大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

DRINK連載「日本酒の教養」第1回

甘口と辛口、酸、旨み、キレ——日本酒の味を表す言葉——久保田 千寿、白鶴 まる、特別本醸造 八海山、菊水ふなぐち、澪で見る

日本酒の説明に並ぶ「辛口」「酸」「旨み」「淡麗」「濃醇」「なめらか」「キレ」が、飲んだときのどの感じを指しているのか。久保田 千寿、白鶴 まる、特別本醸造 八海山、菊水ふなぐち、松竹梅白壁蔵「澪」を例に、甘さの感じ方、酸の効き方、旨みのふくらみ、軽さと厚み、口当たりと後味を見ていく。

公開 2026.07.05最終確認 2026.09.11
この連載の目次(全6・完結
  1. 01甘口と辛口、酸、旨み、キレ——日本酒の味を表す言葉いまここ
  2. 02十四代、新政、而今、飛露喜、作、鍋島——人気銘柄は、どんな酒なのか
  3. 03香りのある日本酒——果実のような香りと、飲んだときの味
  4. 04酸のある日本酒——甘酸っぱさ、旨み、口当たり
  5. 05新潟・灘・広島——土地の酒づくりと、代表的な酒
  6. 06生酒と熟成した日本酒——搾りたてから秋あがり、長く寝かせた酒まで

辛口、酸がある、旨みがある、淡麗、なめらか、キレがいい。日本酒の説明に並ぶこれらの言葉が指しているのは、久保田 千寿の後味の引き方であり、白鶴 まるの口当たり、菊水ふなぐちの厚み、澪の甘酸っぱさである。

SWEET & DRY

甘口と辛口——甘さが勝つか、引いていくか

日本酒でいう辛口は、甘みをあまり感じない味、あるいは酸やアルコールの刺激が甘みより勝って感じられる味のことだ。甘みが勝って感じられれば、甘口と呼ぶ。

吟醸 久保田 千寿は、朝日酒造が「辛口」と示す酒である。口に含むと透明感のある味わいが広がり、その中にほんのりと米の旨みと甘み、酸味が感じられる。甘みが前に出る酒ではない。

宝酒造の松竹梅白壁蔵「澪」は、反対に甘みが前に出る。マスカットのようなフルーティーな香りと、やさしい甘みがある、泡を含む日本酒だ。

ラベルや品書きで見る「日本酒度」は、この甘辛の目安になる数字である。ただし、甘辛の感じ方は酸や香り、飲む温度でも変わるので、数字だけでは決まらない。

ACIDITY

酸——酸っぱさと、飲み口の締まり

日本酒にも酸があり、口に含んだときの酸っぱさや、爽やかさとして感じられる。

千寿では、喉をさらっと通る飲み口の中に、米の旨みと一緒に酸味が感じられる。

澪は、やさしい甘みにほどよい酸味が重なり、飲むと甘酸っぱい。

UMAMI

旨み——米の味のふくらみ

赤と白のパッケージに大きく「まる」と書かれた白鶴 サケパック まる 3L

白鶴 サケパック まる 3L白鶴酒造(兵庫県神戸市)

白鶴 サケパック まるは、口に含むと柔らかくなめらかで、そのあとに米の味がふくらむ。白鶴は、自社の酵母と麹の使い方を工夫して、この旨みがふくらむ味にしている。

旨みは、甘さとも酸っぱさとも違う、米からくる味の充実感である。特別本醸造 八海山では、この旨みが、口に含んでしばらくした中盤に、やさしい甘みと一緒に来る。

LIGHT & RICH

淡麗と濃醇——軽さと厚み

淡麗は、濃さは感じないのに味がまとまっていることを指す。反対に、濃さがあって味がまとまっていれば濃醇と呼ぶ。

千寿は淡麗な酒で、飲み込んだあとは水のように流れる軽さがある。まるも、白鶴の表示では「やや淡麗」。旨みがふくらむ酒でも、濃さとしては軽い側にある。

厚みのある側の例が、菊水酒造の菊水ふなぐちだ。搾った酒に水を加えず、火入れもしない生原酒で、生酒らしいフレッシュさとフルーティーな香り、原酒らしい厚みと濃いうまみがある。缶の中で時間が経つと熟成が進み、まろやかになって、ブランデーのようなコクへ移っていく。

TEXTURE & FINISH

口当たりと、飲み込んだあと

口当たりは、口に含んだときの舌ざわりや、刺激の強さの感じ方である。まるの口当たりは、丸みがあってまろやかだ。澪はアルコール分5%と低く、口に含むと炭酸の刺激がある。アルコール分19%のふなぐちは、口に含むとアルコールの刺激も強めに来る。

後味は、飲み込んだあとにも口の中に残る感じを指す。「キレがいい」とは、その後味がもたつかず、すっきりと引いていくことをいう。すっきり引いたあとに、余韻が長く続く酒もある。千寿は、後味がすっと引く。その引き際に、ほのかな余韻と甘みがある。

次回

第2回では、十四代、新政、而今、飛露喜、作、鍋島——日本酒好きの間で名前が挙がる6つの銘柄の背景と味を見ていく。