この連載の目次(全7回・完結)
- 01スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス——定番4本の味と生い立ち
- 02アサヒ生ビール(マルエフ)、ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール、晴れ風——4本の味と、それぞれの事情
- 03クリアアサヒ、金麦、本麒麟、淡麗極上〈生〉——4本の味と、ビールになる3本
- 04同じ生ビールでも、店で味が変わる
- 05クラフトビールの香りと苦みは、どこから来るのか
- 06よなよなエール、水曜日のネコ、インドの青鬼、スプリングバレー——缶で買えるクラフト4本いまここ
- 07ハイネケン、コロナ、バドワイザー、ギネス、ヒューガルデン、ピルスナーウルケル——世界の定番6本の味
コリアンダーシードとオレンジピールをそのまま入れると、バルブや配管が詰まってしまう。そこで、袋に入れて仕込むことにした。ヤッホーブルーイングは、ほかによなよなエールとインドの青鬼を造っている。ここでは、その3本に、キリンのスプリングバレーを加えた4本を見ていく。
よなよなエール——毎晩開ける一本として

ヤッホーブルーイングの創業者は、星野リゾートの星野佳路だ。アメリカに滞在していたとき、たまたま入ったパブでビールを飲んで衝撃を受けた。それまで日本のビールしか飲んだことがなかった。アメリカではありふれた味だったが、この香りと味わいを日本にも広めたい、と考えた。1997年に出たよなよなエールは、そこから生まれている。
名前には、毎晩のように個性豊かなエールを楽しんでほしい、という願いが入っている。特別な日のビールではなく、家で毎晩開ける一本を目指した。
グレープフルーツやレモンを使っているのかと思うほど、華やかな香りが立つ。使うのは麦芽とホップだけで、香りはカスケードというホップから来る。麦芽のコクと甘み、穏やかな苦みと酸味が釣り合っていて、飲んだあとも香りが残る。アルコール分は5.5%。
水曜日のネコ——最初の名前は「水曜日の白」
水曜日のネコは、青リンゴを思わせる爽やかな香りがして、苦みは穏やかだ。ベルジャンホワイトエールという型で、小麦の麦芽を使う。アルコール分は5%。
最初の案は「水曜日の白」だった。月曜から金曜まで働く人に、週の真ん中くらいはゆっくりしてほしい。そこへ、型の名前の「白」を合わせるつもりだった。ただ、気ままにくつろぐ姿に似合うのは、自由に暮らすネコだ。それで、いまの名前になった。
缶の品目欄には「発泡酒」とある。麦芽の比率は75%で、麦芽の割合の条件は満たしている。ただ、コリアンダーシードとオレンジピールの量が、ビールとして認められる範囲を超えている。
インドの青鬼——名前は、IPAの由来から

インドの青鬼は、アルコール分7%のIPAだ。味は、ガツンとくる強烈な苦みと、深いコク。よなよなエールが麦芽の甘みと苦みを釣り合わせているのに対して、こちらはホップを前に出しきっている。香りも、ホップの青々しさに加えて、パッションフルーツやパインのような香りが乗る。
IPAは、インディア・ペールエールの略。イギリスからインドへ輸出されたペールエールに由来する名前だ。商品名の「インド」は、ここから来ている。「青鬼」のほうは、大量のホップが生む驚くような苦みと、ホップの青々しさを表している。
ヤッホーがすすめる合わせ方は、麻婆豆腐やよだれ鶏のような、スパイシーな中華料理だ。
キリンのスプリングバレー——麦を増やし、香りは漬けて移す

豊潤ラガー 496は、キリンのクラフトビールのブランド「スプリングバレー」の一本だ。口に広がる麦のうまみと、ホップの上品な香り。豊潤なのに、後味はすっきりときれいだ。アルコール分は6%。
濃さの土台は、麦芽の量にある。キリンラガーの1.5倍を使う。香りのほうは、煮込んで飛ばしてしまわないように、冷ました麦汁にホップを7日間漬けて移している。
名前の496は、完全数と呼ばれる数だ。自分以外の約数を全部足すと、元の数に戻る。「スプリングバレー」のほうは、1870年に横浜で開かれた醸造所の名前だ。キリンは2014年、この名前でクラフトビールのブランドを立ち上げた。
次回
最終回の第7回では、ハイネケン、コロナ、ギネス——世界の定番6本を紹介する。