足元にだけ、作りの細かいものを置きたいときの靴。銀と白が中心なので色としては強く出ず、格好全体は静かなまま残る。
競技用の靴を作る会社として始まった
1949年、鬼塚喜八郎が神戸で鬼塚株式会社を始めた。掲げたのは質の高い競技靴を通じて健全な若者を育てることである。最初の製品はバスケットボール用の靴で、床で滑らないための道具として作られた。
1977年、オニツカ株式会社を含む3社の合併で株式会社アシックスが誕生し、現在の社名になった。ASICSは「健全な身体に健全な精神があれかし」というラテン語の頭文字である。

街で選ばれるようになった
創業後は陸上競技用の靴へ広がり、1956年と1964年の五輪で日本選手団に採用される。長距離を走る靴が中心になったのはこの時期で、ここまでは競技の道具としての歴史だ。
転換は二段階で来た。まず2002年、同じ会社が展開する別ブランドとしてオニツカタイガーを、欧州でライフスタイル向けに復活させる。翌年、映画『キル・ビル』で黄と黒の一足が使われ、国際的に名前が知られた。
もう一段は2020年代だ。2000年代のランニングシューズをもとにした復刻モデルが、走る場面ではなく街の服として選ばれるようになった。
いまはどんな人が履くブランドか
中心は20代から30代。
銀色やメッシュのテクニカルな見た目を、太めのパンツやシンプルな服の足元へ取り入れる人に選ばれている。切り替えの線が何本も走り、底は前後で段になっていて、光沢のある素材が混ざる。
もとは2000年代に競技用として設計された形だ。それが復刻され、厚い底や機能的な服の流れと重なって街へ出てきた。走るための靴だという背景を持ったまま、いまはファッションとして履かれている。

代表的なモデル
GEL-KAYANO 14——2008年に出た同名のランニングシューズをデザインのもとにした、ライフスタイル向けの復刻モデル。当時の靴そのものではなく、アッパーの素材とフィット感が街で履くために作り直されている。クッションのGELなど、当時の構造は残っている。街での再評価の中心にある型。
GEL-1130——銀と白の切り替えが多いランニングシューズ。KAYANO 14 と似た系統の見た目で、こちらのほうが底は薄い。
近いブランドとの違い
よく並べて語られるのがNew Balanceの990系だ。ただし見た目はかなり違う。GEL-KAYANO 14は、光沢のある素材と細かな切り替えが先に目に入る。990系は、スエードとメッシュの落ち着いた見え方が中心にある。同じ「走るための形」でも、受ける印象が別になる。