この連載の目次(全7回・完結)
- 01ファッションとは、自分をどう見せるかであるいまここ
- 02UNIQLOからSupremeまで——ブランドは、どんな人の服なのか
- 03ConverseからDr. Martensまで——靴で、どんな人に見えるのか
- 04BEAMSはブランド? セレクトショップ?
- 05アイビー、軍物、ワーク、ストリート——服に残る文化
- 06色とシルエットは、人物像をどう変える?
- 07その服で、どこへ行き、誰と会うのか
服には、体を覆うという役割がある。それとは別に、着ている人がどんな人なのかを外へ伝える働きもある。この連載が扱うのは、二つ目のほうだ。
服は、自分について何かを伝えている
朝、クローゼットの前で服を選ぶ。何を基準にしているかを口で説明するのは難しい。ただ、選んでいる以上は基準がある。
服は、着ている人について外へ何かを伝える。何が好きか。これまでどんなことをしてきた人か。どんな趣味を持っていそうか。どういう場所に出入りしていそうか。話す前から、それは相手に届いている。
山で使う道具のジャケットを着た人と、仕立てのいいジャケットを着た人では、伝わるものが違う。片方は外で過ごすことに慣れていそうに見え、片方はきちんとした場に慣れていそうに見える。実際にそうかは別として、服はそういう情報を先に出す。
もっとはっきり出る服もある。好きなバンドのTシャツ、応援している球団のキャップ、山の道具のブランドのジャケット。これらは着ている人が何を好きで、どういう輪の中にいるかを、ほとんど言葉と同じ強さで伝える。無地の白いシャツなら、そこまでは伝わらない。どこまで伝えるかも、服を選ぶときに決めていることの一つだ。
だから服を選ぶことは、自分をどう見せるかを決めることでもある。ファッションとは、自分の好み、これまでの背景、趣味、親しんでいる文化や集まりを、外見で表すことである。体を覆う布としての役割は、その下にある。
表したい自分は、その日によって変わる
伝えたいことは、毎日同じではない。
久しぶりに会う友人と昼から飲む日と、初めて会う相手と仕事の話をする日では、出したい面が変わる。前者では気を張っていないことが伝わるといいし、後者ではきちんとしていることが伝わるといい。同じ人でも、その日の行き先と相手によって、表したい自分は変わる。
着替える理由の一つは、日によって表したい自分が変わることにある。一着で全部を表そうとすると、どこかで合わなくなる。
その日に前へ出したい自分の面を、こちらから選んでいる。それが、場に合わせて服を決めるということだ。
慣れた人は、行き先と相手まで考えている
服に慣れた人の選び方は、少し違う。
一着ずつの良し悪しだけを見ていない。その服でどこへ行くのか。誰と会うのか。どれくらいの時間そこにいるのか。どんな話をすることになりそうか。そこまで考えたうえで、手を伸ばしている。
同じジャケットでも、一時間で帰る場所へ着ていくのと、朝から晩まで過ごす場所へ着ていくのでは、選び方が変わる。長くいるなら、座ったときや歩いたときの具合まで関わってくる。相手が初対面なら、こちらの人となりを服が先に伝えるので、何を伝えさせるかを決めておいたほうがいい。
行き先によっても変わる。古着屋の並ぶ通りと、革靴の多いオフィス街では、普通とされる格好が違う。同じ一着が、片方では普通に見え、片方では浮く。知らずに浮いているのと、承知で外しているのとでは、その場での見られ方が違う。
慣れているかどうかの差は、そこまで考えているかどうかに出る。
色と形は、そのあとに使う
色合わせやシルエットは大事だ。ただ、最初に学ぶものではない。
「暗い色でまとめると落ち着いて見える」「ゆったりした形はラフに見える」。こうした話は、どんな自分に見せたいかが決まってはじめて使える。落ち着いて見せたいのか、崩して見せたいのか、その場で浮かないようにしたいのか。先に決まるのはそちらで、色と形はそれを強めたり弱めたりする道具になる。
同じ黒でも、ジャケットとスラックスで揃えればきちんと見えるし、パーカーとゆったりしたパンツならラフに見える。
順番を逆にすると、決まりだけ覚えて、何を伝えたいのかが決まらないまま服を買うことになる。
次回
第2回では、街でよく見る8つのブランドを扱う。UNIQLO、A|X、THE NORTH FACE、mont-bell、Stüssy、Supreme、Polo Ralph Lauren、Levi's。何から始まったブランドで、いまはどんな人の服として見られているのか。