大人男子の趣味教養OTONA DANSHI NO SHUMI-KYOYO

FILM — 映画ブリーフィング — 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』——記憶のない状態から、実験で一つずつ確かめていく

2026年3月公開。宇宙船で目を覚ました男が、分からないことを実験で潰していく。設定と人物、そして途中から相棒ができることまで。

2026年3月に公開された。監督はフィル・ロードとクリストファー・ミラー、脚本はドリュー・ゴダード、主演はライアン・ゴズリング。原作はアンディ・ウィアーが2021年に発表した同名の小説である。

THE OPENING

始まりは、記憶のない目覚めから

主人公は宇宙船の中で目を覚ます。自分が誰で、なぜここにいるのかを覚えていない。

分かるのは、乗っていた三人のうち生き残ったのが自分だけだということだけだ。そこから、船内にあるものを調べ、記録を読み、少しずつ自分の状況を組み立てていく。

観客も同じ順序で情報を受け取る。主人公が知らないことは、観客も知らない。 説明の場面が先に置かれていないので、序盤は分からないまま進むことになる。

WHY

地球で起きていることは、回想で明かされる

現在の宇宙船の場面と交互に、地球での回想が挟まる。ここで、なぜこの旅が始まったのかが分かってくる。

太陽のエネルギーが未知の原因で減り続けている。このままでは地球が寒冷化する。原因を解明するために宇宙船が送られた——というのが前提である。

主人公のライランド・グレースは、もともと分子生物学の研究者だったが、いまは中学校で科学を教えている。専門家として選ばれたわけではない経緯が、回想の中で説明される。

THE METHOD

この映画が長く見せるのは、実験の手順

この作品の中心にあるのは、分からないことを実験で一つずつ潰していく過程である。

手元にあるものを使って試す。結果を見る。次の仮説を立てる。何をどう確かめたのかが、そのつど画面で追えるように作られている。

そのぶん、実験の手順を追う場面が長い。何を試して何が分かったかが、そのつど画面に示される。

THE PEOPLE

人物——覚えるのは二人

人物立場
ライランド・グレース主人公。元研究者で、中学校の科学教師
ストラット地球側でこの計画を進める責任者

回想には、各国の研究者や政府関係者も出てくる。宇宙船の中では、途中まで主人公が一人である。

THE LENGTH

156分、現在と回想を往復する

上映時間は156分ある。

構成は、宇宙船の現在と地球の回想を往復する形だ。回想は時系列順に進むので、往復が続いても位置は分かりやすい。ただし、往復そのものを負担に感じる人はいる。

原作は読んでいなくても追える。原作を読んでいる人には、映画で省かれた部分と加えられた部分が見えることになる。

ここから先は、宇宙船でグレースが出会う相手と、物語の重心の移り方に触れます。 未見で先を知りたくない場合は、ここで止めてください。

THE PARTNER

途中から、作業は一人ではなくなる

宇宙で、グレースは別の存在と遭遇する。地球外の生命体で、のちにロッキーと呼ばれることになる相手だ。

言葉もジェスチャーも共有していない。 音の高さで意思を伝えてくる相手に対し、グレースは手持ちの道具で通じ合う方法を作っていく。数字から始めて、単位を合わせ、少しずつ語彙を増やす。

ここでも、方法は前半と同じである。試して、結果を見て、次を立てる。相手が違うだけで、やっていることは実験の続きになっている。

THE SHIFT

重心が、科学から関係へ移る

物語が進むと、扱われるものが変わってくる。

前半で中心にあったのは、太陽のエネルギーが減る原因を突き止めるという課題だった。後半では、その課題を二人で進めることのほうが画面の時間を占めるようになる。

後半では、通じ合う方法を作る作業と、太陽の問題を解く作業が並行して進む。