この連載の目次(全8回・完結)
- 01映画の話で固まらないために、まず4つの名前だけ無料
- 02映画は、感想をうまく言えなくても楽しめるいまここ
- 03A24とは何なのか読み放題
- 04映画の「格」はどこで決まるのか読み放題
- 05劇場の歩き方読み放題
- 06配信の歩き方読み放題
- 07賞レースの実践読み放題
- 08最終回——映画の話に入る読み放題
映画を見終えたあと、「どうだった?」と聞かれて、「面白かったです」としか言えず、会話が止まる。これは感想が浅いからではない。二時間の映画を一度に説明しようとしているからだ。一本丸ごとの評価は要らない。まず監督を一人だけ選び、一本を見て、自分が止まった一場面を持ち帰る。そこからなら、映画は一人でも楽しめるし、会話にもできる。
- 相手:映画、どうでした?
- 自分:面白かったです
- 相手:どこがよかった?
- 自分:ええと……全体的に
5人を覚えず、今日は誰を見るかだけ決める
前回の連載第1回では、宮崎駿、ノーラン、マーベル、A24という4つの入口を見た。ここでは監督という入口を、もう一歩だけ進む。
ただし、5人全員を暗記しない。今の気分に近い一人を選ぶ。
大きな画面・時間の仕掛け
クリストファー・ノーラン
映画館らしい大きさと、時間がずれる物語を楽しみたい日に
最初の一本: 『インターステラー』
どの場面で、時間の重さを感じました?
静かな画・音・余白
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
説明されすぎず、画面と音へゆっくり入っていきたい日に
最初の一本: 『メッセージ』
どの音や空間が、いちばん残りました?
知っている作品の再発見
宮崎駿
子どものころ見た作品を、大人の目で見直したい日に
最初の一本: 『千と千尋の神隠し』
昔と見方が変わった人物、いました?
会話・沈黙・ずれ
濱口竜介
人が話すうちに、関係や本音が変わる瞬間を見たい日に
最初の一本: 『偶然と想像』
会話の空気が変わったのは、どこでした?
家族・日常・距離
是枝裕和
食卓や部屋の中から、家族の形を見たい日に
最初の一本: 『万引き家族』
誰と誰の距離が、いちばん気になりました?
これは監督の順位表ではない。今日は一人だけ選び、一本だけ見るための入口である。
見終えたら、一場面だけ持ち帰る
映画を見ながら、テーマを探さなくてよい。伏線を全部覚えなくてよい。見終えたあと、次の三つだけ行う。
-
止まった場所を思い出す
身を乗り出した、笑った、落ち着かなかった、もう一度見たくなった。その場面を一つ選ぶ。 -
何が残ったかを一語にする
顔、場所、音、言葉、変化。このどれかでよい。 -
一文にする
「あの場面の音が残った」「あの部屋が妙に怖かった」「最後に顔が違って見えた」。
正解を調べるのは、そのあとでよい。先に解説を読むと、自分がどこで止まったのかが見えにくくなる。
一人選ぶ
↓
一本見る
↓
一場面だけ持ち帰る
一本を採点するのではなく、自分の反応を一つ見つける。そこから次の一本や会話につなげる。
クリストファー・ノーラン——時間の仕掛けを、人物の気持ちで見る
ノーランの映画は、時間の順番や進み方が物語の一部になる。難しい仕組みを全部理解しようとすると疲れる。最初は、時間の違いが登場人物の気持ちに何を起こしたかを見る。
宇宙へ向かう父と、地球に残る家族の物語。科学用語を全部理解する必要はない。遠くへ進むほど、同じ時間を共有できなくなる。その変化が人物の顔や言葉にどう現れるかを見る。
見る場所は一つでよい。離れていた時間が、一度に押し寄せる場面だ。そこで自分が何を感じたかを持ち帰る。
「仕組みは全部分からなかったけれど、時間が一気に重くなる場面が残りました。どこがいちばん残りました?」
ここまでで、映画を一本丸ごと評価せず、残った一場面から楽しめることが分かりました。続きでは、ヴィルヌーヴ、宮崎駿、濱口竜介、是枝裕和の入口と、5人を混同せずに選ぶための見方を渡します。
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ドゥニ・ヴィルヌーヴ——説明より、画面と音へ入る / 宮崎駿——知っている作品を、大人の目で見直す / 濱口竜介——会話の途中で、関係が変わる / 是枝裕和——家族を、食卓と部屋の距離で見る / 同じ監督を二本見ると、楽しみ方が一つ増える / 気になった一人だけ、監督図鑑で引く
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