大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINK連載「日本酒の教養」第2回

十四代、新政、而今、飛露喜——人気銘柄は、どんな酒なのか——作と鍋島まで、6銘柄の背景と味を知る

日本酒好きの間で名前が挙がる6銘柄を、細かな商品一覧ではなく、蔵の背景と一杯の印象から知る回。

公開 2026.07.05最終確認 2026.08.22
この連載の目次(全8・完結
  1. 01獺祭45・久保田 千寿・特別本醸造 八海山・白鶴 まる——よく見る4本は、どう飲み分ける?
  2. 02十四代、新政、而今、飛露喜——人気銘柄は、どんな酒なのかいまここ
  3. 03冷酒、冷や、燗、一合——日本酒のメニューに並ぶ言葉
  4. 04獺祭45、久保田 千寿、特別本醸造 八海山、白鶴まる——ラベルの肩書きを読む
  5. 05久保田・八海山、白鶴・菊正宗、賀茂鶴——土地は酒のどこに残る?
  6. 06冷やす、常温、燗——温度が変わると、日本酒はどう変わる?
  7. 07しぼりたて、生酒、夏酒、ひやおろし——売り場の季節はどう変わる?
  8. 08最終回——好きだった一本から、次に飲む酒を探す

第1回で扱ったのは、獺祭45、久保田 千寿、特別本醸造 八海山、白鶴まる。酒売り場で見かけたとき、今夜どれを選ぶかを考えるための4商品だった。今回は少し場所を移し、日本酒専門店や日本酒好きの間で名前をよく聞く6銘柄を見る。十四代、新政、而今、飛露喜、作、鍋島。この6つの名前を、蔵の背景と一杯の味に結びつけていく。

一つの銘柄にも複数の商品があり、すべてが同じ味ではない。この回では、最初に名前を覚えるための中心的な印象を書く。

JUYONDAI

十四代——華やかな香りと、濃い甘み

十四代の一升瓶。白いラベルに「十四代」の墨文字と「槽垂れ」「本生・原酒」の表示

十四代 槽垂れ 本生原酒高木酒造(山形県村山市)

写真は十四代の商品の一つ。本文では銘柄全体の背景と中心的な味を扱っている

十四代を造るのは、山形県村山市の高木酒造。四百年続く蔵で、いまの代表銘柄がこの十四代である。

十四代が広く知られるようになったころ、日本酒では淡麗辛口が強く支持されていた。そこへ、華やかな香りと厚い甘みを持つ酒として現れ、「芳醇旨口」という別の魅力を印象づけた。香りと甘みが豊かで、一口の存在感を楽しむ酒——それがこの言葉の中身だ。

味の中心は、はっきりしている。フレッシュで華やかな果実の香りが立ち、口に入ると米の甘みが濃く広がる。それでいて、甘さが重く残りすぎない。濃さと、飲み終わりの軽さが同居している。

すっきりした辛口より、香りと甘みをはっきり楽しみたい人に合う。

ARAMASA

新政——酸から覚える銘柄

新政の四合瓶3本。白い和紙のラベルに亜麻猫・涅槃亀・陽乃鳥の文字と紋章

新政 Colorsシリーズ(亜麻猫・涅槃亀・陽乃鳥)新政酒造(秋田市)

写真は新政の商品の一部。本文では銘柄全体の背景と中心的な味を扱っている

秋田市の新政酒造は、現在も広く使われる協会6号酵母が見つかった蔵である。七代目は、その6号酵母と秋田県産米、伝統製法の生酛を軸に、昔からある材料と方法から現代的な味をつくった。

新政を覚えるなら、まずである。甘みより先に明るい酸が立ち、舌にわずかなガス感が残る。甘さは口の中に重く居座らず、すっと引いていく。昔ながらの日本酒らしい厚みより、白ワインや発泡性の酒に近い軽快さが印象に残る銘柄だ。

酸のある酒や、軽やかな飲み口が好きなら新政が合う。

JIKON

而今——甘みと酸が、一緒にふくらむ

而今の四合瓶。白いラベルに「而今」の墨文字とJIKONの欧字

而今 純米大吟醸 名張木屋正酒造(三重県名張市)

写真は而今の商品の一つ。本文では銘柄全体の背景と中心的な味を扱っている

三重県名張市の木屋正酒造は、江戸期から続く蔵だ。それを継いだ六代目が、自ら杜氏となり、蔵の新しい看板として立ち上げたのが而今である。

名前は禅の言葉から採られている。過去にも未来にも囚われず、今をただ精いっぱい生きる——蔵の家訓でもあるこの一語が、そのまま銘柄名になった。

味は、香りだけが華やかなのではない。口の中で甘みと酸、米の旨みが一緒にふくらむ。果汁を思わせる密度があり、後口は輪郭を保ったままきれいに切れる

果汁感のある日本酒が好きなら、而今が合う。

HIROKI

飛露喜——旨みがあって、最後は切れる

飛露喜の一升瓶。生成りのラベルに「特別純米」「飛露喜」の文字

飛露喜 特別純米廣木酒造本店(福島県会津坂下町)

写真は飛露喜の商品の一つ。本文では銘柄全体の背景と中心的な味を扱っている

福島県会津坂下町の廣木酒造本店。蔵の継承期に九代目が醸した無濾過の生原酒から、飛露喜の名は広がった。

飛露喜は、軽さよりも米の旨みを先に感じる酒だ。芯に旨みと酸があり、飲んだあとの満足感もある。それでいて最後はきれいな酸が輪郭を整え、重さを引きずらずに切れていく。香りは穏やかで、派手に立つ方向ではない。

濃い旨みと、すっと終わる後味。この二つが同居しているところが、飛露喜を覚えるときの手がかりになる。米の旨みは欲しいが、重さを後まで残したくない人に合う。

ZAKU

作——透明感と、滑らかさ

「作」と書いてざくと読む。造るのは三重県鈴鹿市で長く酒を醸してきた清水清三郎商店で、蔵は酒造りの要として水を掲げている。銘柄名には、作り手だけでなく、飲む人とともに酒を作り上げていくという意味が込められている。

蔵が全商品に共通して掲げるのは、柔らかな味わいとキレの良さ、そしてクリアで洗練された透明感だ。

作は、柔らかな口当たりと透明感で覚えたい。メロンやライチを思わせる果実の香りが穏やかに立ち、米の旨みと酸がバランスよく続く。飲み口は滑らかで、後味はきれいに切れる。

華やかな酒は好きだが、十四代や鍋島のような厚い甘旨さよりも、すっきりと上品な方向を選びたい人に合う。

NABESHIMA

鍋島——弾けるような甘旨さ

鍋島の一升瓶3本と絵付けの盃。ラベルに「鍋島」の墨文字と特別純米酒・純米吟醸の表示

鍋島(Classic さがの華・特別純米酒・純米吟醸)富久千代酒造(佐賀県鹿島市)

写真は鍋島の商品の一部。本文では銘柄全体の背景と中心的な味を扱っている

佐賀県鹿島市の富久千代酒造が造る鍋島は、地元の蔵と酒販店が、佐賀を代表する酒を目指して立ち上げた銘柄だ。名前は公募で決まり、佐賀藩主の名から採られている。

蔵が目指す姿は、単に香りが高いのでも辛いのでもなく、やさしく五感を刺激して馴染んでいく「自然体」の酒だという。

口に入ると、まず軽いガス感とフレッシュさがある。そのあとから甘みと米の旨みが大きく広がり、柑橘を思わせる華やかさと、密度のある滑らかさが続く。透明で細い酒というより、一口のボリュームを楽しむ酒だ。

華やかさと飲みごたえを両方ほしい人に合う。

NAMES & TASTE

銘柄名から、一杯を思い出す

十四代と鍋島は、どちらも甘旨さが前へ出る。ただし、十四代は濃く滑らかで、鍋島はフレッシュで勢いがある。新政は、而今は瑞々しい甘酸っぱさ、飛露喜は米の旨みと切れ、作は透明感が印象に残る。

銘柄名とこの一杯の方向が結びつけば、酒屋やメニューで名前を見たときに味を想像しやすくなる。

同じ銘柄の中で商品がどう違うのかは、記事末尾の日本酒図鑑で一銘柄ずつ扱う。蔵と銘柄の背景、商品ごとの味の違い、ラベルの見分け方、温度や料理まで、そこで詳しく読める。

次回

銘柄の名前が分かると、店のメニューの見え方が変わる。第3回では、日本酒のメニューに並ぶ「冷酒」「冷や」「一合」「辛口」といった言葉の意味を、順に見ていく。