2017年に96敗。2019年・2020年と2年連続最下位。その翌年の2021年に日本一になり、2022年はリーグ連覇。そして2023年からまた下位に沈んだ。東京ヤクルトスワローズの10年は、「弱い球団」とも「強い球団」とも言い切れない。数年前の順位から今年を予想できない振れ幅の大きさ——それ自体が、この球団のいちばん正確な現在像である。

村上宗隆2022年8月・明治神宮野球場。ヤクルト時代
連覇の年、22歳で56本塁打・史上最年少の三冠王。2026年からはメジャーのホワイトソックスにいる。
Photo: TSUBAME98 / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
30秒で分かる球団
リーグ・本拠地
セ・リーグ/明治神宮野球場
セントラル・リーグの球団。都心の屋外球場が本拠地で、得点すると傘が開く応援で知られる
2016〜2025年
最下位と日本一の往復
2年連続最下位の翌年に日本一(2021年)、リーグ連覇(2022年)、そしてまた下位へ
現在の段階
作り直しの1年目
村上宗隆がメジャーへ移り、監督も交代した、作り直しの1年目
付いている印象
読めない球団
打線が動けば一気に上がり、故障者が出れば一気に落ちる。予想が当たらない
この10年の順位の波
| 年 | 順位 | 補足 |
|---|---|---|
| 2016 | 5位 | |
| 2017 | 6位 | 最下位。96敗はこの球団史上最多 |
| 2018 | 2位 | |
| 2019 | 6位 | 最下位 |
| 2020 | 6位 | 最下位 |
| 2021 | 1位 | リーグ優勝、20年ぶり6度目の日本一 |
| 2022 | 1位 | リーグ連覇。日本シリーズは敗退 |
| 2023 | 5位 | |
| 2024 | 5位 | |
| 2025 | 6位 | 最下位 |
NPB公式の年度別成績による。2025年シーズン終了までを扱う。
この表は、12球団でいちばん説明が難しい。96敗の翌年に2位。2年連続最下位の翌年に日本一。連覇の翌年に5位。上がるときも落ちるときも、段階を踏まない。
2021年の優勝は、外国人打者の当たり(オスナ・サンタナ)と村上宗隆・山田哲人の中軸がそろい、前年から得失点差が200点近く良くなるという急激な変化だった。そして2022年、村上が22歳で56本塁打——王貞治を超える日本選手最多——を最終打席で放ち、史上最年少の三冠王になる。あの2年間の神宮は、この球団の歴史でもいちばん明るい時間だったと言っていい。
その村上も、2026年からメジャーのホワイトソックスにいる(連載第3回)。
いま、この球団はどう見られているか
打線が動く年は、順位まで一気に動く。 2021年・2022年の強さは、打線の爆発と順位が直結する典型だった。ただし逆の年もある。2024年は「打線は活発なのに先発投手が足りない」と評されて最下位に沈んだ。打の球団と呼ばれがちだが、実際には打と投のどちらが欠けても大きく落ちる、余裕の小さい編成が続いてきた。
故障が、他球団より順位に響く。 連覇後の2023年は山田・塩見泰隆ら主力の離脱が続いて5位へ。2025年も村上の長期離脱をはじめ故障者が相次ぎ、最下位に終わった。「主力がそろえば強いが、そろっている期間が短い」——層の薄さと故障の多さをセットで指摘する論調は、複数の媒体で繰り返されている。
それでも、悲観一色にならない。 最下位からの日本一を実際にやった球団だからである。連覇の年に正遊撃手へ定着した長岡秀樹のように、次の中心候補も既に育っている。「また急に強くなるかもしれない」という期待は、この球団に限っては願望ではなく、過去に起きた実績である。

神宮の傘の応援2023年9月・明治神宮野球場
得点すると、スタンドで一斉に傘が開く。順位がどこでも、この光景は変わらない。
Photo: Nori Norisa / Wikimedia Commons / CC BY 2.0(リサイズ)
野球好きの中で共有されている3つの前提
- 打線が動く年は、順位まで一気に上がる。 2021年・2022年の連覇がその実例で、逆に打線が止まると一気に落ちる。中間の年が少ない。
- 主力の故障や投手陣の状態が、順位へ大きく出やすい。 2023年も2025年も、離脱者の多さと順位の低さが重なった。フルメンバーの期間の短さが、毎年の不安材料になっている。
- 優勝した翌年でも、数年後の順位は予想しにくい。 連覇の3年後に最下位。96敗の翌年に2位。この球団の予想は、専門家でも外し続けている。
好きになる理由と、応援していてしんどいところ
下位から一気に頂点へ届く瞬間に、立ち会えるかもしれない。2年連続最下位の翌年に日本一——他球団のファンが一生見ないかもしれない急上昇を、この球団は実際に見せた。神宮という都心の屋外球場で、得点のたびに傘が開く。球場の空気の良さと、たまに来る爆発的な当たり年。この組み合わせが、ヤクルトファンの続けている理由である。
しんどいのは、強い期間が長く続かないことだ。連覇を見た2年後には最下位を見ている。「今年は強い」と思っても、来年も強いという保証がどの球団より薄い。安心して見られる期間の短さ——それを引き受けた上で、次の急上昇を待つ応援である。