2018年・2019年、西武はリーグを連覇した。「山賊打線」と呼ばれた強力打線の中軸——浅村栄斗、森友哉、山川穂高——は、いま全員が他球団のユニフォームを着ている。FAでの選手流出は12球団で最も多い。埼玉西武ライオンズは、選手を育てる力と、育った選手を引き留められない事情を同時に抱えた球団である。そしていま、今度は自前で育てた投手たちで、立て直しを進めている。

連覇期のベルーナドーム2019年4月・埼玉県所沢市。当時の名称はメットライフドーム
リーグ連覇2年目の春の場内。屋根はあるが壁がなく、外の空気が入る独特の構造をしている。
Photo: Jeffrey Hayes / Wikimedia Commons / CC BY 2.0(リサイズ)
30秒で分かる球団
リーグ・本拠地
パ・リーグ/ベルーナドーム
パシフィック・リーグの球団。所沢の丘の上、外気が入る独特のドームが本拠地
2016〜2025年
連覇、流出、そして底
2018・2019年にリーグ連覇。主力が次々に抜け、2024年は球団ワーストの49勝91敗
現在の段階
投手で立て直し中
育てた若い投手陣を軸に、立て直しが形になりつつある
付いている印象
育てては、抜かれる
強打者を自前で育てるが、FAやメジャー移籍での流出は12球団最多
この10年の順位の波
| 年 | 順位 | 補足 |
|---|---|---|
| 2016 | 4位 | |
| 2017 | 2位 | |
| 2018 | 1位 | リーグ優勝 |
| 2019 | 1位 | リーグ連覇 |
| 2020 | 3位 | |
| 2021 | 6位 | 最下位 |
| 2022 | 3位 | |
| 2023 | 5位 | |
| 2024 | 6位 | 最下位。49勝91敗は球団ワースト |
| 2025 | 5位 |
NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。
連覇の中身は打線だった。2018年のチームは196本塁打・792得点。「山賊打線」の呼び名どおり、打ち勝つ野球でパを2年制した。
その後の下り坂は、流出の年表とほぼ重なる。連覇の年の4番格・浅村栄斗が2018年オフに楽天へ。エースの菊池雄星が2019年オフ、中心打者の秋山翔吾も同じオフに海を渡った。2022年オフには捕手の森友哉がオリックスへ、2023年オフには山川穂高がソフトバンクへ。そして2025年オフ、エースになっていた今井達也がメジャーのアストロズへ移る(連載第3回)。抜けたのは毎回、そのとき打線か投手陣の軸だった選手である。2024年にはチーム打率.212——パ・リーグ史上最低——で球団ワーストの91敗まで沈んだ。

森友哉2019年4月・メットライフドーム(当時)。対ロッテ戦
連覇期の中心打者の一人。この年、捕手として首位打者を取り、のちにFAでオリックスへ移った。
Photo: Jeffrey Hayes / Wikimedia Commons / CC BY 2.0(リサイズ)
いま、この球団はどう見られているか
「育てては抜かれる」は、もはやこの球団の代名詞である。 FAでの流出は12球団最多。専門媒体は「連覇の中軸が全員他球団へ」「山賊打線はわずか5年で大解体」と繰り返し書いてきた。一方で、流出を前提に次の人材を育て続ける仕組みを「人材開発の球団」として肯定的に分析する論もある。嘆きと敬意が、同じ事実に向けられている。
いまの再建は、打ではなく投手で進んでいる。 隅田知一郎、2024年新人王の武内夏暉、守護神の平良海馬——投手陣の軸は、いずれも自前で育てた顔ぶれである。今井達也は2025年オフにメジャーへ移ったが、同時期にポスティングを申請した髙橋光成は成立せず残留した。山賊打線の球団が、投手のチームとして立て直しを図る——この転換自体が、いまの西武のいちばん新しい見どころである。
「出て行くだけの球団」でもなくなりつつある。 2025年オフにはFAで桑原将志を迎え入れた。流出の一方通行だった選手の出入りが双方向になるのか——その変化を、地元も専門媒体も注意深く見ている。
野球好きの中で共有されている3つの前提
- 強打者や中心選手を、自前で育ててきた。 2018・2019年の連覇時には、山川穂高、森友哉、外崎修汰ら、自前で獲得・育成した野手が打線の中心にいた。この顔ぶれで大量得点を重ねた打線が「山賊打線」と呼ばれた。
- 育った主力が移籍し、再び作り直す場面が繰り返されている。 浅村、菊池、秋山、森、山川、今井。ほぼ毎年のように、どこかの軸が抜けてきた。
- 連覇した時代を知るほど、近年の順位低下が大きく見える。 2018・2019年を球場で見た人にとって、2024年の91敗は同じ球団とは思えない数字だった。
好きになる理由と、応援していてしんどいところ
無名だった選手が主力になる過程を、繰り返し見られる球団である。ドラフトのとき話題にならなかった投手が2年後にローテーションを回し、新人王を取る。源田壮亮のように長く守備の要であり続ける選手もいる。「発掘と成長」を応援の中心に置ける——これは、完成品を集める球団では味わえない楽しみだ。
その裏側が、別れの多さである。育つ喜びの先に、高い確率で移籍が待っている。浅村で経験し、森で経験し、山川で経験し、今井で経験した。「どうせまた出て行く」と斜に構えたくなる気持ちと、それでも次の若手を好きになってしまう気持ち。この往復こそが、いまの西武ファンの姿だと言っていい。