大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

FILM映画ブリーフィング『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』——笑える家族劇が、階級の恐怖へ変わる

『パラサイト 半地下の家族』を未見でもつかめるよう、ギウ、ギテク、ドンイクの関係、二つの家族の始まり、家の上下が生む面白さをネタバレなしで整理する。

半地下に暮らす家族が、裕福な家へ一人ずつ入り込んでいく。最初は計画がうまく進む家族コメディに見えるが、家の奥に隠されたものが見つかると、同じ場所が急に怖くなる。『パラサイト 半地下の家族』は、階級の差を坂、階段、窓、匂いといった目に見えるものへ置き換えて見せる映画だ。

IN ONE LINE

ひとことで言うと

仕事のないキム家の長男ギウが裕福なパク家の家庭教師になり、家族全員を別人のように紹介して雇わせるうちに、豪邸の秘密と二つの家族の差が露出していく物語。

一つの家の中で、笑い、潜入劇、サスペンス、暴力が順番に入れ替わっていく。前半で笑っていた場所が、後半には別の意味を持つ。

THE PEOPLE

登場人物

人物まず覚えること
キム・ギウ半地下に暮らすキム家の長男。友人の紹介でパク家の娘の家庭教師になり、家族が入り込む入口を作る
キム・ギテクギウの父。失業中だが、やがてパク家の運転手になる。二つの家族の距離を最も強く受ける人物
パク・ドンイク高台の豪邸に暮らすパク家の父。礼儀と「一線」を重視し、キム家を雇う側にいる

最初は、入口を作る息子、雇われる父、雇う側の父の三人だけ分かればよい。

THE START

ネタバレなしの始まり

キム家は、通りより低い半地下の部屋で暮らし、無料のWi-Fiを探し、ピザ箱を組み立てて日銭を得ている。大学生ではないギウは、留学する友人から裕福なパク家の家庭教師を引き継ぐ。

ギウは身分を偽り、妹ギジョンを美術教師として紹介する。続いてパク家の運転手と家政婦を追い出し、父ギテクと母チュンスクを別々の専門家のように見せて雇わせる。家族だと知られないまま、キム家全員が一つの豪邸で働き始める。

WHY IT LASTED

なぜ話題になったか

2019年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。第92回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞し、英語以外の言語を中心とする作品として初めて作品賞を受賞した。

賞歴以上に強いのは、難しい階級の話を、家の構造と家族の行動で見せたことだ。説明を聞かなくても、誰が上にいて、誰が下へ降り、雨が誰にとって恵みで誰にとって災害かが画面で分かる。

WHAT MAKES IT

どこが面白いのか

コメディだと思っていると、別の映画へ変わる

家族が役割を作り、パク家へ入り込む前半はテンポのよい計画ものとして進む。ところが、ある人物が雨の夜に戻ってくると、豪邸の意味が変わる。

階級を、上と下の移動で見せる

キム家は半地下、パク家は坂の上の家。人物は階段を上り下りし、豪雨の夜には高台から低い場所へ長く降り続ける。社会の位置が、そのまま身体の移動になる。

悪役が置かれていない

キム家は人をだまし、先に働いていた人の仕事を奪う。パク家は暴力を振るわないが、雇う側としての距離は保ち続ける。地下に隠れて暮らす夫婦にも、それぞれの事情がある。画面に出てくる人物のうち、行動の全体を非難できる立場に置かれた者はいない。

ここから先は、地下室の秘密、誕生日会の事件、最後の場面に触れます。 未見で結末を知りたくない場合は、ここで止めてください。

THE TURN

物語の転換

パク家がキャンプへ出かけた夜、キム家は豪邸でくつろぐ。そこへ以前の家政婦ムングァンが戻り、地下に忘れ物があると言う。彼女が開けた隠し扉の先には、借金取りから逃れる夫グンセが何年も暮らす地下室がある。

ムングァンはキム家四人が家族だと知り、立場が逆転する。二つの貧しい家族が、パク家に知られないため互いを押さえ込もうとする。その最中、豪雨でキャンプを中止したパク家が急に帰宅する。

キム家は家具の下へ隠れ、ドンイク夫妻がギテクの体臭について話すのを聞く。逃げ帰った先では、半地下の家が洪水で水没している。パク家にとって庭をきれいにした雨が、キム家の生活を壊す。

THE ENDING

結末

翌日、パク家は息子ダソンの誕生日会を開く。地下室から抜け出したグンセがギウを襲い、庭へ出てギジョンを刺す。混乱の中、チュンスクはグンセと争う。

ドンイクは倒れたグンセの匂いに顔をしかめながら、ギテクへ車の鍵を求める。自分の匂いを何度も「一線」の外側に置かれてきたギテクは、その反応を見てドンイクを刺す。ギジョンは亡くなり、ギテクは姿を消す。

のちにギウは、豪邸の照明がモールス信号のように点滅していることに気づく。地下室へ隠れたギテクからの通信だった。ギウは金を稼いで家を買い、父を外へ出す計画を思い描く。しかし最後の画面は半地下へ戻り、その計画がまだ願いでしかないことを示す。

KEY SCENES

重要な場面

  1. 家庭教師の面接
    ギウが坂を上り、半地下から豪邸へ入る。二つの家族の位置関係が最初の移動で示される。

  2. 桃を使った追い出し
    ムングァンの桃アレルギーを利用して家政婦を辞めさせる。キム家の計画が楽しく見える一方、別の弱い立場の人を押し出している。

  3. 雨の夜の長い下り坂
    豪邸から半地下へ、階段と坂をひたすら降りる。高台では庭が洗われ、低地では家と持ち物が水に沈む。

  4. 窓の違い
    パク家の大きな窓は整えられた庭を映す。キム家の半地下の窓は通りと酔客を映す。同じ「窓」が、暮らす高さを見せる。

WHAT PEOPLE DISCUSS

よく語られる論点

誰が「パラサイト」なのか

キム家はパク家の収入へ寄生しているように見える。一方で、パク家の暮らしも運転、家事、教育という他人の労働に支えられている。題名を一方向だけに決めない作りである。

匂いは何を示すのか

ドンイクは、運転手として雇ったギテクの匂いについて妻と話す。地下鉄に乗る人の匂いだと言い、その匂いが「一線」を越えてくることを嫌う。ギウたちは服も話し方も変えられたが、ドンイクが嗅ぎ取ったこの一点は変えられていない。終盤、この匂いへの反応が決定的な場面を生む。

最後の計画は希望か、届かない夢か

ギウは、その家を買って父を迎えに行く未来を思い描く。だが映画は、その計画を実行した場面を見せない。最後の画面はギウが半地下の部屋にいるところへ戻り、そこで終わる。