この連載の目次(全7回・完結)
- 01腕時計は、時間を見るためだけの道具ではない
- 02有名ブランドは、どんな人が着けるのかいまここ
- 03ロレックスもセイコーも、一つの顔ではない
- 04四角い時計、ダイバーズ、クロノグラフ
- 05正確さ、手間、機械を持つ楽しさ
- 06高い時計は、正確だから高いわけではない
- 07最初の一本は、仕様表ではなく「どう見られたいか」から選ぶ
ロレックス、オメガ、カルティエ、セイコー。名前を聞いたことはあっても、「それを着けているのはどんな人か」と聞かれると答えにくい。ここでは9つのブランドを、年代・服装・求めるものの三つから並べる。
G-SHOCK——傷を気にしない場面で使う
30代から40代の、外で体を動かす仕事や道具を扱う仕事の人に多い。若い頃にストリートの音楽やスケートから入って、いまも一本持っている人もいる。
作業着や普段着に載る。四角い樹脂の型はデニムやパーカーに合い、金属の外装を持つ型なら仕事着にも収まる。
求めているのは、傷や水を気にせず使えることだ。落として壊れない時計を作る、という一点から始まったブランドで、いまも前提はそこにある。代表的なのは、最初の一本の形をほぼそのまま引き継いだ5600系。→ G-SHOCK の図鑑ページ
シチズン——手間をかけたくない人の実用品
年代の幅は広く、働いている人全般に散らばる。時計に手間をかけたくない、という一点で選ばれている。
スーツに合う型も、作業着に合う型もある。チタンの外装は金属らしい見た目のまま、持ち上げると拍子抜けするほど軽い。
光で充電する仕組みを主軸に据えたブランドで、電池交換の回数を減らせる。代表的なのは、チタンの外装に光での充電を組み合わせたアテッサ。→ CITIZEN の図鑑ページ
セイコー——最初の一本にも、趣味の入口にもなる
若い社会人から、時計を趣味にしている人まで。年代で区切りにくいブランドである。
スーツに合う三針もあれば、私服に合わせる潜水用の型もある。手頃な型と上位の型が同じ名前で並んでいるので、求めるものも人によって分かれる。手頃な値段できちんと見えることを求める人もいれば、機械式の入口として選ぶ人もいる。
代表的なのは、手頃な価格から選べる機械式のセイコー5と、潜水用のプロスペックス。→ SEIKO の図鑑ページ

セイコー プロスペックス
Photo: Wikimedia Commons — Seiko Prospex SPB143J1.png / CC BY-SA 4.0(潜水を想定した系統。厚みがあり、外周に回転する縁が付く。着用者の顔は写っていない。)
ロレックス、オメガ、カルティエ——高級時計の三つの入口
ここから先は値段が上がる。ただし三つとも、求めているものが違う。
ロレックスは、年代の幅が広い。仕事で人と会う場面を持ち、スーツやジャケットに合わせる人が多い。求めているのは、知名度や長く続く信頼を手がかりに選べる確かさである。高級時計と聞いて最初に浮かぶ名前で、長く使えて、修理の体制もある。代表的なのは、日付の付いた三針のデイトジャスト。→ Rolex の図鑑ページ
オメガは、20代から30代が就職や結婚の節目に買うことが多く、上の年代にも広がっている。スーツにも私服にも合わせられる。求めているのは背景のある時計で、月へ行った系統、競技を計ってきた系統、映画に出た系統がそろっている。値段だけでなく、そこに関心を持つ人が選んでいる。代表的なのは、月へ行ったスピードマスター。→ OMEGA の図鑑ページ
カルティエは、30代から50代の、服のほうに関心がある人に多い。アパレルやデザインの仕事をしている人も目立つ。求めているのは装いと釣り合う形で、四角い枠、小さな文字盤、袖の下へ入る薄さがそれにあたる。機械の話を通らずに選べる高級時計として、この位置にいるブランドは多くない。代表的なのは、縦に伸びた長方形のタンク。→ Cartier の図鑑ページ
グランドセイコー——腕元を静かにしたい人へ
30代後半から50代、仕事でジャケットを着る層が中心だ。
スーツにも、休日のシャツにも合わせられる。装飾がないので、服の側が主役のままでいられる。求めているのは、近くで見たときに分かる文字盤や外装の仕上げである。腕に載せても値段が伝わらない意匠で、そこを損だと考えない人が選んでいる。
代表的なのは、白い文字盤に細かな凹凸を付けたスノーフレーク。→ Grand Seiko の図鑑ページ

グランドセイコー SBGW231
Photo: Wikimedia Commons — Grand Seiko.JPG / CC BY-SA 4.0(装飾を抑えた三針。)
タグ・ホイヤー——腕元に動きを出したい人へ
20代から40代が中心で、最初の高級時計として選ぶ人も多い。
スーツにも私服にも寄せられて、きちんとしすぎない方向へ持っていける。求めているのはスポーティーな見た目だ。レースの計測から来たブランドで、文字盤に小さな円が並ぶ型が中心にあり、腕元が静かになりすぎない。
代表的なのは、レースの名を冠したカレラ。→ TAG Heuer の図鑑ページ
Apple Watch——時刻以外を腕へ集める
仕事を持つ30代から40代が中心で、腕時計を持ったことがない若い層にも広がっている。
仕事着に合わせる人もいれば、休日だけにする人もいる。バンドを替えて印象を変える人も多い。求めているのは時刻以外の機能で、通知、決済、運動や睡眠の記録がそれにあたる。時計を作ってきた会社の製品ではなく、スマートフォンでやっていることの一部を腕へ移すために作られている。
値段の順に並べても、選べない
ここまで9つを見てきたが、並び順は値段ではない。
選ぶときに効いてくるのは、自分の生活と求めるもののほうだ。傷を気にしないで済むことか、手間の少なさか、装いとの釣り合いか、背景の面白さか、腕元の静かさか。そこが決まれば、候補は絞れる。
ただし、これで選び終わりではない。同じブランドの中でも、モデルが変われば腕元の印象が変わる。次回はそこを見ていく。
次回
ロレックスもセイコーも、一つの顔ではない。第3回では、同じブランドの中でモデルが変わると、印象がどう変わるのかを扱う。