この連載の目次(全8回・完結)
- 01時計の話で迷子にならないために、まず5つの名前だけいまここ
- 02時計は、値段より「どう使いたいか」で選ぶ無料会員
- 03機械式とクォーツは、優劣ではなく仕組みが違う読み放題
- 04ダイバーズ、クロノグラフ、GMTは、用途から形が生まれた読み放題
- 05定番モデルは、形の由来が分かると見分けられる読み放題
- 06時計は、ケース径だけでなく腕に載せて決める読み放題
- 07高い時計の値段は、機構・仕上げ・素材・流通に分けて考える読み放題
- 08時計の話は、値段より「なぜそれを選んだか」読み放題
G-SHOCKは知っている。ロレックスも知っている。カルティエやセイコーも聞いたことがある。ところが「デイトナはどうです?」と言われると、それが別のブランドなのか、ロレックスの一種なのか分からない。時計の話が難しいのは、知識が足りないからではない。会社、ブランド、モデルの名前が同じ列に並んで見えるからだ。最初に必要なのは部品名でも型番でもない。まず5つの名前が何者かを知る。
- 相手:時計、何か好きなブランドあります?
- 自分:ロレックスは知っています
- 相手:デイトナはどうです?
- 自分:それは、別のブランドですか?
この一往復で止まる人は多い。デイトナを知らないことが問題ではない。名前の種類を教わる前に、人気、価格、機械の話が始まってしまうことが問題なのだ。
5つのうち、デイトナだけはブランドではない
ブランド|カシオ
G-SHOCK
ぶつけることを気にせず使える、丈夫さから生まれた時計
選ばれる理由: 丈夫、実用、気軽
ブランド|宝飾メゾン
カルティエ
機械より先に、形や服との収まりから見ても楽しめる時計
代表的な名前: タンク、サントス
ブランド|日本
セイコー
普段使いから専門用途まで、選択肢の広さを持つ時計
選ばれる理由: 実用、幅広さ、身近さ
ブランド|スイス
ロレックス
丈夫さと認知度を持ち、長く使う一本として選ばれる時計
代表的な名前: オイスター パーペチュアル、デイトジャスト
モデル|ロレックス
デイトナ
モータースポーツのために生まれ、象徴的な存在になった時計
正式名: コスモグラフ デイトナ
順位表ではない。まず名前の種類と、一言のイメージだけをつかむ。5つすべてを好きになる必要はない。
ここで一番大事なのは、デイトナだけ種類が違うことだ。
G-SHOCK、カルティエ、セイコー、ロレックスは、それぞれ多くの時計を持つブランドである。デイトナはロレックスが作る一つのモデルだ。カルティエの「タンク」、ロレックスの「デイトナ」のように、ブランドの中にモデル名がある。
時計の会話では、ブランド名とモデル名が説明なしに混ざる。最初から全部を見分ける必要はない。「それはブランドですか、モデルですか」と頭の中で一度分けるだけで、名前の渋滞がほどける。
ブランドは大きな棚、モデルは棚の中の一つ
ブランドは、一つの時計の名前ではない。形、用途、価格、機構の違う時計を複数持つ大きな棚である。
G-SHOCKにも、四角いデジタル表示、丸いアナログ表示、樹脂、金属など多くの種類がある。セイコーにも、日常用、スポーツ用、機械式、クォーツなど幅がある。ロレックスにも、オイスター パーペチュアル、デイトジャスト、サブマリーナー、デイトナなど、役割と形の違うモデルがある。
だから、「G-SHOCKは全部こう」「ロレックスをつける人は全員こう」とは言えない。
この回では、一つのブランドを一つの性格へ閉じ込めない。その名前が最初に何を連想させるかを、入口として使う。
G-SHOCK——気を使わず使えることが、個性になった
G-SHOCKは、カシオの時計ブランドである。
出発点は「落としても壊れない時計を作る」という課題だった。開発チームは耐衝撃構造を作り、1983年に最初のG-SHOCKを発売した。その後、デジタルだけでなく、針を持つもの、金属を使うもの、センサーを備えるものへ広がった。
初心者が最初に覚えるべき型番はない。
覚えるなら、丈夫さを隠さず、見た目にもした時計という一言でよい。厚い外装、大きなボタン、情報量のある表示は、飾りだけではなく、衝撃や操作を考えた形から育っている。
どんな人に選ばれやすいか。
- ぶつけることを気にせず使いたい
- 雨、外仕事、運動、旅行へそのまま持ち出したい
- 高級感より、頼れる道具らしさが好き
- 服の中で、少し大きな形をアクセントにしたい
G-SHOCKを「安いデジタル時計」とだけ見ると、丈夫さを形へ変えてきた面白さが消える。反対に、すべてが同じ大きさ、同じ表示でもない。
カルティエ——時間を測る道具を、形から好きになれる
カルティエは、宝飾と時計を手がけるメゾンである。
時計好きがカルティエを語るとき、機械の性能だけではなく、ケースの線、文字盤、針、ベルトまで一続きの形として見ることが多い。
代表的な「タンク」は1917年に生まれた。左右の平行な縦枠が文字盤からベルトへ線をつなぎ、丸い時計とは違う、四角い輪郭を作る。「サントス」も、角のあるケースと見えるねじを特徴にしてきた。
初心者にとっての入口は、宝石や格式ではない。服と同じように、輪郭から選べることだ。
どんな人に選ばれやすいか。
- 丸い時計より、四角い形に目が止まる
- シャツ、ジャケット、革靴、アクセサリーとの収まりを見たい
- 大きく主張するより、線のきれいさを楽しみたい
- 時計を機械だけでなく、身につけるデザインとして見たい
カルティエを「女性用」と固定しない。タンクやサントスはサイズや素材も一つではない。形が好きかどうかを先に見る。
セイコー——一つの性格にまとめられないほど、入口が広い
セイコーの歴史は、1881年に服部金太郎が時計の販売と修理を始めたことにさかのぼる。1924年には、初めて文字盤に「Seiko」と記した時計が発売された。
セイコーを一言で説明しにくいのは、弱点ではない。日常のクォーツ時計、機械式時計、スポーツ向け、ダイバーズ、計時技術まで、長い間に多くの入口を作ってきたからだ。
初心者は、シリーズ名を一度に覚えなくてよい。
覚えるなら、必要な使い方と予算から、かなり広く探せる日本の時計ブランドという一言でよい。
どんな人に選ばれやすいか。
- 最初の一本を、身近なところから探したい
- 仕事、休日、スポーツなど、使う場面を先に決めたい
- 派手な知名度より、実用と選択肢を見たい
- 同じブランドの中で、価格や仕組みを比べたい
セイコーを「手頃な時計」だけへ縮めない。幅が広いからこそ、どこを見ているセイコーなのかを分ける必要がある。
ロレックス——知られていることと、道具としての丈夫さが重なる
ロレックスは、スイスの時計ブランドである。
名前が広く知られているため、価格、成功、資産価値の話だけで語られやすい。しかし、ブランドの土台には、腕時計を日常の道具として安定して使うための課題がある。
1926年のオイスターは、ケースを密閉して水や埃から中を守る考え方を形にした。1931年には、腕の動きでぜんまいを巻き上げるパーペチュアルローターを取り入れた。現在のロレックスにも、防水性、精度、自動巻き、丈夫さを一つにまとめる考え方が続いている。
初心者が最初に見るなら、相場ではなく、毎日使える時計を長く作ってきたブランドという土台でよい。
どんな人に選ばれやすいか。
- 一本を長く使いたい
- 多くの人が名前を知る、定番の安心感が欲しい
- 記念や節目に、後から見ても意味が残る時計を選びたい
- スポーツ用の出自と、日常で使える形の両方に惹かれる
もちろん、すべての所有者が同じ理由で選ぶわけではない。譲られた時計かもしれないし、仕事道具かもしれない。ブランド名から人物を決めつけない。
デイトナ——ブランド名ではなく、ロレックスの一つのモデル
デイトナの正式名は「コスモグラフ デイトナ」である。
1963年に登場し、モータースポーツのためのクロノグラフとして作られた。クロノグラフは、通常の時刻表示に加えて、経過時間を測る機能を持つ時計である。文字盤の中に小さな表示が並び、外周には速度を読むための目盛りを持つ。
最初から細かな機能を使いこなす必要はない。
覚えるなら、ロレックスの中にある、レース由来の象徴的なモデルである。
どんな人に選ばれやすいか。
- 車やモータースポーツの物語が好き
- 三つの小さな表示を持つ、情報量のある文字盤が好き
- ロレックスの中でも、スポーツらしいモデルに惹かれる
- 一つのモデルが長く更新される歴史を楽しみたい
デイトナだけを見て「ロレックスはすべて同じ顔」と思わない。時刻だけを表示するシンプルなモデルも、日付を持つモデルも、潜水や探検を出自に持つモデルもある。
「どんな人がつけるか」は、年収ではなく選んだ理由で見る
時計は腕に見えるため、持ち主の人物像を勝手に作りやすい。
しかし、同じ時計でも理由は違う。新品で買ったとは限らない。家族から譲られたかもしれない。仕事で必要だったかもしれない。昔から形が好きだったかもしれない。
人物を当てる代わりに、選ばれやすい理由を比べる。
| 名前 | 最初に見える選ばれ方 | ここからは決めつけない |
|---|---|---|
| G-SHOCK | 気を使わず、丈夫に使いたい | デジタルだけ、若者だけではない |
| カルティエ | 形や服との収まりで選びたい | 女性用、装飾だけではない |
| セイコー | 用途と予算から広く探したい | 手頃な時計だけではない |
| ロレックス | 認知度があり、長く使う一本が欲しい | 投資、成功者の印だけではない |
| デイトナ | レースの物語とクロノグラフの形が好き | 別ブランドではない |
この表は、所有者を分類するものではない。自分がどの入口に少し反応したかを見るための表である。
形、使い方、物語から、一つだけ選ぶ
時計を楽しむ入口は、三つで足りる。
形。 丸いか四角いか。数字が多いか少ないか。樹脂、革、金属のどれが目に入るか。
使い方。 仕事、休日、雨、運動、旅行のどこへ持っていきたいか。
物語。 落としても壊れない時計、四角い時計のデザイン、防水の歴史、モータースポーツとの関係。どの話が気になるか。
5つすべてを覚えなくてよい。
- 丈夫さが気になるなら、G-SHOCK
- 四角い形が気になるなら、カルティエ
- 選択肢の広さが気になるなら、セイコー
- 長く使う一本が気になるなら、ロレックス
- 車とレースの物語が気になるなら、デイトナ
一つ選べば、もう時計の入口に立っている。
値段、格、投資から始めなくていい
価格を知らないことを、知識不足だと思わない。 時計の価格は素材、機構、流通、希少性など多くの要素で変わる。入口で暗記する必要はない。
ブランド名を、人を測る道具にしない。 収入、仕事、立場、趣味の深さは、腕の時計だけでは分からない。
相場と人気を、時計そのものの面白さと混ぜない。 売買の話と、形、用途、歴史を楽しむ話は分けてよい。
一つのブランドを、一つの性格へ固定しない。 各ブランドの中には、形も用途も異なる時計がある。
次の一歩
次に時計の名前を聞いたら、全部を知ろうとしなくてよい。
ブランドか、モデルか。丈夫さ、形、選択肢、長く使う道具、レースの物語。どれに近い名前かを一つ拾う。
G-SHOCK、カルティエ、セイコー、ロレックス、デイトナ。5つのうち一つでも顔が浮かべば、時計はもう遠い専門分野ではない。