大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

WATCH連載「時計の教養」第3回

ロレックスもセイコーも、一つの顔ではない——モデルが変われば、腕元の印象も変わる

同じブランドの中で、モデルが変わると腕元の見え方がどう変わるのか。ロレックス、カルティエ、セイコー、G-SHOCK、オメガの五つで、その振れ幅を見る。

公開 2026.09.02最終確認 2026.09.02
この連載の目次(全7・完結
  1. 01腕時計は、時間を見るためだけの道具ではない
  2. 02有名ブランドは、どんな人が着けるのか
  3. 03ロレックスもセイコーも、一つの顔ではないいまここ
  4. 04四角い時計、ダイバーズ、クロノグラフ
  5. 05正確さ、手間、機械を持つ楽しさ
  6. 06高い時計は、正確だから高いわけではない
  7. 07最初の一本は、仕様表ではなく「どう見られたいか」から選ぶ

「ロレックスを着けている人」という言い方は、実はあまり役に立たない。同じブランドの中で、モデルが変われば腕元の印象が変わるからだ。ここでは五つのブランドを取り上げて、その振れ幅を見る。

NAMES

まず、ブランド名とモデル名を分ける

時計の話でつまずきやすいのが、名前の階層である。

ロレックスはブランドの名前だ。デイトナはその中のモデルの名前で、単体では出てこない。カルティエとタンク、オメガとスピードマスター、セイコーとプロスペックスも同じ関係にある。

これを混ぜると話が噛み合わなくなる。「ロレックスとデイトナで迷っている」は、「トヨタとカローラで迷っている」と同じ形の文になってしまう。

そして厄介なことに、同じブランドの中でモデルが違うと、腕元の見え方がはっきり変わる。ブランド名だけでは足りない理由が、ここにある。

ROLEX

ロレックス——三つの型で、腕元が変わる

デイトジャストは、日付の付いた三針だ。文字盤の上に載っているのは、針と目盛りと小さな日付窓だけ。縁に細かい溝が刻まれた型もあるが、腕元は落ち着いた側に寄る。スーツにも私服にも合う。

サブマリーナーは潜水用として作られた型で、外周に目盛りの刻まれた回転する縁が付く。黒い文字盤に太い針と丸い目盛り。厚みがあり、腕元に存在感が出る。私服に合わせやすい。

デイトナはレースの計測を想定したクロノグラフで、文字盤の中に小さな円が三つ並ぶ。線と数字が詰まっているぶん、三つの中では腕元がいちばん賑やかになる。

同じブランドの中で、静かな三針から、円が並ぶ賑やかな文字盤まである。どれを選ぶかで、同じ服でも印象が変わる。

黒い放射状の文字盤、細かい溝の刻まれた縁、コマの細かいブレスレットを持つロレックス デイトジャストを木のテーブルの上で撮影したもの

ロレックス デイトジャスト36ロレックス2021年撮影個人蔵

Photo: Wikimedia Commons — Rolex Datejust 126234.jpg / CC BY 2.0日付の付いた三針。文字盤に載っているものが少なく、腕元は落ち着いた側になる。

BEZEL

外周の表示が増えるほど、道具らしく見える

ロレックスの中でも、外周に何が付いているかでモデルが分かれる。

サブマリーナーは潜水用の回転する縁を持つ。GMTマスターは、二つ目の時刻を読むための数字と針を持つ。

外周の表示が増えるほど、道具らしい見た目になる。同じブランドでも、腕元の顔はここで変わる。

60分の目盛りが刻まれた回転する縁を持つ潜水用の時計と、24時間の目盛りと赤い針を持つ時計が並んで置かれている

サブマリーナーとGMTマスターIIロレックス撮影年不詳個人蔵

Photo: Wikimedia Commons — Rolex Submariner and GMT Master II.jpg / CC BY-SA 4.0外周の縁に付く目盛りが違う。前者は経過時間、後者は二つ目の時刻を読むためのもの。

CARTIER

カルティエ——タンクとサントス

タンクは、縦に伸びた長方形の枠が、そのままベルトへ続く形だ。1910年代に生まれ、以来この構成が続いている。厚みが抑えられていて、袖の下へ入る。文字盤にローマ数字が並ぶ型が定番で、腕元は静かにまとまる。

サントスは角の丸い四角形で、外装にビスが露出している。飛行機を操縦しながら時刻を読むために作られた形が出発点にある。タンクより厚みがあり、金属のブレスレットを持つ型も多い。同じ四角でも、こちらは道具寄りに見える。

どちらも、機械の話を通らずに選べる。決め手になるのは形と、それが服と釣り合うかどうかである。

縦に伸びた長方形の二本の枠がそのままベルトへ続く形の腕時計が二本。竜頭に丸い石が付いている

カルティエ タンク マストカルティエ2021年個人蔵

Photo: Wikimedia Commons — Cartier Tank Must, 2021.jpg / CC BY-SA 4.0文字盤に数字のない仕様。枠とベルトが一続きに見えるのが、この形の特徴。

SEIKO

セイコー——系統ごとに、置かれる棚が違う

セイコーでは、モデルどころか系統ごとに性格が変わる。

セイコー5は、手頃な価格から選べる機械式の系統だ。最初の機械式として選ばれることが多い。日付と曜日の窓が付いた型が多い。

プロスペックスは潜水や登山を想定した系統で、厚みがあり、回転する縁が付く。文字盤は読みやすさに振ってあり、私服に合わせられることが多い。

プレザージュは文字盤に伝統的な意匠を取り入れた系統だ。仕上げに手をかけた面を持ち、機械式でありながら落ち着いた見た目に寄せてある。仕事着に合わせやすい。

この三つを並べると、同じブランドの棚だとは思えない。手頃な型と上位の型が同じ名前で並ぶ、というセイコーの性格が、そのまま系統の散らばりに出ている。

TWO PAIRS

G-SHOCKとオメガ——同じ前提で、違う顔

G-SHOCKの場合、モデルが変わっても前提は変わらない。壊れないことである。変わるのは見た目のほうだ。

四角い樹脂の型は、このブランドの原型で、薄く軽い。大きな文字盤のアナログは、腕の上での存在感が大きい。金属で覆った型には、落ち着いた見た目のものもある。同じ丈夫さを、三通りの見た目で選べるようになっている。

オメガでは、系統ごとに意匠が分かれる。スピードマスターは文字盤に小さな円が三つ並び、外周に細かい目盛りが走る。シーマスターは潜水用の系統で、回転する縁を持つ型と、装飾を抑えた三針の型がある。三針の型は、スーツに合わせられることもある。

腕元の情報量でいえば、スピードマスターのほうが多い。同じブランドの中で、賑やかな側と静かな側の両方が用意されている。

四角い黒の樹脂ケースにデジタル表示を持ち、面から引っ込んだボタンが付いたG-SHOCK

G-SHOCK GW-M5610Uカシオ撮影年不詳個人蔵

Photo: Wikimedia Commons — CASIO G-Shock GW-M5610U.jpg / CC BY-SA 4.01983年の最初の一本から形をほぼ引き継いだ系統。

TAKEAWAY

ブランド名だけでは、まだ決まらない

ここまでを一つにまとめると、こうなる。

ブランドは、腕元の印象を一つに決めない。同じロレックスでも、地味な三針と大きなクロノグラフでは、腕の上の見え方が違う。同じカルティエでも、薄い長方形とビスの見える四角では、道具寄りかどうかが変わる。

だから「どのブランドにするか」を先に決めても、選び終わらない。次に必要なのは、形を見ることだ。丸いのか、四角いのか、縁が回るのか、液晶なのか。次回はそこを扱う。

次回

四角い時計、ダイバーズ、クロノグラフ。第4回では、形が変わると腕元の見え方がどう変わるのかを見ていく。