この連載の目次(全8回・完結)
- 01競馬は、馬券を買わなくても面白い無料
- 02GⅠは、強い馬を決める一枚の順位表ではない無料会員
- 03レースは、最後の直線より前に動いているいまここ
- 04血統は、未来を当てる答えではなく、得意条件の仮説読み放題
- 05競走馬は、一頭ではレースへ出られない読み放題
- 06同じ馬でも、競馬場が変わるとレースが変わる読み放題
- 07名馬は、どのレースをどう勝ったかで語られる読み放題
- 08競馬の話は、予想より「どこで動いたか」読み放題
最後の直線で、後ろから一頭が伸びてくる。映像だけを切り取れば、「末脚(すえあし)がすごかった」で終わる。だが、その馬はどこで待ち、どこで外へ出し、いつ前との差を詰め始めたのか。反対に、先頭の馬はどのくらいの差を作り、どこまで粘ったのか。競馬は直線で急に始まらない。道中の位置と速度の変化が、直線の形を作っている。
脚質を知る前に、一頭の現在地を追う
逃げ、先行、差し、追込。競馬の記事や実況では、馬の走り方を表す言葉が繰り返し出る。
しかし、脚質は「逃げ馬は勇敢」「追込馬は速い」といった性格診断ではない。道中で、どの位置を取りやすいかという傾向である。
- 逃げは、先頭付近
- 先行は、前の集団
- 差しは、中団から後方
- 追込は、後方
同じ馬でも、スタート、枠順、距離、周囲の馬、当日の走りによって位置は変わる。前へ行くはずの馬が出遅れることも、後ろで進める馬がいつもより前になることもある。
だから、出走表の脚質表示を答えにしない。
今日は、どこにいるか。
そこから、いつ動いたか。
この二つを画面で確認する。
2022年の天皇賞(秋)は、前と後ろの二つの時間で見る
2022年の天皇賞(秋)。パンサラッサは、最初のコーナーから先頭を進み、後続との差を広げた。公式の通過順位は1-1-1。イクイノックスは後方の10-10-9から進み、最後の直線で差を詰めて勝った。
| 馬 | コーナー通過順位 | 画面で追う物語 |
|---|---|---|
| パンサラッサ | 1-1-1 | 先頭で後続との差を作り、直線でも粘る |
| イクイノックス | 10-10-9 | 後方で進み、直線へ向く前後から差を詰める |
JRA公式結果の通過順位を観戦用に要約。これだけで騎乗意図や勝敗の原因を断定しない。
このレースを「差し馬が逃げ馬を捕まえた」と一文にすると、直線だけの話になる。
先頭では、パンサラッサが後続との差を保つ時間が続く。後方では、イクイノックスが前へ近づくまでの距離を残している。画面には、同時に二つの時間が流れている。
見るべきなのは、勝ち馬だけではない。
先頭の差は、どこで最大に見えたか。
後ろの馬が届きそうに見えたのは、どこからか。
同じ映像を前と後ろで二度見ると、最後の直線は結末ではなく、道中から続く場面になる。
ここまでで、2022年の天皇賞(秋)は、直線だけでなく、パンサラッサが前で作った差と、イクイノックスが後方で待った時間から見ると面白いことが分かりました。続きでは、逃げ・先行・差し・追込、ペース、折り合い、内外の距離差をつなぎ、最後の直線より前にレースが動いた場所を読めるようにします。
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逃げ・先行・差し・追込は、道中の位置の傾向 / ペースは時計だけでなく、馬群の長さにも表れる / 折り合いは、ただ遅く走らせることではない / 外を回る動きには、前へ出る自由と走る距離の両方がある / 仕掛けは一瞬ではなく、速度を上げ始める区間として見る / 会話では、脚質より先に、見えた動きを一つ返す
受付は準備中です。開始はニュースレターでお知らせします。