而今は、手に入りにくい酒という話から入ると、味にたどり着かないまま終わる。蔵が公式に書いているのは三つだ。2005年、6代目が自ら杜氏として醸した酒に「而今」と名付けたこと。伊賀産山田錦を中心に、毎月違う酒米の商品を出していること。そして同じ米でも「生」と「火入れ」を別の商品として並べ、出荷月まで分けていること。この三つを先に置くと、一本ごとの違いが見えてくる。

30秒で分かる味
而今は甘口か辛口か。蔵はどちらの言葉も使っていない。公式が味に触れているのは純米大吟醸特上雄町の一本だけで、そこには「深い味わいと滑らかな口当たり」とある。銘柄全体を甘辛で決めるより、商品ごとの米と、生か火入れかで見るほうが実際に近い。
綺麗に立つ
香り
正規取扱店は特別純米 生を「綺麗で爽やかな香りが立ち上がる」と書く。香りで押してくる酒ではない
商品ごとに違う
甘辛
蔵は甘口・辛口を書かない。数値が確認できるのは純米吟醸 雄町 火入れの日本酒度−3・酸度1.7だけ
滑らか
口当たり
公式が味に触れる唯一の商品、純米大吟醸特上雄町の言葉が「深い味わいと滑らかな口当たり」
瑞々しさが残る
後味
正規取扱店は特別純米 生を「瑞々しい果実味が長く美しく浮かび上がる」と書く
別の商品
生と火入れ
公式は同じ米でも生と火入れを別々に並べ、出荷月も分けている。同じ名前でも中身が違う
銘柄の中の地図——特別純米、雄町、名張
| 位置 | 商品 | 味の見どころ | 720ml・税込(確認した正規取扱店) |
|---|---|---|---|
| 入口 | 而今 特別純米 生 | 綺麗で爽やかな香りと、長く残る瑞々しい果実味。12月以降の出荷 | 2,090円 |
| 中核 | 而今 純米吟醸 雄町 火入れ | 瑞々しい酸味と丸い果実の広がり。日本酒度−3・酸度1.7 | 2,530円 |
| 上位 | 而今 純米大吟醸 名張 火入 | 名張市産の山田錦を40%まで磨いた一本。6月の出荷 | 6,600円 |
2026年7月27日確認。蔵元公式サイトには価格表がなく、現行の公式サイトには取扱店一覧も置かれていない。ここに載せた金額は、確認できた正規取扱店の税込表示価格であり、蔵元が統一して定めた希望小売価格だとは断定しない。二次流通で付く価格ではない。
商品名は公式の表記を使った。「純米大吟醸 名張 火入」は、酒販店では「NABARI」と表記されることもある。なお、公式ラインナップには特別純米 火入れもあるが、720mlの価格について確認条件をそろえられないため、この表には載せていない。
値段の並びは、使う米と磨きと出荷時期の違いである。上に行くほど良い、という階段ではない。
どんな店で飲むと分かりやすいか
蔵は店の業態も料理の相性も書いていない。以下は蔵元の公式な推奨ではなく、記事の目的に合わせた店選びの提案である。
分かりやすいのは、同じ米の生と火入れを両方置ける店だ。而今は同じ「雄町」でも生と火入れが別商品で、出荷月も違う。二つを並べて飲めると、この銘柄の組み立てが一度で分かる。
もう一つの目安は、商品名と出荷時期、生か火入れかを説明できる店である。毎月違う商品が出るため、「今ある而今が何なのか」を答えられる店なら、それだけで頼みやすい。
蔵は小売販売をしておらず、店によっては店頭抽選や対面販売で扱っている。これは流通の方法であって、酒の格の話ではない。買えなかった日に、味の評価が変わるわけでもない。
日本酒好きの中で共有されている3つの前提
- 而今は蔵の全部の名前ではない。 公式サイトには「高砂」も並ぶ。文政元年の創業以来の代表銘柄で、創業200周年の2018年に生酛造りで復活させたと蔵が書いている。
- 公式には「2005年に命名」とある。 「2005年、6代目が自ら杜氏として醸したお酒を『而今』と命名」。発売年としてではなく、名付けた年として書かれている。
- 蔵は小売をせず、公式に価格表もない。 蔵は「酒造りに専念させて頂きたく、小売販売、酒蔵見学、試飲などの店頭業務は行っておりません」と書く。店の表示価格と、二次流通で付く価格は、別のものとして見る。
最初の一本
初めてなら、而今 特別純米 生を選ぶ。
720mlで2,090円は、確認した正規取扱店の税込表示。今回並べた3本では最も手を伸ばしやすい。
ただし12月以降に出荷される季節商品で、いつでも買える定番ではない。店になければ追い回す必要はない。次の出荷か、別の機会でよい。
飲むときは、立ち上がる香りの綺麗さと、飲み込んだあとに長く残る瑞々しい果実味を見る。手に入りにくさではなく、この入口の味で判断する。