まず、この記事が扱う範囲をはっきりさせておく。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の2021年公開の第1部である。原作小説の前半にあたり、2024年の『PART2』は扱わない。この一本だけで観ても、話は途中で切れるが、追える。
アラキス——砂しかない惑星に、宇宙で最も重要な資源がある
舞台になるアラキスは、砂漠に覆われた惑星である。水がほとんどなく、屋外では体の水分を回収する専用の服を着る。
この星でしか採れないものがある。香料(スパイス)と呼ばれる物質で、これがないと宇宙の航行ができない。つまり、この星を治める者が、宇宙の物流を握ることになる。
砂の下にはサンドワームという巨大な生物がいる。振動に反応して現れ、地上のものを飲み込む。香料の採取が危険なのはこのためだ。
砂漠、香料、砂虫。この三つが、物語の条件として繰り返し出てくる。
大領家——星ごとに、統治する一族がいる
この世界では、皇帝がいて、その下に大領家と呼ばれる一族が並び、それぞれが星を治めている。
物語に関わるのは二つの家だ。
アトレイデス家。 主人公ポールの一族で、海のある星カラダンを治めていた。皇帝の命令で、アラキスへ移されることになる。
ハルコンネン家。 アラキスをそれまで治めていた一族。この星を手放すよう命じられたが、簡単に去るつもりはない。
この移動が、話の出発点になる。アトレイデス家は自分から来たのではなく、命じられて来た。 そして、その命令自体に仕組まれたものがある。
主要な人物
| 人物 | 立場 |
|---|---|
| ポール・アトレイデス | 主人公。アトレイデス家の跡取り |
| レト・アトレイデス | ポールの父。アラキスの統治を命じられた公爵 |
| レディ・ジェシカ | ポールの母。ある教団の訓練を受けている |
| ダンカン・アイダホ | アトレイデス家の剣士。先にアラキスへ入る |
このほかに、皇帝側の使者や医師などが関わってくる。
ジェシカが属する教団だけ、説明が要る
一つだけ、映画の中では十分に説明されない要素がある。ポールの母ジェシカが所属するベネ・ゲセリットという教団だ。
女性だけの組織で、身体と精神の訓練を受けている。声の使い方で相手に命令を通すことができ、長い年月をかけて血統を管理してきた。
映画の序盤で、ジェシカと同じ教団の人物がポールを試す場面がある。箱に手を入れさせ、首元に針を当てる。試されているのは、痛みに耐えて手を引かずにいられるかどうかである。この場面で教団についての説明はほとんど与えられない。
画面は、人物を小さく置く
内容とは別に、この映画の見え方について。
砂の上に立つ人間と、背後の地形の比。天井の高い建造物の下に置かれた人物。人が小さく、周りが大きく映る画面が繰り返し出てくる。ヴィルヌーヴ監督の作品に共通する構図である(監督記事)。
音も特徴的で、低い音が長く鳴る場面が多い。
ここから先は、アラキス到着後に起きること、フレメンとの接触、そしてこの一本の終わり方に触れます。 未見で先を知りたくない場合は、ここで止めてください。
移住そのものが、仕組まれていた
アトレイデス家がアラキスへ移されたあと、事態が動く。
皇帝の命令には裏があった。ハルコンネン家と組んで、アトレイデス家を砂漠へ誘い出し、そこで潰す。移住の命令そのものが罠だった、という構造である。
襲撃は夜に起きる。前半で積み上げられた統治の準備が、短い時間で崩れていく。ここが、この映画の折り返しになる。
砂漠には、先に住んでいる人たちがいる
アラキスには、大領家が来る前から住んでいる人々がいる。フレメンと呼ばれる砂漠の民である。
彼らは水を極限まで節約する暮らしをしていて、砂虫の避け方も知っている。統治する側からは労働力として扱われてきたが、独自の社会と信仰を持っている。
ポールとジェシカは、崩壊のあと砂漠へ逃れ、この人たちと接触することになる。ポールが繰り返し夢に見ていた少女チャニも、フレメンの一人である。
この一本は、途中で終わる
最後に、観る前に知っておいたほうがいいことを書いておく。
この映画は、話の途中で終わる。 ポールとジェシカがフレメンの側へ入っていく地点までで、対立の決着はつかない。第1部として作られているので、そういう終わり方になる。
続きは2024年公開の『PART2』で扱われる。第1部だけを観て「終わっていない」と感じるのは、実際に終わっていないからだ。