この10年、リーグ優勝が3度。一度も最下位に落ちていない。ほとんどの球団なら誇っていい成績だが、巨人ではこれが「物足りない10年」として語られる。リーグを制しても日本一には届かず、2位で終えれば批判が出る。評価の基準線が「優勝」に置かれている——読売ジャイアンツの現在像は、強いかどうかより先に、この期待値の高さから見たほうが分かりやすい。

東京ドームの内部2016年9月・東京都文京区
本拠地・東京ドーム。ここで行われる巨人戦は、いまも相手球団のファンまで含めて観客が入る。
Photo: Chi-Hung Lin / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0(リサイズ)
30秒で分かる球団
リーグ・本拠地
セ・リーグ/東京ドーム
セントラル・リーグの球団。本拠地は屋根つきの東京ドーム
2016〜2025年
優勝3度、日本一なし
リーグ優勝2019・2020・2024年。最下位はゼロ。ただし日本シリーズは勝てていない
現在の段階
優勝を狙い続ける側
再建期ではなく、毎年優勝を求められる立場が続いている
付いている印象
「勝って当然」
2位や3位では評価されにくい。人気と反発の両方が大きい
この10年の順位の波
順位だけ見れば、安定した強豪である。
| 年 | 順位 | 補足 |
|---|---|---|
| 2016 | 2位 | |
| 2017 | 4位 | |
| 2018 | 3位 | |
| 2019 | 1位 | リーグ優勝。日本シリーズは4連敗 |
| 2020 | 1位 | リーグ優勝。日本シリーズは再び4連敗 |
| 2021 | 3位 | |
| 2022 | 4位 | |
| 2023 | 4位 | |
| 2024 | 1位 | リーグ優勝。日本シリーズには進めず |
| 2025 | 3位 |
NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。
10年間の最低が4位。リーグ優勝は2019年、2020年、2024年の3度ある。ところが日本一は一度もない。2019年と2020年の日本シリーズはいずれもソフトバンクに4連敗。2024年はリーグを制したのに、その先のクライマックスシリーズで敗れ、日本シリーズにすら進めなかった。
この「リーグでは勝てるが、最後まで勝ち切れない」形が、いまの巨人への評価を作っている。2016〜2018年に2位→4位→3位と続いたときは、優勝を逃したこと自体が「3年連続V逸」と呼ばれ、監督が退任した。他の球団なら及第点で済む順位が、この球団では区切りの理由になる。

岡本和真2019年4月・読売ジャイアンツ時代
生え抜きで4番を長く務め、2026年にメジャーのブルージェイズへ移った。補強の球団という印象の内側に、こういう中心選手がいた。
Photo: 江戸村のとくぞう / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
いま、この球団はどう見られているか
期待値が、他球団と別の物差しで動く。 「優勝以外は失敗」という書かれ方は、この球団に限っては誇張ではなく、実際の報道の型である。2位や3位で終えた年の総括は、他球団の優勝逸より厳しく書かれる。順位表の上では十分に上位でも、巨人の評価はそう動く。
補強の印象と、生え抜きの実像が両方ある。 2016年オフにはFA選手3人の同時獲得という史上初の補強をやり、2018年オフには広島から丸佳浩を獲った。「金で選手を集める球団」という見られ方は、こうした事実に根がある。ただし実像はそれだけではない。長く4番を務めた岡本和真は高卒からの生え抜きで、2026年にメジャーへ移った。坂本勇人も戸郷翔征も自前で育った選手である。近年は報道でも「大型補強から育成へ」の転換が語られていて、補強一辺倒の球団像は、いまの実態からは少しずれ始めている。
他球団のファンからも、常に見られている。 「アンチ巨人」という言葉が辞書的に定着しているほど、この球団は好意と反発の両方を集めてきた。地上波の全国中継が減り、巨人戦は「国民が全員見るもの」ではなくなったが、阪神との首位攻防が「伝統の一戦」として特別扱いされる状況は続いている。負ければ、戦力も監督も補強もまとめて批判される——注目の総量が大きい球団の宿命である。
野球好きの中で共有されている3つの前提
- 2位や3位では「よくやった」になりにくい。 2016〜2018年の2位→4位→3位は「3年連続V逸」と呼ばれ、監督交代につながった。優勝が基準線で、それ以外は程度の差でしかない——という受け止めが、ファンにも報道にも共有されている。
- 大型補強の印象が強いが、生え抜きの中心選手も多い。 FA3人同時獲得(2016年オフ)のような派手な補強史の一方で、岡本和真・坂本勇人・戸郷翔征と、チームの背骨は自前で育てた選手が担ってきた。
- 人気と反発が、同時に大きい。 巨人ファンの数も、巨人が負けると喜ぶ層の厚さも、12球団で図抜けている。どの球団のファンと話しても、巨人への態度だけは何かしら持っている。
好きになる理由と、応援していてしんどいところ
毎年、優勝を期待して開幕を迎えられる。これがいちばんの魅力である。10年間最下位がなく、数年おきにリーグ優勝が来る球団は、実際にはほとんどない。「今年は何位を目指すか」ではなく「今年こそ日本一か」から始められるのは、この球団のファンの特権と言っていい。
その裏返しで、負けたときの世間の反応は12球団でいちばん厳しい。2位でも「失敗」と書かれ、監督の進退が話題になり、補強の是非が蒸し返される。優勝しても日本シリーズで負ければ、今度はそこが基準になる。満足できる着地点が「日本一」しかない——応援していてしんどいのは、この出口の狭さである。