この連載の目次(全6回・完結)
- 01甘口と辛口、酸、旨み、キレ——日本酒の味を表す言葉
- 02十四代、新政、而今、飛露喜、作、鍋島——人気銘柄は、どんな酒なのか
- 03香りのある日本酒——果実のような香りと、飲んだときの味
- 04酸のある日本酒——甘酸っぱさ、旨み、口当たりいまここ
- 05新潟・灘・広島——土地の酒づくりと、代表的な酒
- 06生酒と熟成した日本酒——搾りたてから秋あがり、長く寝かせた酒まで
澪の酸は、やさしい甘みと炭酸の刺激に重なって、甘酸っぱさになる。新政 亜麻猫は、焼酎用の白麹で、日本酒離れした酸味を出す。田酒 純米大吟醸 山廃の酸は、山廃らしい厚みのある味の中で、きれいですっきりと感じられ、久保田 碧寿では、どっしりとした旨みに爽やかでシャープな酸味が並ぶ。風の森 露葉風507では、生酒の滑らかな質感の上に、みずみずしい甘みをまとった酸味が乗る。
澪と新政 亜麻猫——甘酸っぱさと、白麹の酸味
宝酒造の松竹梅白壁蔵「澪」は、第1回で見たとおり、やさしい甘みにほどよい酸味が重なって、飲むと甘酸っぱい。その酸は甘みの中に混ざって感じられ、口に含んだときの炭酸の刺激と一緒に来る。

新政 PRIVATE LAB(亜麻猫、涅槃龜、陽乃鳥)新政酒造(秋田市)
(左が本文の亜麻猫で、帯に「別誂 直汲」とある別仕様。涅槃龜と陽乃鳥は別商品)
秋田市の新政酒造の「新政 亜麻猫(あまねこ)」は、日本酒の麹に加えて、強い酸味を持つ焼酎用の白麹を使って造る純米酒だ。蔵は、日本酒離れした酸味が楽しめる酒だと説明する。
旨みの厚みと、酸——田酒 純米大吟醸 山廃と、久保田 碧寿
山廃(やまはい)は、乳酸を加えずに、自然の乳酸菌の力で酒母(しゅぼ。酵母を増やす仕込みの元)を育てる昔ながらの造り方だ。田酒にも久保田にも、山廃で造る商品がある。
青森市の西田酒造店の「田酒 純米大吟醸 山廃」は、山廃らしい厚みのある味に、気品のある吟醸香が釣り合う純米大吟醸で、蔵元の西田司は2025年に、山廃と聞くと重たくて独特の癖があると思われがちだが、この酒の特徴はきれいですっきりとした酸だ、と語っている。
新潟県長岡市の朝日酒造の「久保田 碧寿」は、燗でも楽しめるコクのある吟醸酒を目指して1988年に生まれた、山廃の純米大吟醸だ。どっしりとした旨みに、爽やかでシャープな酸味と、キレのある軽い喉ごしが並ぶ、と蔵は説明する。蔵が勧めるぬる燗でも、しっかりした味わいと山廃の深い旨みは残るという。
風の森 露葉風507——甘みをまとった酸味と、生酒の質感
奈良県御所市の油長酒造の「風の森 露葉風507」は、奈良県でだけ作られる酒米の露葉風で造る生酒だ。蔵の説明では、硬いイチゴを思わせる香りに、みずみずしい甘みをまとった、きゅっと感じる酸味があり、この酸味は露葉風ならではだという。
風の森は、ろ過も加水もしない生酒に特化した銘柄で、蔵は、生酒ならではのとろっとした豊かで滑らかな質感を持ち味に挙げる。開栓直後は、もろみの発酵で生まれた自然の炭酸ガスが溶けていて、口に含むとプチプチとした優しい発泡感があることがある、と蔵は書く。
次回
第5回では、新潟、灘、広島——土地の酒づくりの背景と、その土地の代表的な酒を見ていく。