大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

FILM連載「映画の教養」第2回

Netflixで話題の映画5本——あらすじと、面白いポイント——新幹線、シティーハンター、社交ダンス、かぐや姫、そして爆弾

Netflixで実際に観られている映画5本を紹介する。世界2位に入った『新幹線大爆破』から、劇場から来て19週間チャートに残る『爆弾』まで。Netflix制作か、劇場作品の配信かも作品ごとに明記する。

公開 2026.08.25最終確認 2026.08.27
この連載の目次(全6・完結
  1. 01『急に具合が悪くなる』『箱の中の羊』『黒牢城』ほか——名前だけでは分からない新作映画6本
  2. 02Netflixで話題の映画5本——あらすじと、面白いポイントいまここ
  3. 03宮崎駿、黒澤明、北野武、是枝裕和、濱口竜介、新海誠、山崎貴——それぞれの映画は、何が違う?
  4. 04スピルバーグ、キャメロン、タランティーノ、スコセッシ、ノーラン、ヴィルヌーヴ——作風はどう違う?
  5. 05IMAXとは何か——通常上映、IMAX、Dolby Cinemaは何が違う?
  6. 06アカデミー賞と三大映画祭——何が違い、誰が選んでいる?

金曜の夜にNetflixを開くと、ランキングの上のほうに日本映画が並んでいる。新幹線が爆走し、冴羽獠が新宿を走り、男二人が社交ダンスを踊り、かぐや姫が配信を始め、取調室の男が爆発を予告する——今回は、その5本である。

今回の5本では、『爆弾』だけが劇場公開後にNetflixへ来た作品で、ほか4本はNetflixが制作した映画である。

BULLET TRAIN

『新幹線大爆破』——本物のJR東日本が全面協力した爆弾映画

あらすじ

時速100キロを下回れば、爆発する。だが新幹線は、いつかどこかで止まらなければならない乗り物である。

新青森発、東京行きのはやぶさ60号は、定刻どおりに出発した。車掌の高市(草彅剛)がいつもの朝と同じように乗客を迎えた直後、この列車に爆弾を仕掛けたという通告が届く。速度を落とせば爆発する。ならば停まれない。停まれない以上、乗客を降ろすこともできない。ついさっきまで通勤や旅行の車内だったはやぶさ60号は、通告ひとつで、誰も降りられない密室に変わった。

高市ら乗務員の仕事は、その密室の中で乗客を守り抜くことだ。そして事態は、列車の外へも広がっていく。犯人は爆弾の解除と引き換えに1000億円を要求し、鉄道会社の指令所、政府、警察が、それぞれの持ち場から「走り続ける列車を、止めずに救う」方法を探し始める。線路には終わりがある。猶予は、走った距離のぶんだけ減っていく。

面白さ

画面の中心にあるのは、危機そのものより「組織が総力で対処する手続き」である。走る車内では乗務員が、指令所では運行の専門家が、車両基地では技術者が、同じ一本の列車のために、それぞれ別の作業を続ける。車内の仕事と、地上の仕事。互いの顔は見えなくても、目的だけが同じ人たちの動きが重なっていく。爆弾を仕掛けたのは誰か、という謎解きより先に、目の前の列車をどう走らせ続けるかという実務が積み重なり、持ち場ごとの仕事がつながって一つの救出策になっていく——その過程を追いかける映画だ。

作りにも本物が使われている。JR東日本が特別協力していて、撮影には実際の新幹線車両と実際の施設が使われた。いっぽう爆破や連結の場面は、6分の1スケールの精巧なミニチュアを、100メートル超の線路で実際に走らせて撮られている。画面の新幹線は、あるカットでは本物で、あるカットでは走る模型である——特撮出身の樋口真嗣監督の作り方だ。Netflixが制作し、2025年4月の配信直後には週間TOP10で非英語映画の世界2位に入った。

TRAILER — 公式予告
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1975年版との関係

元になった1975年の『新幹線大爆破』は、東映のパニック映画である。爆弾を仕掛ける犯人側を高倉健が演じ、物語は犯人たちの計画を軸に進んだ。「速度を落とすと爆発する」という仕掛けは、この旧作の発明だった。50年ぶりに作り直した本作は仕掛けをそのまま受け継ぎ、カメラを犯人から鉄道員の側へ置き直した。同じ爆弾でも、犯人から見れば計画で、鉄道員から見れば持ち場である。ヒーローではなく現場の人間を主役に置いたところが、この作り直しの選択だ。

CITY HUNTER

『シティーハンター』——ふざけた役を、本気の身体でやる

あらすじ

新宿の裏社会には、表に出せないトラブルの処理を金で請け負う男がいる。名は冴羽獠。銃の腕は超一流、なのに美女と見れば仕事を忘れて鼻の下を伸ばす——そういう「始末屋」である。

その獠が相棒の槇村秀幸と引き受けたのは、行方不明になった人気コスプレイヤーの捜索だった。折しも新宿の街では、正体の分からない暴力事件が続いている。人がひとり消えた依頼と、街で続く暴力。別々に見えていた二つは、調べを進めるうちに一つの線へつながっていき、その線の上で、槇村が命を落とす。

現場に居合わせたのは、槇村の妹の香だった。兄はなぜ死んだのか。真相を調べてほしいと香に頼み込まれた獠は、彼女とともに、新宿で起きていることの正体を追いはじめる。それは同時に、相棒を奪った相手を追うことでもある。

面白さ

この実写化の見どころは、原作のふざけた部分をまったく薄めなかったことだ。美女に鼻の下を伸ばす「もっこり」の下品なギャグを原作のまま実写でやり、その同じ人物が、銃を握った瞬間に別人の精度で動き出す。だらしなく緩んだ顔と、撃ち合いの身のこなし。その両方が一人の身体に同居しているから、ギャグの場面が長いほど、アクションに切り替わった瞬間の落差が効いてくる。原作の獠が持っていた二面性が、そのまま一人の俳優の身体の使い分けとして画面に出てくる実写化である。

獠を演じる鈴木亮平は役作りで知られる俳優で、本作でも肉体をつくり込み、コメディの表情からアクションまで一人で振り幅を担っている。ロケには実際の新宿・歌舞伎町の街並みが使われていて、原作と同じ街を、セットではなく実物で撮っている。Netflixが制作し、2024年4月の配信週には週間グローバルTOP10(非英語映画)で初登場1位になっている。

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原作情報

原作は北条司の漫画『シティーハンター』で、日本での実写化はこれが初めてになる。エンディングテーマは、アニメ版の代名詞だったTM NETWORKの「Get Wild」をこの映画のために新録した「Get Wild Continual」。アニメ版では、事件が締めくくられた直後、余韻の中へあの前奏が流れ込んでくるのがお約束だった。その型が実写でも再現される——本編の最後の瞬間まで、原作とアニメ版への目配せが続く作りである。

10DANCE

『10DANCE』——同じ名前のライバルが、互いのダンスを教え合う

あらすじ

名前は同じ「しんや」、踊りは正反対。競技の社交ダンスには、サンバやルンバのように腰で情熱的に踊るラテン5種と、ワルツやタンゴのように組んだまま優雅に進むスタンダード5種がある。その両方を極めた者たちが全10種で競う大会が「10ダンス」——そして鈴木信也はラテンの日本チャンピオン、杉木信也はスタンダードの日本チャンピオンで、世界でも2位につける実力者である。名字は一字違い、名前は同じ。何かと比べられてきた二人は、前から互いを意識し続けてきた。

その杉木が、ある日、鈴木の前に現れて持ちかける。10ダンスで、一緒にチャンピオンを目指さないか——。専門外の5種は、互いに相手の領分である。誘いに乗った鈴木は、杉木と互いの得意種目を教え合うことになる。

腰で踊る男と、組んで踊る男。性格も踊り方も正反対の二人は、ぶつかり合いながら少しずつ相手のダンスへの理解を深め、やがて、互いに強くひかれあっていく。

面白さ

スタンダードとラテンでは、身体の使い方がまるで違う。相手と密着して組んだまま進む踊りと、距離を取って腰で踊る踊り。だから教え合いは、口で説明して終わらない。相手の姿勢に手を添え、組み方を直し、足運びを合わせる——別々の部門で頂点まで行った二人が、教えるたびに相手の身体と向き合うことになる。

しかもこの関係は、床が替わるたびに上下が入れ替わる。ラテンの床では鈴木が師で、スタンダードの床では杉木が師になる。教える側と教わる側が固定されないから、ぶつかったときに、どちらにも引く理由がない。頂点にいる者同士のプライドのぶつかり合いと、身体の教え合いが、同じ練習場の床の上で同時に起きる。

そしてこの映画では、鈴木役の竹内涼真と杉木役の町田啓太が、実際に踊っている。竹内にとって社交ダンスは初挑戦で、両方の部門を練習して撮っているから、上達の過程が芝居ではなく身体に出る。Netflixが制作し、2025年12月の配信直後には週間グローバルTOP10で世界4位に入った。

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原作情報

原作は、講談社『ヤングマガジン』で連載されてきた井上佐藤のBL(ボーイズラブ)漫画『10DANCE』。一字違いの名前を持つ二人の王者が、10ダンスを目指して互いの種目を教え合う——映画の骨組みは、この原作の設定をそのまま受け継いでいる。実写化を手がけたのは、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督である。原作者の井上佐藤は実写化の発表にあたり、この監督と主演二人なら「官能とその先にある歓喜」を表現してもらえるはずだと期待を寄せていた。

KAGUYA

『超かぐや姫!』——配信のアニメ映画が、逆に劇場へ呼ばれた

あらすじ

光る電柱の中から、赤ん坊が出てきた。

拾ったのは、都内の進学校に通う17歳の女子高生・酒寄彩葉(さかより・いろは)。学業とアルバイトに追われる毎日で、唯一の楽しみは、仮想空間「ツクヨミ」でトップライバー・月見ヤチヨの配信を見ることだった。そのバイトの帰り道に、七色に光る電柱と、その中から現れた赤ん坊に出会ってしまう。

放っておけずに家へ連れ帰ると、赤ん坊はみるみるうちに、彩葉と同じ年ごろの少女へ育ってしまう。光るところから生まれて、急に育つ——もしかして、かぐや姫なのか。

少女・かぐやの願いは、「ツクヨミ」で配信をすることだった。彩葉がプロデューサーとして曲を作り、かぐやが歌う。わがままなかぐやに振り回されながらも、二人は配信を重ね、少しずつ打ち解けていく。だがそのころ、かぐやを月へ連れ戻そうとする不穏な影が、二人に近づいていた。

面白さ

下敷きは竹取物語である。竹の代わりに光る電柱、翁の代わりに女子高生、そして月からの迎え。「月から来た少女」という古典の骨組みを、配信者と仮想空間の時代へ置き直したところに、この映画の発明がある。かぐや姫が現代に来たら、歌って配信を始める——そして竹取物語では、月からの迎えが最後に何を連れて来るかが決まっている。二人の配信が続いていく手前で、その古典の骨組みだけが先に見えている。

その骨組みの上にいるのは、正反対の二人である。学業とバイトで手いっぱいの彩葉と、やりたいことをためらわないかぐや。曲を作る側と歌う側という分担で、わがままに振り回される日々が、配信を重ねるごとに少しずつ二人の時間へ変わっていく。仮想空間「ツクヨミ」のライブ場面は、かぐやの歌と色彩が画面を埋める見せ場になっている。

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制作の背景

監督は、数々のアニメ作品のオープニング映像を手がけてきたアニメーターの山下清悟で、これが初監督作。ライブ場面の映像は、この経歴と地続きである。制作はスタジオコロリドほか、配信で歌うかぐやの曲を、ネット発の音楽文化を作ってきたryo(supercell)、kz(livetune)、HoneyWorksらボカロ文化圏のプロデューサーが手がける。配信と劇場の順番が逆になった映画でもある。ふつうは劇場で公開してから配信に来るが、本作は2026年1月にNetflixで世界配信された後、反響を受けて劇場公開へ広がった。家で観られるこの作品に劇場の入場料を払った人は、最終的に134万人にのぼった。

BAKUDAN

『爆弾』——劇場から来て、19週間チャートに居座っている

あらすじ

警察の取調室で、男が、これから起きる爆発を言い当てた。

始まりは、ありふれた事件である。酔った中年男が自動販売機と店員に暴行し、警察に連行された。男は「スズキタゴサク」と名乗る。明らかに偽名で、身元も動機も分からない。ところがこの男は取調室で、自分には霊感が働くとうそぶき、これから東京で爆発が起きると口にする。まもなく、その言葉どおりに爆発が起きた。

スズキは続ける。この後も、1時間おきに、あと3回爆発する——。そのくせ尋問はのらりくらりとかわし、自分からは、爆弾のありかを示すような、なぞなぞめいたクイズを出しはじめる。

残された手がかりは、この男の言葉だけ。取調室では刑事の類家(山田裕貴)がスズキの言葉を読み解き、街では警察官たちが次の爆弾を探して走る。1時間ごとに、その猶予は尽きていく。

面白さ

爆発は街で起きるのに、次の爆弾へ近づく鍵は、取調室にいる男の言葉にしかない。へらへらと笑いながら核心を外さないスズキタゴサクを、佐藤二朗が演じる。要領を得ない世間話のようでいて、どこかに爆弾の場所が織り込まれているかもしれない以上、類家はその言葉を聞き流すわけにはいかない。なぜ自分から爆発を予告するのか。なぜ居場所をクイズにするのか。目的の見えない相手と、言葉だけで向き合うことになる。

その取調室の問答のあいだにも、街では捜索が続いている。類家が言葉から場所を絞り、捜索の警察官たちが現場へ走る。読み違えれば、次の爆発が答え合わせになる。2025年10月の劇場公開を経て配信へ来た1本で、配信後は、Netflixの日本・映画TOP10に19週連続でチャートインした。

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原作情報

原作は呉勝浩の小説『爆弾』。「このミステリーがすごい!」と「ミステリが読みたい!」の2023年版で、両方の1位を取った小説である。スズキタゴサクという得体の知れない男も、取調室の対話となぞなぞめいたクイズで爆弾を追う構図も、この原作から来ている。

LICENSED TITLES

劇場作品の配信は、いつまでもあるとは限らない

配信の対象作品は入れ替わる。定額配信・レンタル・購入の仕組みの違いは、無料の補足記事「定額、レンタル、購入の違い」にまとめてある。

次回

劇場の新作ガイド(第1回)と、家のNetflix。ここまでが「いま観られる映画」の話で、第3回からは、選ぶ側の目を作る話に入る。黒澤明から新海誠まで、日本の映画監督7人——名前は知っているあの人たちの映画が、実際どう違うのかを見ていく。