大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINK連載「ビールの教養」第2回

クラフトビールって何?——よなよな、銀河高原、SPRING VALLEY BREWERYの3本で知る——どんな味で、誰がどこで造っていて、どこで買えるのか

柑橘のように香るもの、白く濁ってやわらかいもの、苦味で押してくるもの。クラフトビールは定番のビールより味の幅がずっと広い。全国各地の醸造所、地元の素材を使う商品と海外発祥のスタイル、買える場所。よなよなエール、銀河高原ビール、SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー 496の3本で知る第2回。

公開 2026.07.05最終確認 2026.08.29
この連載の目次(全6・完結
  1. 01スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス——定番4本は何が違う?
  2. 02クラフトビールって何?——よなよな、銀河高原、SPRING VALLEY BREWERYの3本で知るいまここ
  3. 03同じ生ビールでも、店で味が変わる
  4. 04日本のクラフトビールはどう広がった?——エチゴ、よなよな、COEDO、常陸野ネスト
  5. 05缶の「限定」「プレミアム」「発泡酒」は、何を意味する?
  6. 06世界の定番ビールは何が違う?——ラガー、スタウト、白ビールを飲み比べる

コンビニやスーパーの棚の端に、見慣れないラベルの缶が並ぶ一角がある。「クラフトビール」と呼ばれるビールだ。小さな会社のビール? 苦いビール? 高いビール?——名前は聞くけれど、中身がどんなものかは意外と知られていない。どんな味で、誰がどこで造っていて、どこで買えるのか。そのうえで、売り場で会いやすい3本を開ける。

CRAFT BEER

定番より、味の幅がずっと広い

クラフトビールは、定番のビールより幅がずっと広い。缶を開けた瞬間にグレープフルーツのように香るもの。小麦を使って白く濁り、口当たりのやわらかいもの。ホップを強く効かせて、苦味で押してくるもの。焦がした麦で真っ黒なもの。同じ「ビール」の一語でくくれる範囲が、はるかに広い。

北海道から沖縄まで、全国各地に小さな醸造所がある。一方で、大手メーカーが「クラフトビール」として売る商品もある。網走の小麦、新潟のコシヒカリ、川越のサツマイモ——地元の農産物を使う商品も多い。地域の素材を使わず、アメリカのペールエールやドイツの小麦ビールといった、海外で生まれたスタイルを造る醸造所もある。

国産だけを指す言葉でもない。アメリカやヨーロッパにも小規模な造り手があり、その缶や瓶が輸入されて同じ棚に並んでいる。買える場所も一つではない。よなよなエールのように全国のコンビニやスーパーに置かれている商品もあれば、地域の醸造所の商品は、酒販店やビアバー、醸造所に併設された店でしか会えないこともある。

大手メーカーの商品なら、キリンの「SPRING VALLEY BREWERY」やサントリーの「TOKYO CRAFT」がある。クラフトビールには、誰もが従う厳密な定義がない。酒税法上の品目名でもなく、缶の品目欄には「ビール」や「発泡酒」と書かれる。

ラガーは、低い温度で時間をかけて発酵させる造りのビールである。日本の定番ビールの多くがこれに当たる。ただし、ラガーは「すっきりした味」の別名ではない。第1回のスーパードライもヱビスもラガーだが、味はかなり違う。一方、エールはラガーより高めの温度で発酵させる。よなよなエールと銀河高原ビール 小麦のビールはエールの仲間で、「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー 496」はラガー。同じクラフトビールでも、造りも味も一つではない。

PALE ALE

よなよなエール——缶の口から、柑橘の香りが立つ

よなよなエールの350ml缶。オレンジ色の地にYONA YONA ALEの文字と麦の穂のデザイン
よなよなエールの缶(2014年撮影)。オレンジ色の地に麦の穂——下部に「香りのエールビール」の表記があるPhoto: ╬ಠ益ಠ) / Flickr / CC0 1.0リサイズ

よなよなエールは、長野のヤッホーブルーイングの主力商品である。スタイルはアメリカンペールエール。スタイルとは、造りと味の型の名前である。

プルタブを起こすと、グレープフルーツの皮をむいたときのような香りが立つ。口に含むと、その香りが口の中でふくらみ、キャラメルを思わせる麦の甘みが真ん中で支える。苦味は最後にゆっくり来て、飲み込んだあとも長く残る。第1回の4本に、香りがここまで先頭に立つ一本はなかった。

この柑橘の香りの出どころが、アロマホップ「カスケード」である。ホップはもともとビールに苦味と香りを与える植物で、カスケードはアメリカ生まれの品種。ワインの説明にブドウの品種名が出てくるように、クラフトビールではホップの品種名が説明に使われる。

色はラガーの金色より一段濃い、琥珀がかった金。「ペール」は淡いという意味だが、これは濃い黒のビールに対して淡い、という歴史的な呼び名で、いまの金色のラガーより淡いという意味ではない。

温度でも味が変わる。冷やしすぎると香りも甘みも閉じて、ただ苦いだけの一杯に近づく。冷蔵庫から出して数分置き、13度くらいまで戻ると、香りがほどけ、甘みが出てくる。キンキンに冷やして飲む定番ラガーとは、うまい温度そのものが違う。

このペールエールのホップをさらに強く効かせたスタイルが、IPA(インディア・ペールエール)である。同じヤッホーブルーイングの「インドの青鬼」(アルコール分7.0%)が売り場で会いやすい一本で、レモンの皮のような強い香りの直後に、強い苦味が来て舌に長くとどまる。スタイル名はビアスタイル図鑑で引ける。

WEIZEN

銀河高原ビール——白く濁って、バナナの香り

「銀河高原ビール 小麦のビール」は、白く濁っている。大麦の麦芽に加えて小麦を使う、ドイツ生まれのヴァイツェンというスタイルの一本である。1996年に岩手の高原で生まれたブランドで、いまはよなよなエールと同じヤッホーブルーイングが引き継いで造っている。売り場では、鹿が並ぶ青い缶が目印になる。

グラスに注ぐと、白く濁った淡い小麦色の液体に、こんもりした白い泡が乗る。濁りは濾過をしていないためで、小麦のタンパク質と酵母がそのまま液体に残っている。鼻を近づけると、ホップではなく酵母が発酵中に作り出す、熟したバナナのような甘い香りが立つ。奥には、クローブを思わせるスパイスの気配もほのかにある。果物もスパイスも入れていないのに、酵母だけでこの香りになる。

口に入れると、苦味はほとんど来ない。麦と小麦の甘みがとろりと乗り、炭酸はおだやかで、口当たりはやわらかい。飲み込んだあとにも、バナナのような風味がしばらく残る。キンキンに冷やした喉ごしで飲むタイプではなく、まろやかさで飲ませる一本である。第1回の4本とも、よなよなエールとも、香りの出どころからして違う。

「白いビール」には、ベルギー生まれのベルジャンホワイトという別の系統もある。同じ小麦のビールでも、こちらはオレンジピールとコリアンダーを加えて香りを作る。ドイツ系とベルギー系で香りの作り方が違うので、メニューで見かけたときは名前ごとビアスタイル図鑑で引ける。ベルギー系の代表ヒューガルデンには、最終回で会う。

CRAFT LAGER

SPRING VALLEY BREWERY——大手が造る、クラフトのラガー

「SPRING VALLEY BREWERY 豊潤ラガー 496」は、キリンビールがクラフトビールとして全国で売っている一本である。コンビニやスーパーの棚で、定番の缶と並んでいることが多い。

飲むと、きめ細かい泡の下に麦の厚いうまみがあり、柑橘と花のような華やかな香りが重なる。ラガーには珍しい香りの強さである。それでいて、濃い琥珀の見た目に反して、後味はすっと引いて残らない。スタイル名はインディア・ペール・ラガー。低温でじっくり発酵させるラガーの造りに、IPAのようにホップを効かせた型である。麦芽の使用量はキリンラガービールの約1.5倍ある。

スーパードライやヱビスと同じラガーでも、香りはここまで違う。ラガーが味の名前ではないことは、この一本を飲むといちばん早く分かる。

COLORS

グラスが並ぶと、違いが見える

木の台に載った4つの小さなグラス。それぞれ色の違うビールが注がれている
小さなグラスで数種類を並べるビアフライト。この一組では、左から右へ、金色・琥珀・濃色と色が変わっているPhoto: Wanderstheworld / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

写真は、数種類を小さなグラスで並べる「ビアフライト」という出し方である。この一組では、透きとおる金色から、琥珀、濃い色まで、グラスごとに色が違う。よなよなエールは琥珀、小麦のビールは白濁、豊潤ラガー 496は濃い琥珀——グラスに注ぐと、見た目からして別の一杯になる。

スタイルの名前は、これからもあちこちで目に入る。よなよなエールは「ペールエール」、インドの青鬼は「IPA」、銀河高原ビールは「ヴァイツェン」、豊潤ラガー 496は「ラガー」の一族。ここで会わなかった言葉も含めて、主なスタイルは1ページずつビアスタイル図鑑にまとめてあり、この記事の末尾に全ページへの一覧を置いた。

次回

缶と瓶の世界が分かったら、次は店の一杯である。同じ銘柄の生ビールなのに、店によって味がはっきり違う——その理由は、注ぎ方の腕前だけではない。第3回では、初めてのビアバーに入って一杯を飲み終えるまでの時間に沿って、樽からグラスまでの裏側を見る。