大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINK連載「日本酒の教養」第3回

冷酒、冷や、燗、一合——日本酒のメニューに並ぶ言葉——温度、量、名前、辛口。飲む前に目にする言葉の意味

店で日本酒を頼むときに目に入る言葉の意味を知る回。温度、量、名前、味の表現——それぞれが何を指しているかが分かると、メニューは選ぶための情報になる。

公開 2026.07.20最終確認 2026.08.22
この連載の目次(全8・完結
  1. 01獺祭45・久保田 千寿・特別本醸造 八海山・白鶴 まる——よく見る4本は、どう飲み分ける?
  2. 02十四代、新政、而今、飛露喜——人気銘柄は、どんな酒なのか
  3. 03冷酒、冷や、燗、一合——日本酒のメニューに並ぶ言葉いまここ
  4. 04獺祭45、久保田 千寿、特別本醸造 八海山、白鶴まる——ラベルの肩書きを読む
  5. 05久保田・八海山、白鶴・菊正宗、賀茂鶴——土地は酒のどこに残る?
  6. 06冷やす、常温、燗——温度が変わると、日本酒はどう変わる?
  7. 07しぼりたて、生酒、夏酒、ひやおろし——売り場の季節はどう変わる?
  8. 08最終回——好きだった一本から、次に飲む酒を探す

日本酒のメニューには、酒の名前のほかにも「冷酒」「冷や」「燗」「一合」「半合」「辛口」といった言葉が並ぶ。どれも特別に難しい用語ではないが、意味をまとめて教わる機会は少ない。この回では、店で実際に目にする言葉を順に見ていく。

飲食店の棚に並ぶ日本酒の一升瓶6本。各瓶のラベルに銘柄名
飲食店の棚に並ぶ一升瓶(2011年撮影)Photo: koutalou / Wikimedia Commons / CC BY 2.0縮小・WebP変換
HOT & COLD

冷酒、冷や、燗——温度の言葉

まず温度から。冷酒は冷やして出す酒、は温めた酒。ここまでは字のとおりだ。

紛らわしいのは「冷や」で、日本酒の温度表現では常温を指す。冷蔵庫が普及する前、酒の飲み方は温めるか、温めずそのまま飲むかの二つだった。温めない方が「冷や」——その言葉がいまも残っているため、「冷や」は冷たい酒ではなく常温の酒を指す。冷やした酒がほしいときは「冷酒」。

燗の中にも、ぬるめに付けるぬる燗、熱めの熱燗という言い分けがある。メニューを読むにはこの程度で足りる——温度の細かい名前と、商品ごとの適温の話は、第6回でまとめて扱う。

GO

一合、半合——量の言葉

一合は180ml、半合はその半分の90ml。小さなお猪口なら、一合は何回かに分けて飲む量になる。複数の酒を少しずつ比べたいときは半合、一つの酒をゆっくり飲むなら一合という違いがある。

ついでに、一升瓶の一升は一合の10倍で1,800ml。瓶の大きさと器の言葉が、同じ物差しの上に並んでいる。

NAME

銘柄名と商品名——名前の言葉

メニューの日本酒の行は、名前が長いことが多い。長いのは、複数の情報が積み重なっているからだ。

たとえば「久保田 千寿」。「久保田」が銘柄名(ブランドの名前)、「千寿」が商品名で、同じ久保田には「萬寿」という別の商品もある。「獺祭」も同じで、純米大吟醸45、磨き三割九分、磨き二割三分——銘柄の下に、造りの違う商品が並ぶ。メニューの一行が長いときは、蔵や銘柄の名前、商品の名前、そして「純米大吟醸」のような肩書きが順に連なっている。

だから、読み方は区切ることに尽きる。銘柄はどれか、商品はどれか。この区切りが見えれば、長い名前は情報の列になる。銘柄の中に商品がどう広がっているかは、第2回で見たとおりだ。

DRY

辛口——味の言葉

メニューや瓶でよく見る味の言葉に「辛口」がある。唐辛子のような刺激の辛さを示す語ではない。日本酒の辛口は、甘みが後に残りにくく、後味が切れる方向を表すときに使われる。

この甘辛の目安として使われる数値が日本酒度である。酒の比重を水と比べた数値で、糖分などが多い酒は水より重くなってマイナスに、少ない酒は軽くなってプラスに振れる。マイナス寄りは甘口傾向、プラス寄りは辛口傾向という読み方だ。第1回の久保田 千寿の公式ページには「+5.0」とある——プラス側で、辛口寄りの傾向を見る一つの目安になる。

ただし、飲んだ印象は日本酒度だけでは決まらない。酸味が立てば締まって感じるし、香りや温度でも印象は変わる。日本酒度は、甘辛の傾向を見る材料の一つ——メニューに数字があれば参考にし、なければ「辛口」の一語を「後味が切れる方向」と読み替えれば十分だ。

ON THE MENU

分けて見れば、読める

日本酒のメニューは、銘柄、商品名、温度、量を分けて見ればよい。「冷や」と「冷酒」の違い、一合の量、辛口の意味が分かるだけで、メニューは読めない言葉の列ではなくなる。

残っているのは、名前の後ろに付く「純米」「吟醸」「本醸造」といった肩書きだ。これは次の回で、第1回の4本のラベルに沿って読む。

次回

「純米大吟醸」「吟醸」「特別本醸造」——そして何も書かれていない瓶。第4回では、第1回の4本のラベルを並べ直して、肩書きの言葉が何を示しているのかを読む。