大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINK連載「ビールの教養」第1回

スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス——定番4本は何が違う?——一口目の出方、麦の甘み、均整、余韻。4本の性格を知る

居酒屋とコンビニでよく見かける定番4本。同じ5%の金色でも、一口目の出方、甘みと苦味の重なり方、後味の消え方はそれぞれ違う。スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビスの味を知る第1回。

公開 2026.07.05最終確認 2026.08.29
この連載の目次(全6・完結
  1. 01スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス——定番4本は何が違う?いまここ
  2. 02クラフトビールって何?——よなよな、銀河高原、SPRING VALLEY BREWERYの3本で知る
  3. 03同じ生ビールでも、店で味が変わる
  4. 04日本のクラフトビールはどう広がった?——エチゴ、よなよな、COEDO、常陸野ネスト
  5. 05缶の「限定」「プレミアム」「発泡酒」は、何を意味する?
  6. 06世界の定番ビールは何が違う?——ラガー、スタウト、白ビールを飲み比べる

居酒屋で「とりあえず生」と頼むと、店によって出てくる銘柄が違う。コンビニの冷蔵棚では、銀・オレンジがかった赤・金の星・恵比寿様の缶が隣り合って並んでいる。スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス。どれも金色で、アルコール分は同じ5%。それなのに、一口目の出方も、後味の消え方も、それぞれはっきり違う。

SUPER DRY

スーパードライ——飲み込むと、味が消える

アサヒスーパードライの350ml缶の正面。銀色の缶にAsahiのロゴとSUPER DRYの文字
アサヒスーパードライの350ml缶(2011年撮影のデザイン)。銀色の缶が売り場での目印になる。「生ビール(非熱処理)」の表記も読めるPhoto: Batholith / Wikimedia Commons / Public Domainリサイズ

最初は銀色の缶から。口に含むと、強めの炭酸と短い苦味が勢いよく立ち、喉を通るころにはすっと引く。麦の甘みや香りは最初から控えめで、飲み込むと味そのものが口からいなくなる。最初の刺激ははっきりしているのに、飲み終わりには乾いた感じとスッキリ感しか残らない——輪郭が鋭く、後味の短いビールである。

1987年に「辛口・生ビール」として発売されて以来、この後味の短さが「辛口」と呼ばれてきた。唐辛子の辛さではなく、後味を引かないという意味である。よく冷えているほど消え際は鋭く、温度が上がると、隠れていた麦の甘さと苦味がうっすら出てくる。

造りの面では自社の318号酵母を使い、原材料の欄には麦芽・ホップに続いて米・コーン・スターチが並ぶ。

ICHIBAN

一番搾り——麦の甘みがふくらんで、きれいに引く

キリン一番搾りの缶。聖獣のマークとKIRIN ICHIBANのロゴ、中央に一番搾りの文字
キリン一番搾りの缶(英字表記主体の海外販売版デザイン・2019年撮影)。国内版も聖獣マークと「一番搾り」の文字は共通するPhoto: Shingieun / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0リサイズ

2本目は、オレンジがかった赤のパッケージと聖獣のマークで、棚に暖色の一角を作っている一番搾り。口に入ると、まず麦の甘いうまみが穏やかにふくらむ。4本の中で、甘みがいちばんはっきり感じられる一本だ。苦味はその後ろに控えめに重なり、炭酸も舌を刺さない。飲み込むと雑味を残さずきれいに引いて、麦のうまみだけがほんのり残る。麦の甘みとコクは厚いのに、飲み口と後味は軽い。

名前は製法そのものだ。ビール造りでは、砕いた麦芽を温水と混ぜてから麦汁をこし取る。最初に自然に流れ出るのが「一番搾り麦汁」で、ふつうはそのあと湯を加えてこし取る二番目の麦汁も合わせて使うところを、キリンビールはこの商品に最初の麦汁だけを使う。最初の麦汁は、麦の殻から出る渋味成分が少ない。一番搾りはその麦汁だけを使い、渋味を抑えている。原材料は麦芽とホップのみ。

KURO LABEL

黒ラベル——どの味も、突き出させない

通常デザインのサッポロ生ビール黒ラベル350ml缶
通常デザインのサッポロ生ビール黒ラベル。中央に金色の星が置かれている。

3本目の黒ラベル。香りは控えめで、最初に淡い麦の甘み、あとから穏やかな苦味が来る。口当たりはなめらかで、濃厚でも水っぽくもない。飲み終わりに甘さを残さず、苦味がゆっくり薄れていく。麦の甘み、苦味、コクのどれか一つを強く出さず、どの味も同じ程度に感じられる。

もう一つの持ち味が泡だ。きめの細かいクリーミーな泡が立ち、缶をグラスに注いだだけで店の生ビールに近い見た目になる。

1977年に「サッポロびん生」として発売され、客がラベルの色から「黒ラベル」と呼ぶようになり、1989年にその愛称が正式名になった。

YEBISU

ヱビス——飲み込んだあとも、味が残る

ヱビスの缶6種が横一列に並ぶ。緑、黒、赤、金、銅色、白の缶それぞれに恵比寿様の像
ヱビスの缶のバリエーション6種(2009年撮影)。どの缶にも恵比寿様の像が入る。中央の金色が基本のヱビスビールPhoto: Mj-bird / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0リサイズ

最後のヱビスは、ひと口目から違う。麦芽のうまみとコクが最初から厚く乗り、ほのかな甘みと、しっかりした苦味が一緒に来る。口当たりはまろやかで角がないのに、味は軽く消えない。スーパードライは飲み込むと味が早く引くが、ヱビスは麦の香ばしさと苦味が長く残る。うまみも苦味も強く、飲み込んだあとまで続くため、4本の中では重さのある味である。

造りにも理由がある。原材料は麦芽とホップのみの麦芽100%。専用の「ヱビス酵母」を使い、熟成期間は同社の通常のビールの約1.5倍を取る。1890年に「恵比寿ビール」として生まれた、4本の中で最も古い銘柄である。缶の恵比寿様は、東京の地名「恵比寿」の由来にもなった。駅名のほうが後である。写真の6種の缶のように、このブランドには黒や琥珀のバリエーションが続いてきた。

ON THE CAN

違いは、缶の裏にも印字されている

4本の違いの一部は、缶の裏の原材料欄にも印字されている。一番搾りとヱビスは麦芽とホップのみ。スーパードライと黒ラベルには、米・コーン・スターチが続く。同じ棚の隣同士でも、使っている材料からして違う。

居酒屋の「とりあえず生」で出てくる一杯にも、この4本のどれかの名前が付いていることが多い。メニューの隅や店先のロゴを見れば、今日の一杯がどの銘柄かは分かる。

次回

4本はいずれも、低温でゆっくり発酵させるラガーというタイプに属する。第2回では、よなよなエール、インドの青鬼、ヒューガルデン——エールの缶を開けて、香り、苦味、口当たりの違いを比べる。