この連載の目次(全7回・完結)
- 01スーパードライ、一番搾り、黒ラベル、ヱビス——定番4本の味と生い立ち
- 02アサヒ生ビール(マルエフ)、ザ・プレミアム・モルツ、サントリー生ビール、晴れ風——4本の味と、それぞれの事情いまここ
- 03クリアアサヒ、金麦、本麒麟、淡麗極上〈生〉——4本の味と、ビールになる3本
- 04同じ生ビールでも、店で味が変わる
- 05クラフトビールの香りと苦みは、どこから来るのか
- 06よなよなエール、水曜日のネコ、インドの青鬼、スプリングバレー——缶で買えるクラフト4本
- 07ハイネケン、コロナ、バドワイザー、ギネス、ヒューガルデン、ピルスナーウルケル——世界の定番6本の味
お客様相談室やSNSには、缶の復活を望む声が寄せられていた。2018年に期間限定の缶が出て、2021年9月、通年で買える缶が戻ってきた。
アサヒ生ビール(マルエフ)——世に出ないはずの開発記号が、名前になった

「マルエフ」は、もともと社内の開発記号だった。1986年の発売前、幸運の不死鳥(FORTUNE PHOENIX)にちなんで「マルエフ(F)」と呼ばれていたものだ。開発記号が世に出ることは、ふつうない。それが発売後も飲食店で使われ続け、愛称として残った。復活した缶にも、不死鳥の絵と「通称 マルエフ」の文字が入っている。
持ち味は、まろやかなうまみだ。コクがあって飲みごたえもあり、後味は重くない。この中味になったのは2025年1月の製造分からで、1986年の発売以来、初めて中味を変えた。まろやかさはそのまま残してある。
ザ・プレミアム・モルツ——硬い麦芽を、二度煮出す

ザ・プレミアム・モルツには、「ダイヤモンド麦芽」が一部に使われている。チェコとその周辺の国で穫れ、製麦される麦芽で、うまみのもとを多く含む。ただし粒の構造が硬く、味を引き出しにくい。そこで仕込みの釜で麦汁を二度煮出し、手間をかけて引き出す。2023年からは、穀皮を取り除いた「磨きダイヤモンド麦芽」も一部に加わった。
狙う味は、深いコクと、飲み込んだあとも続くうまみだ。ホップは欧州産のアロマホップ。仕込み水は天然水で、工場は地下から水をくみ上げられる場所にしか建てない。
缶は紺色をしている。長く金色だったのが、2025年12月下旬から順次、中味の見直しと合わせて変わった。売り場では、この色が目印になる。
「ザ・プレミアム・モルツ」の名前になったのは2003年。2005年には、日本のビールとして初めてモンドセレクションの最高金賞を受けている。
サントリー生ビール——香ばしい香りと、のどごし

缶には「沁(し)みわたるのどごし」と書いてある。香りは香ばしく、それでいて軽い。麦のうまみがあって、苦みは後に残らない。
麦芽と一緒に使うのがコーングリッツだ。トウモロコシの外皮と胚芽を取り、でんぷんの部分をひき割ったもので、香ばしく軽快な香りと、飲み終わったあとの爽快感を狙って入れている。
ダイヤモンド麦芽も使う。プレモルと同じ、非常に硬い麦芽だ。手間と時間をかけて煮出すことが飲みごたえにつながる。麦汁を煮出す工程は三度繰り返し、素材それぞれのうまみを引き出す。
発売は2023年4月。会社が飲み方を調べると、家で食事をしながら、人と話しながら、時間をかけて飲む場面が増えていた。そこで目標を、飲み始めから最後のひと口までうまさが続くことに置いた。
キリン晴れ風——麦芽100%と、日本産ホップの香り

晴れ風は、キリンが2024年4月に出したビールだ。麦芽100%で、米やコーンなどの副原料は使わない。香りは、キリンが品種から開発した日本産のホップ「IBUKI」と、新たに加わった清涼感のあるホップから来る。
味は、麦のきれいなうまみと、爽やかな香り。飲み口はすっきりしていて、後味はだらだらと続かない。
売上の一部は、桜と花火大会を守る活動に使われている。「晴れ風ACTION」という取り組みだ。
次回
第3回では、クリアアサヒ、金麦、本麒麟、淡麗極上〈生〉。ビールの隣に並ぶ4本を見る。