この連載の目次(全7回・完結)
服を選ぶとき、その一枚が格好いいかどうかだけでは決まらない。その日の予定によって、同じ一着でも見え方が変わる。好きな格好は変えないまま、何を足して、何を引くか。
場所が変わると、同じ一着の見え方が変わる
街の中でも、場所によって目に入る服が違う。たとえば高円寺のように古着屋が並ぶ通りと、革靴で歩く人の多いオフィスビル。同じ一着でも、見え方が変わることがある。
擦り切れたデニムに、オリーブのジャケット。古着屋の通りなら、似た格好が周りにも並んでいる。オフィスビルの受付では、そこだけ生地も色も違って見えるかもしれない。
替えるのは全部ではない。仕事で行く場所に服装の決まりがあるなら、まずその範囲を確かめる。そのうえで、好きな色や好きな靴は残せる。
好みは変えずに、どこを前へ出すかを変える
久しぶりに会う友人と昼から飲む日と、初めて会う相手と仕事の話をする日。同じ人でも、手に取るものは変わる。
ここで大事なのは、別人になる必要はない、ということだ。好みはそのままで、どこを前へ出すかを変えればいい。
たとえば古着が好きな人なら、友人と会う日は色落ちしたデニムに、古いスウェット。仕事の相手と会う日は、同じデニムに襟のあるシャツを合わせて、上にジャケットを羽織る。デニムは同じものだ。周りに足すものだけが変わっている。
きれいめの格好が好きなら、動かす向きが変わるだけで、やることは同じになる。休みの日はジャケットを外してニットにし、革靴をスニーカーへ替える。
好きなものを着ていると、それが会話につながることもある。古いスウェットを褒められることがあるし、「それどこの?」と聞かれることもある。そうならない日もあるが、それで構わない。
長くいる日は、着心地が先に来る
すぐ帰る日と、朝から晩まで外にいる日では、同じ服でも違ってくる。
雨が降りそうな日。朝と夜で気温が変わる日。荷物を持って歩き回る日。こういう日は、見た目より先に、濡れないか、寒くないか、歩けるかが来る。
撥水のジャケットを一枚持っていく。中に薄手のものを重ねられるようにしておく。長く歩く予定の日は、靴から先に決めてしまうほうが早い。
替えるのは、一箇所か二箇所でいい
朝、玄関の前で決めることは、そんなに多くない。好きな格好はもう決まっているのだから、あとは、その日の予定に引っかかるところだけを替える。
雨なら、上に一枚防げるものを足す。長く歩くなら、靴を替える。改まった場所へ行くなら、色を落ち着いた側へ寄せる。何も引っかからない日は、そのままでいい。
替えたあとも、着ているのは好きな服のままだ。
読み返すなら
気になったところから戻れる。ファッションとは何かは第1回、ブランドは第2回、靴は第3回、セレクトショップは第4回、服に残る文化は第5回、色とシルエットは第6回。ブランドを一つずつ引きたいときはファッション・ブランド図鑑へ。