この連載の目次(全8回・完結)
- 015つの街で知る、海外旅行の一日
- 02海外旅行の行き先図鑑——10の土地を、地図から見る
- 03東京から何時間かかるか——ソウル2時間半、パリ14時間前後
- 04ウィーン、プラハ、ブダペスト、バルセロナ、リスボン——五つの光景
- 05ポイントと会員資格は別物で、マイルの必要数はANAとJALで決まり方が違う
- 06シンガポールの屋台は、ユネスコの無形文化遺産に登録されているいまここ
- 07旅先の物価は、為替と現地の値段の掛け算で決まる
- 08最終回——台北の一日を、迪化街から寧夏路夜市まで歩く
シンガポールのホーカーセンターは、屋台が一つの建物に集まった公設の飲食施設である。中華系、マレー系、インド系、プラナカンの料理が同じフロアに並び、中央の席を共用する。チキンライス、ラクサ、バクテー、ロティ・プラタ。地元の人が日常的に食事をする場所だ。
もとは路上に散らばっていた屋台を、衛生管理のために建物へ集約したことに始まる。いまも国の環境庁が管理し、店ごとに衛生等級が表示されている。
この「多様な文化的背景を持つ人々が同じ場所で食事をする慣習」を、シンガポールは2019年3月にユネスコの無形文化遺産へ申請し、2020年12月16日に登録された。同国にとって、この一覧に載った最初の項目である。

バンコクの路上に、星のついた店がある
タイでは2018年からミシュランガイドのバンコク版が刊行されている。
その第1版で一つ星がついた店のひとつが、中華街の一角にあるジェイ・ファイだった。店主が自ら炭火の前に立ち、ゴーグルをかけてカニのオムレツを焼く。店構えは通りに面していて、大きな厨房設備を屋内に構えた形式ではない。
同じガイドには、他にも小規模な店や路上の店が複数掲載されている。
星が評価しているのは、皿の上のものだけ
ミシュランの一つ星、二つ星、三つ星は、「立ち寄る価値」「回り道をする価値」「旅をする価値」という旅行の言葉で説明されることがある。ミシュランはもともとタイヤの製造会社で、自動車で出かける理由を作るためガイドを配ったという出自があり、この言い回しはそこから来ている。
ただし、現在の星が実際に見ているのは、皿の上のものである。 ミシュランガイドの公式解説によれば、審査員が用いる基準は五つで、食材の質、調理技術の熟達、味の調和、料理に表れる作り手の個性、そしてメニュー全体と時間を通じた一貫性である。
そして公式は、内装、テーブルセッティング、サービスの質は星の評価に含まれないと明言している。これらは快適さの指標や別の区分に関わることはあっても、星そのものには関与しない。
ジェイ・ファイのような、通りに面した小さな店も、皿の上の料理によって星の対象になる。
星とは別の印がある
星以外に、ビブグルマンという区分がある。ミシュランのキャラクターの顔が印になっている。
これは価格に対する質を見る区分で、各国・地域ごとに上限価格が設定されている。星とは評価の軸が違い、同じ店が両方に載ることはない。
旅先で店を探すとき、星の一覧とビブグルマンの一覧では、並ぶ店の顔ぶれが変わる。どちらもミシュランガイドの公式サイトで地域別に検索できる。
次回
その食事や宿の値段は、為替と現地の物価の両方で決まる。第7回では、行き先の物価をどう測るかを見ていく。