大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

SPORTS12球団図鑑阪神

阪神タイガース——一試合が大ごとになる球団と、2023年以後

連勝も連敗も、翌朝には街の話題になっている。報道の密度が12球団でいちばん高い球団は、2023年の日本一と2025年のリーグ優勝で「最後に届かない」という古い像から抜け出した。その現在地を1ページで。

3連勝すれば「今年は行ける」が街に流れ、3連敗すれば「どうなっとんねん」が翌朝の1面に載る。阪神タイガースは、一勝一敗の扱いが12球団でいちばん大きい球団である。長いあいだ「人気はあるのに、最後に届かない」と語られてきたが、2023年に38年ぶりの日本一、2025年にもリーグ優勝。いまは「届かない球団」ではなく、勝って当たり前を初めて要求される側に回っている。

縦縞のユニフォームでバットを持つ打者。背番号8、黒いヘルメット。奥のスタンドは観客で埋まっている

阪神タイガースの佐藤輝明2024年3月・阪神甲子園球場

いまの打線の中心。2025年は40本塁打・102打点で二冠を取った。

Photo: とらとうはんしん / Wikimedia Commons / CC BY 4.0リサイズ

QUICK

30秒で分かる球団

01
阪神タイガースは、いまこう見る
  • リーグ・本拠地

    セ・リーグ/阪神甲子園球場

    セントラル・リーグの球団。本拠地は屋外の甲子園。夏は高校野球と併用する

  • 2016〜2025年

    2023年に、流れが変わった

    前半は2位止まりの年が続き、2018年には最下位も。2023年に日本一、2025年に再びリーグ優勝

  • 現在の段階

    優勝を要求される側

    若い主力と厚い投手陣がそろい、挑戦者ではなく本命として扱われる

  • 付いている印象

    一試合が大ごと

    連敗すると報道もファンも騒がしい。その渦の大きさ自体がこの球団らしさ

DECADE

この10年の順位の波

2016年からの数年は、「悪くはないが、優勝はない」が続いた時期である。2017年に2位、2020年・2021年にも2位。そのたびに期待が膨らみ、翌年に落ちる。2018年には最下位まで沈んだ。優勝を「アレ」と言い換える岡田彰布監督の流儀が2023年に流行語になったのは、裏を返せば、それまで優勝という言葉を口にしては届かない年が続いたからでもある。

02
2016〜2025年のリーグ順位
順位補足
20164位
20172位
20186位最下位
20193位
20202位
20212位
20223位
20231位リーグ優勝、38年ぶり2度目の日本一
20242位
20251位リーグ優勝。日本シリーズは敗退

NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。

2023年、岡田監督のもとで18年ぶりのリーグ優勝と日本一。2025年には藤川球児監督の1年目で再びリーグを制した。2年おきに監督が代わりながら上位が続いているのは、近本光司・佐藤輝明・森下翔太とドラフトで当て続けた野手陣と、リーグ最少失点級の投手陣が土台にあるからで、一人のカリスマ頼みの強さではない。

VIEW

いま、この球団はどう見られているか

報道の密度が、他球団と桁違いである。 在阪のスポーツ紙は阪神を原則毎日1面に置く編集方針で知られ、2023年には「優勝」を「アレ」と言い換える球団側の流儀に、メディアがこぞって乗った。この密度があるから、普通の連敗も「大事件」の見出しになる。優勝を争っている年ですら、3連敗すれば「悪夢」の文字が躍る。

強さの土台は投手力、と見られている。 2025年のチーム防御率2.21はリーグ1位で、才木浩人の1.55はセの先発でいちばん良い数字だった。ただし投手だけの球団でもない。同じ2025年に佐藤輝明が40本塁打・102打点の二冠。「投手王国」という古い呼び名だけでは、いまの阪神は半分しか説明できない。

評価が、短期間で揺れやすい。 佐藤輝明は、打撃の波や守備が課題とされた時期を経て、2025年には40本塁打を放ち、優勝を支えた。監督への風当たりも短いサイクルで変わる。選手も監督も、その渦の中で結果を出すことを求められる環境である。

SHARED

野球好きの中で共有されている3つの前提

  1. 一勝一敗への反応が大きい。 勝てば街が明るく、負ければ翌朝の紙面が騒がしい。この振幅の大きさは、他球団のファンからも「阪神だから」と了解されている。
  2. 投手力がシーズンを支える年が多い。 2023年の日本一も2025年の優勝も、失点の少なさが土台だった。打線が語られる年より、投手陣が語られる年のほうが多い。
  3. 若手への期待が大きく、結果が出ない時期は批判も強くなりやすい。 佐藤輝明への見られ方の変化は、その一例である。
球場の外の広場。奥に阪神甲子園球場の建物と球団ショップ、右手に商業施設、上に鉄道の高架が通る

阪神甲子園球場の外周2022年8月・兵庫県西宮市

球場の外まで含めて阪神の空間である。2025年の優勝の夜は、この外周でも六甲おろしが歌われた。

Photo: 江戸村のとくぞう / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

FAN

好きになる理由と、応援していてしんどいところ

勝敗を、球場と街ぐるみで共有できる。2025年9月にリーグ優勝が決まった夜は、甲子園の場外にいた人たちまで六甲おろしを歌った。テレビの前で一人で見ていても、翌日には職場や店先に同じ話題がある。応援が個人の趣味で終わらず、土地の空気になる——これはこの球団でしか味わえない。

しんどさは、その裏面にある。普通の連敗が大事件のように扱われるので、チームが落ちている時期は逃げ場がない。「どうせ今年もあかん」と言いながら見続ける我慢の型は、2023年以後も完全には消えていない。期待の総量が大きい球団を応援するとは、そういうことでもある。