大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

FASHION — ファッション・ブランド図鑑 — Dr. Martens

Dr. Martens——英国の作業靴から、音楽の現場へ

ドイツの軍医が自分のために作り直した療養用の靴が始まり。英国では郵便配達員や工場労働者の作業靴になり、そのあと音楽の現場で履かれるようになった。

服そのものは普通のままで、足元にだけ音楽やカルチャーの気配を残せるブーツ。反抗の靴という印象が先に立つが、始まりは足を痛めた人のための療養靴である。

ORIGIN

軍医が、自分のために作り直した療養靴だった

1945年のドイツ。軍医だった人物がスキーで足首を傷め、廃棄されたゴムを使って空気を含んだソールの靴を自分のために作り直した。これが始まりである。足に優しいソールが受けて、地元で少しずつ売れた。

履き込まれた茶色のドクターマーチンのブーツ一足。8つの穴と黄色いステッチ
八つ穴のブーツ。ソールの縁を一周する黄色いステッチと、厚く張り出した底Photo: Nick-D / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
SHIFT

働くための靴から、音楽の現場へ

英国へ渡ったのは1959年。英国の靴メーカーがかかとの形を作り直し、黄色いステッチを足して、翌年に八つ穴のブーツを出した。

このとき最初の顧客になったのは、郵便配達員と警察官と工場労働者だった。つまり英国での出発点は、働くための靴である。

1960年代の終わりから、英国の労働者階級の若者たちのあいだへ入っていく。そのあとパンクへ、グランジへと履かれていった。働く人の靴が、音楽の現場の靴になった。この経路が、いまのイメージのもとにある。

NOW

いまはどんな人が履くブランドか

パンクやロック、イギリスの音楽の背景から入った人に履かれている。八つ穴のブーツが中心で、履き潰した状態のほうが良いとされる。もともと働くための靴で、そこへ音楽の側から意味が付いた。

初めて選ぶ革靴として買う若い層もいる。三つ穴か、近ごろはローファー。デニムにもスラックスにも合い、制服にも収まる。音楽の文脈を通らずに買っている。

紐を通した三つ穴のオックスブラッド色の革靴が一足。ソールの縁を黄色いステッチが一周している
三つ穴の1461。同じ底と同じ黄色いステッチで、丈だけが低いPhoto: Nick-D / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0(リサイズ)
ベンチに座った人の脚と足元。黒い八つ穴のブーツに、裾を折り返した濃紺のデニム。顔は写っていない
裾を折り返したデニムに、黒の八つ穴。足首まで見せる履き方が定型になっているPhoto: William Christiansen / Wikimedia Commons / CC BY 2.0(リサイズ)
PIECES

代表的なモデル

1460——八つ穴のブーツ。1960年4月1日の一足目で、番号がそのまま発売日を指している。ブランドの起点にある型。

1461——三つ穴の短靴。1460の翌年に出ている。

エイドリアン——タッセルローファー。紐がなく、甲に革の飾りが付く。

NEIGHBOURS

近いブランドとの違い

同じく音楽の現場を通ってきた靴としてConverseと並ぶ。どちらもパンクやグランジの周りで履かれてきた歴史を持つ。違うのは見た目で、あちらは布のローカット、こちらは革のブーツ。同じ来歴でも、足元に出るものがまるで違う。