田酒を甘口か辛口かだけで整理しようとすると、蔵の説明から外れる。名前の由来を説明する文で、蔵が使っているのは「米の旨みが生きる旨口の純米酒」という言葉だ。田んぼから採れないもの、つまり醸造用アルコールと糖類を使わないと宣言するために付けた名前で、米の旨みを残す方向に振ってある。辛口という言葉だけで入ると、この酒の向きを取り違える。

30秒で分かる味
田酒は甘口か辛口か。公式に掲載される田酒7商品は、日本酒度がすべて±0で並んでいる。公式に掲載されていない商品まで含めた「全商品」の断定はせず、確認できる範囲では甘辛の中央に置かれている、と見る。
旨口
方向
蔵の言葉は「米の旨みが生きる旨口の純米酒」。辛口とは書いていない
中央
甘辛
公式に掲載される田酒7商品は日本酒度がすべて±0。未掲載商品まで含む全商品の断定はしない
米から出る
旨み
醸造用アルコールと糖類を使わず、米由来の旨みを前に出す
飲み飽きない
後味
定番の一本を蔵は「旨口ながらコクがあり、飲み飽きしないすっきりした味」と書く
食事と並べる
組み立て
一杯で完結させるより、料理と行き来しながら飲むと輪郭が出る
銘柄の中の地図——特別純米、百四拾、純米大吟醸
| 位置 | 商品 | 味の見どころ | 720ml・税込 |
|---|---|---|---|
| 入口 | 田酒 特別純米酒 | 旨口ながらコクがあり、飲み飽きしないすっきりした味。通年商品 | 1,738円 |
| 中核 | 田酒 純米大吟醸 百四拾 | 青森県産の華想いを使い、円やかなふくらみと華やかな吟醸香。春の限定出荷 | 4,400円 |
| 上位 | 田酒 純米大吟醸 | 山田錦を40%まで磨いた一本。10月のみの限定出荷 | 5,500円 |
価格は西田酒造店の公式商品情報に載る720mlの値。2026年7月27日確認。公式ページは見出しが「小売価格(税別)」となっているが、値には「税込み」と併記されており、表記に矛盾がある。正規取扱店が同じ商品を「税込1,738円/本体1,580円」と分けて表示しているため、ここでは税込として扱った。
3本のうち通年商品とされているのは特別純米酒で、百四拾は春、純米大吟醸は10月の限定出荷である。値段が上がるほど良い、という並びではなく、使う米と磨きと出荷時期が違う、と考えるほうが近い。今回の3本はいずれも日本酒度±0で、価格が上がっても甘辛は動かない。
どんな店で飲むと分かりやすいか
田酒は、特別純米酒を置いている店なら十分に分かる。蔵は店の業態も料理の相性も書いていない。以下は蔵元の公式な推奨ではなく、記事の目的に合わせた店選びの提案である。
まず特別純米酒を頼み、料理と一緒に飲む。刺身でも煮物でもよい。見るのは、飲み込んだあとに口の中が重く残るかどうかである。旨みは出るのに次の一口へ戻れる、という感じがつかめれば、蔵の言う「飲み飽きしない」が体で分かる。
温度については、蔵が推奨を出していない。冷やして一杯飲んだあと、少し置いて温度が上がったところをもう一口飲むと、同じ酒でも旨みの出方が変わる。この差を見るだけでも十分である。
日本酒好きの中で共有されている3つの前提
- 田酒は名前が宣言になっている。 「田」は米が採れる田んぼのことで、田んぼから採れない醸造用アルコールと糖類を使わない、という主張を込めた名前だと蔵が書いている。発売は1974年10月1日。
- 同じ蔵の喜久泉は別の銘柄である。 蔵は喜久泉を「醸造用アルコールを必要最低限添加した大吟醸、吟醸、本醸造」と説明している。田酒と混ぜて語ると、蔵の設計を取り違える。
- 「百四拾」は精米歩合ではない。 百四拾の精米歩合は40%である。この名前は、華想いという米が命名される前の県試験場での系統名「青系酒140号」から来ていると蔵が書いている。
最初の一本
初めてなら、田酒 特別純米酒を選ぶ。
720mlで1,738円と、今回並べた3本では最も手を伸ばしやすい。公式の商品情報で通年商品とされているのは、この3本の中では特別純米酒だけである。
冷やした状態で一杯、料理と一緒に飲む。最初の一口の強さではなく、料理を食べたあとにもう一度飲めるかを見る。そこで「まだ飲める」と思えたら、蔵が言う旨口と飲み飽きしなさが分かったことになる。