いま街で履かれているのは、装飾の少ない白や黒の革の靴。競技のために作られた定番を、そのまま普段の格好へ持ってこられる。
陸上競技用のスパイクから始まった
1924年、ドイツの町で兄弟が始めた靴工場が出発点だ。作っていたのは陸上競技用のスパイクである。1936年のベルリン五輪では、四つの金メダルを取ったジェシー・オーエンスがこの工場の靴を履いている。
戦後、現在の社名を名乗って三本線を使い始めた。そこからサッカーへ広がり、三本線は競技用の目印になっていく。

1986年、音楽を経由して街へ出た
決定的だったのは1986年だ。ニューヨークのRUN-D.M.C.が「My Adidas」という曲を出した。彼らはスーパースターを愛用していて、紐を抜き、ベロを出して履いていた。
この履き方は曲とともに広まった。さらに、ライブで観客が靴を掲げる場面を見た会社の重役が動き、スポーツブランドとして初めて音楽の担い手と契約を結んだ。当時その型は売れなくなった旧モデルで、この契約が生き返らせている。
いまはどんな人が履くブランドか
サンバやスタンスミスのような細身の定番を、すっきりした普段着やきれいめの服へ合わせる人に履かれている。底が薄く、幅が細く、装飾がない。だからスラックスにもジャケットにも収まる。
もう一方では、サッカーや音楽の背景を持つ三本線を、普段着として楽しむ人に選ばれている。サンバはもともと凍った地面用の練習靴で、スーパースターは1980年代にヒップホップの側から街へ出た。
競技から生まれた細身の形が、いまは街の定番として履かれている。

代表的なモデル
スタンスミス——白い革のテニス靴。三本線が線ではなく穴で表現されている。ベロに選手の肖像が入る。
サンバ——1950年に出たサッカーの練習靴。つま先にT字の革が貼られている。
スーパースター——バスケット用のローカット。つま先に貝殻のような形のゴムが付く。1986年の契約で売れ直した型。
近いブランドとの違い
よく並べられるのがNikeだ。どちらも競技用具から始まり、どちらも音楽の現場を通って街へ出ている。定番どうしを並べると、見た目の違いが分かりやすい。スタンスミスは細身ですっきりしている。ナイキのエアフォース1は、甲もソールもふくらみがあって、足元にボリュームが出る。