香ばしさが前に出る。

甘口もある。セント・クレアのノーブル・リースリングは、収穫を遅らせて貴腐のついた実を待ち、干しぶどうのように甘みが濃くなってから摘む。陽に熟したアプリコットとドライいちじく、下地に生姜。とろりと濃いのに、酸がその甘さを切って、重たく残らない。フォレストの貴腐リースリングは、豊かな甘さにオレンジマーマレードとタフィーの風味が重なる。酸もあり、後味は締まる。

TABLE

温度と料理

白と泡はよく冷やして、ピノ・ノワールは15℃あたり。

料理は、セビーチェのように柑橘を使った皿だと、ワインの酸と響き合う。海水で蒸したムール貝も定番だ。樽で発酵させた厚みのある白なら、鶏やクリームソースのパスタまで届く。ピノ・ノワールは鴨や鹿、きのこ。甘口は食後に、ブルーチーズと合わせる。