この連載の目次(全8回・完結)
- 01プロ野球12球団は、なぜこんなに雰囲気が違うのかいまここ
- 02一試合の空気は、どこで変わるのか
- 03メジャーで活躍する日本人選手——誰が、どのチームにいる?
- 04プロ野球の一年は、いついちばん熱くなるのか
- 05球場は、座る場所と応援で別の場所になる
- 06甲子園の名前は、ドラフトのあとどう続くのか
- 07打率、本塁打、防御率——中継の数字はどこまで見ればいい?
- 08最終回——WBC決勝、大谷翔平とトラウトの最後の打席
巨人、阪神、広島、日本ハム。同じプロ野球の球団名でも、そこから浮かぶものは球団ごとに違う。球場の作りが違い、外野席から聞こえる音が違い、その球団が世間からどう見られているかも違う。ここでは順位や成績ではなく、その違いのほうから12球団を見ていく。
12球団は、二つのリーグに分かれている
日本のプロ野球を運営しているのはNPB(一般社団法人日本野球機構)である。その下にセントラル・リーグとパシフィック・リーグという二つのリーグがあり、それぞれに6球団。合わせて12球団が、いまNPBに所属している。
まず動かない情報だけを置く。正式名称と、本拠地にしている球場である。
| 球団 | 本拠地 |
|---|---|
| 読売ジャイアンツ | 東京ドーム |
| 阪神タイガース | 阪神甲子園球場 |
| 広島東洋カープ | MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島 |
| 横浜DeNAベイスターズ | 横浜スタジアム |
| 中日ドラゴンズ | バンテリンドーム ナゴヤ |
| 東京ヤクルトスワローズ | 明治神宮野球場 |
表記はNPB公式の球団別インデックスに合わせた。
| 球団 | 本拠地 |
|---|---|
| 福岡ソフトバンクホークス | みずほPayPayドーム福岡 |
| 北海道日本ハムファイターズ | エスコンフィールドHOKKAIDO |
| 東北楽天ゴールデンイーグルス | 楽天モバイル 最強パーク宮城 |
| 埼玉西武ライオンズ | ベルーナドーム |
| 千葉ロッテマリーンズ | ZOZOマリンスタジアム |
| オリックス・バファローズ | 京セラドーム大阪 |
「福岡ソフトバンクホークス」のように、地域名・企業名・愛称が連なる正式名称が多い。会話では略称で呼ばれる。
二つのリーグは、シーズンの大半を別々に戦う。同じリーグの5球団と繰り返し当たり、順位表もリーグごとに分かれている。だから「阪神とソフトバンクの試合をあまり見ない」のは当然で、両者が当たる期間は年のうち限られている。
ルールにも差がある。パ・リーグでは、投手の代わりに打つ専門の選手を打順に入れられる。これをDH(指名打者)という。セ・リーグにはこの制度がなく、投手も打席に立つ——ただしNPBは、セ・リーグが2027年シーズンからDH制を採用すると発表している。2026年までは、セの試合で投手が打席に入る姿が見られる。

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島2016年3月・広島市。2階スタンドから撮影
赤い服の観客で埋まったスタンド。奥に広島の市街地と山並みが入る。
Photo: HKT3012 / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
本拠地の球場が、球団の顔になっている
球団の像をいちばん強く作っているのは、本拠地の球場である。
阪神タイガースの阪神甲子園球場は、夏になると高校野球の全国大会の会場にもなる。同じ土の上でプロと高校生が試合をする球場は、ほかにない。応援の面でもよく知られているのが、7回の攻撃前に一斉に飛ばすジェット風船だ。球団は公式サイトで、この「ラッキーセブン」の演出を2026シーズンより甲子園で再開したと告知している。ただし同じ阪神の主催試合でも、京セラドーム大阪ではジェット風船は禁止されている。応援の中身は球団だけでなく、球場によっても変わる。
広島東洋カープのMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島は、スタンドが赤い服で埋まる光景で知られている。上の写真のように、球場の奥に市街地と山並みが入るのも特徴で、地方都市の球場の風景としてよく紹介される。
読売ジャイアンツの東京ドームは、屋根のある球場である。地上波のプロ野球中継で巨人戦が長く広く放送されてきたため、巨人をプロ野球の代表として記憶している世代がいる。中継の編成が変わったあとに野球を見始めた世代では、その位置づけは同じではない。球団の像は、その人が野球をどう見てきたかによって変わる。
北海道日本ハムファイターズのエスコンフィールドHOKKAIDOは、2023年に開業した新しい球場である。公式サイトは、収容人数3万5000人、敷地面積5ha、日本初の開閉式屋根付き天然芝球場と説明している。芝の育成を促すため南側は一面のガラス壁で、球場の周りを一周できるコンコースがある。球場そのものが目的地として語られる、いまのところ珍しい例になっている。
福岡ソフトバンクホークスのみずほPayPayドーム福岡も屋根のある球場だ。この球団については、近年は「強いチーム」として名前が挙がりやすい。

阪神甲子園球場の外周2022年8月・兵庫県西宮市
球場の外の広場。奥が甲子園球場、上を通るのは阪神電車の高架。
Photo: 江戸村のとくぞう / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
外野席の音が、いちばん分かりやすい違い
球団ごとの違いが、その場でいちばん分かるのは外野席である。
多くの球場では、外野の一角がホームチームの応援席、反対側がビジター(相手チーム)の応援席になっている。そこに応援団が入り、旗を振り、太鼓とトランペットで曲を鳴らし、打席ごとに違う曲が流れる。選手ごとに応援歌が決まっているので、誰の打席かは曲を聞けば分かる。
この応援をどう受け取るかは、はっきり分かれる。外野席の一体感を野球観戦の中心に挙げる人がいる一方で、音が続くので試合に集中しにくいという受け止めもある。どちらが正しいという話ではなく、席を選ぶときの好みの問題になる。近年は、応援の音が届きにくい席や、内野の静かなエリアを選ぶ人も珍しくない。

ベルーナドームの外野応援席2009年ごろ・埼玉県所沢市。当時の名称は西武ドーム
旗と幟が立ち並ぶ外野の応援席。手前は守備位置につく外野手。
Photo: 羅威雄達 / Wikimedia Commons / パブリックドメイン(リサイズ)
残りの球団と、いまの順位
ここまでで触れたのは6球団だけである。横浜DeNAベイスターズ、中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズも、それぞれ球場の作りと応援の色を持っている。
球団ごとの成り立ち——いつ生まれ、なぜその土地に本拠地があり、球団名がどこから来たのか——は、12球団図鑑に1球団1ページで置いてある。全部を読む必要はない。話し相手のひいき球団が分かったときに、そのページだけ開けばいい。
順位のほうは、試合をするたびに変わる。いまの位置だけ、下にまとめておく。
2026年8月16日終了時点。 セ・リーグは阪神が首位(59勝46敗1分)で、巨人が2.0ゲーム差の2位。以下、ヤクルト、DeNA、中日、広島と続く。ゲーム差は首位との開きを試合数に置き換えた数字で、2.0なら自分が2勝して相手が2敗すれば並ぶ。
パ・リーグはソフトバンクが首位(67勝39敗1分)。2位が西武、3位が日本ハムだが、勝った数は日本ハムのほうが多い(日本ハム62勝、西武60勝)。NPBの順位は勝った数ではなく勝率——勝った試合数を、勝ちと負けの合計で割った割合——で決まり、引き分けはこの計算から外れる。だから勝利数の多いチームが下に来ることがある。
(数字はNPB公式の勝敗表による)
一試合のなかで空気がどこで変わるのかは、第2回で扱う。