大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

SPORTS12球団図鑑ソフトバンク

福岡ソフトバンクホークス——勝つことが平常運転に見える、選手層の厚い球団

この10年で日本一5回。主力が抜けても次の選手が出てくる三軍制の育成と、大型補強を同時にやる。それでも「3年間優勝なし」が危機と呼ばれる——日本一だけが合格点の球団の中身を1ページで。

この10年の日本一が5回。2017年から2020年には日本シリーズを4連覇し、2025年にも頂点に立った。福岡ソフトバンクホークスの強さは「今年は強い」ではなく、勝つことが平常運転に見えるという種類のものである。だからこの球団だけは、リーグ優勝を逃した3年間(2021〜2023年)が「危機」と書かれた。合格点が日本一に置かれた球団は、いまのNPBでここだけだ。

白いホームユニフォームの外野手が、バットを離して一塁へ走り出している

周東佑京2021年5月・福岡PayPayドーム(当時)

育成ドラフト出身から俊足で一軍に定着した代表例。この球団の層の厚さは、こういう選手が下から出てくることで作られている。

Photo: Gaffky / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

QUICK

30秒で分かる球団

01
福岡ソフトバンクホークスは、いまこう見る
  • リーグ・本拠地

    パ・リーグ/みずほPayPayドーム福岡

    パシフィック・リーグの球団。福岡のドーム球場が本拠地

  • 2016〜2025年

    日本一5回

    2017〜2020年に日本シリーズ4連覇。3年間の停滞を挟み、2024・2025年とリーグ連覇、2025年は日本一

  • 現在の段階

    常勝を維持する側

    常勝の維持期。リーグ優勝ではなく日本一が目標として語られる

  • 付いている印象

    層が厚い

    三軍制の育成と大型補強を同時に行う。主力が抜けても次が出てくる

DECADE

この10年の順位の波

02
2016〜2025年のリーグ順位
順位補足
20162位
20171位リーグ優勝・日本一
20182位リーグ2位から日本一
20192位リーグ2位から日本一
20201位リーグ優勝・日本一。4連覇
20214位
20222位
20233位
20241位リーグ優勝。日本シリーズは敗退
20251位リーグ優勝・日本一

NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。

見落とされがちな事実がある。日本シリーズ4連覇の間、リーグ優勝は2回しかない。2018年と2019年はシーズンでは西武に及ばず2位——それでもクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズでは圧倒した。「シーズンの首位」と「最後に立っている球団」を分けて考えると、この時期のソフトバンクは後者の球団だった。

2021年から2023年は、4位・2位・3位。他球団なら普通の3年間が、ここでは「3年連続V逸」と呼ばれ、監督が2度代わった。2024年に小久保裕紀監督でリーグへ戻り、2025年は5年ぶりの日本一。停滞と呼ばれた期間ですら、Bクラスは1年しかない——この球団の基準の高さは、この表がいちばん雄弁に語っている。

ホークスのユニフォームと帽子の監督が、笑顔でスタンドへ手を振っている

工藤公康監督2017年11月4日・日本シリーズ第6戦

日本一が決まった夜。この2017年から、日本シリーズを4年続けて制した。

Photo: えすぱにぃ / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

VIEW

いま、この球団はどう見られているか

層の厚さの源泉は、三軍制である。 支配下より下の育成選手を大量に抱えて鍛える仕組みを、この球団は早くから本格化させた。育成出身の千賀滉大は2022年オフ、育成出身者として初めてメジャー契約に到達。捕手の甲斐拓也も、俊足の周東佑京も育成から出てきた。スターが抜けるたびに「次」が現れるという球団像は、この仕組みの上に立っている。

それでいて、補強もためらわない。 育成選手を一軍の戦力へ引き上げる一方、2022年オフには日本ハムから近藤健介を、2023年オフにはFAで山川穂高を獲得した。育成と大型補強を同時に進めるのが、ソフトバンクの編成である。「金満」という揶揄は常にあるが、両方を最大出力でやる球団は他になく、批判と羨望が半分ずつ混ざったのが実際の見られ方に近い。

出て行く選手も多い。 FAでの流出は甲斐で15人目。石川柊太もロッテへ移り、有原航平は日本ハムへ戻った。それでも翌年に順位が崩れないから、「誰が抜けても大丈夫」という見方がさらに強まる。裏側には、リチャードのように出場機会を求めて他球団へ移る若手が続く現実もある。層の厚さは、中で競争する選手にとっては壁の高さでもある。

黒いビジターユニフォームの打者が、二塁上で手袋を直しながら立っている

近藤健介2023年4月・対オリックス戦。移籍1年目

日本ハムからFAで加入し、1年目に打撃二冠。育成と並行して、必要な選手は外からも獲る。

Photo: Orixbaseballclub / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

SHARED

野球好きの中で共有されている3つの前提

  1. 主力が抜けても、次の選手が出てくる。 千賀・甲斐・周東と、育成出身の主力を数え上げられる球団は他にない。FAで15人抜けても強いままである事実が、この前提を支えている。
  2. 育成と大型補強を、同時に行う。 育成選手を一軍へ引き上げる一方で、大型補強も同時に進める。どちらか一方の球団はあっても、両方を全力でやるのはここだけと見られている。
  3. リーグ優勝では足りず、日本一まで求められる。 2024年はリーグを制しても日本シリーズで敗れ、「未完」と扱われた。小久保監督自身が就任会見で「優勝・日本一を目指して戦う」と2つ並べている。
FAN

好きになる理由と、応援していてしんどいところ

シーズンの大半を、優勝争いの中で過ごせる。この10年でBクラスは1度だけ。「今年はどうせ無理だ」という春を、この球団のファンはほとんど知らない。秋になれば短期決戦があり、日本一の瞬間を10年で5回見た。強い球団を応援する快感を、いま日本でいちばん安定して味わえるのがホークスファンである。

しんどさは、勝敗ではなく選手の入れ替わりにある。競争が激しすぎて、好きになった選手が定着できない。育成から上がってきた若手が出番を得られないまま他球団へ移り、そこで開花する姿を見ることもある。チームは勝ち続けるのに、応援していた個人はいなくなる——「チームの物語」と「選手の物語」が分かれやすいのが、この球団の応援の独特な難しさである。