2022年・2023年と2年連続の最下位。そこから2024年・2025年に2年連続の2位——北海道日本ハムファイターズは、いま12球団でいちばん分かりやすい「回復途中」の球団である。立て直しの手段は、若手を大量に試合へ出すこと。指揮を執るのは、就任会見で「優勝なんか目指しません」と言い放った新庄剛志監督である。派手な言葉の裏で実際に何が変わったのかを、順位と起用の事実から見ていく。

エスコンフィールドHOKKAIDO2023年7月・北海道北広島市
2023年開業の新本拠地。屋根が開き、天然芝に光が入る。球場そのものが行き先になった。
Photo: StealthJPN / Wikimedia Commons / CC0(リサイズ)
30秒で分かる球団
リーグ・本拠地
パ・リーグ/エスコンフィールドHOKKAIDO
パシフィック・リーグの球団。2023年開業の開閉式屋根・天然芝の球場が本拠地
2016〜2025年
日本一から最下位、そして2位
2016年に日本一。その後沈み、2022・2023年は最下位。2024・2025年に連続2位まで回復
現在の段階
再建の仕上げ段階
若手中心のチームが上位に定着。残る宿題は2016年以来のリーグ優勝
付いている印象
若手をとにかく使う
実績より状態と競争で起用が決まる。日替わりの打線が代名詞になった
この10年の順位の波
| 年 | 順位 | 補足 |
|---|---|---|
| 2016 | 1位 | リーグ優勝・日本一 |
| 2017 | 5位 | |
| 2018 | 3位 | |
| 2019 | 5位 | |
| 2020 | 5位 | |
| 2021 | 5位 | |
| 2022 | 6位 | 最下位。新庄監督1年目 |
| 2023 | 6位 | 最下位 |
| 2024 | 2位 | |
| 2025 | 2位 |
NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。
2016年の日本一は、大谷翔平が投打の中心にいたチームだった。その大谷が2017年オフにメジャーへ移り、以後は5位圏に沈む年が続く。2021年オフ、球団は栗山英樹監督の10年体制を終え、新庄剛志を監督に据えた。
最初の2年は最下位である。ただしこの2年間、チームは実績あるベテランの序列を崩し、清宮幸太郎や万波中正ら若手を失敗込みで使い続けた。ドラフト8位から先発の柱になった北山亘基、現役ドラフトで来て開花した水谷瞬——「誰にでも出番がある」状態を先に作り、勝ちは後からという順序で、2024年に2位へ浮上した。

万波中正2023年4月
再建期に出番を与えられて主力へ育った代表格。強肩と長打で外野の顔になった。
Photo: Orixbaseballclub / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
いま、この球団はどう見られているか
「若手を伸ばす球団」という評価が復活した。 かつて大谷翔平やダルビッシュ有を育てた球団は、いままた「機会は平等に、評価は公正に」型の起用で若手を出し続けている。順位が最下位から2位へ動いたことで、この方針は「新庄の思いつき」ではなく「フロントの育成戦略が実った」ものとして語られるようになった。
派手さの裏で、配置と競争が根本から変わった。 毎試合のように打順が入れ替わる「日替わり打線」は、見た目のパフォーマンスとして扱われがちだが、実態は固定ポジションの解体である。全員に出番の可能性がある代わりに、誰も安泰ではない。この方式には「選手が落ち着かない」「我慢が足りない」という批判も根強くあり、評価が二つに割れたまま結果だけが出ているのが現在地である。
エスコンフィールドが、球団の印象ごと変えた。 2023年に開業した新球場は、開業翌年の主催試合動員が札幌ドーム時代の最多を超えた。来場者の4割は野球観戦以外の目的というデータもあり、「野球を見に行く場所」から「行きたい場所で野球もやっている」へ、球場の位置づけが変わった。チームの再建と球場の成功が同時に走ったことで、球団全体が「新しいことをやる側」として見られている。
野球好きの中で共有されている3つの前提
- 若手を試合へ出しながら、チームを作り直してきた。 最下位の2年間は、我慢して若手を使う期間だった——という理解が、2位へ上がったいまでは共有されている。
- 新庄監督の派手な印象の裏で、選手の配置と競争が大きく変わった。 日替わり打線も守備位置の流動化も、見せ物ではなく序列の解体である。賛否は割れたままだが、変えたこと自体は誰も否定しない。
- エスコンフィールドへの移転が、観戦体験と球団の印象を更新した。 「球場がすごい」が、いまやこの球団の入口になっている。動員は札幌ドーム時代を超えた。
好きになる理由と、応援していてしんどいところ
無名に近かった選手が、目の前で主力になっていく。万波も水谷も北山も、数年前は名前を知られていなかった。「この選手を最初から知っている」という感覚を、いまいちばん味わえる球団である。そしてその舞台が、開閉式屋根と天然芝のエスコンフィールド。チームの若さと球場の新しさが、同じ方向を向いている。
しんどかったのは、結果を待つ時間の長さだ。「優勝なんか目指しません」から始まった2年間の最下位は、方針を信じて見続けるしかない期間だった。いまも宿題は残る。2位までは来たが、リーグ優勝は2016年から遠ざかったまま。再建の物語は、優勝で締めるまで完結しない——ファンはいま、その最終章を待っている。